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18 なぜか気になる紛い物(アンスタンside)
しおりを挟む僕がラジョーネと初めて会ったのは学園の入学式だった。
新入生代表として挨拶をしていた彼女は特に美しいというわけではないけれど、僕は不思議と気になって壇上に居る彼女から目を離すことが出来なかった。
そんな彼女が同じクラスになったときはすごく嬉しくて、誰かに奪われる前にと急いで交際を申し込んだのだ。
最初は揶揄わないでと信用してくれなかったラジョーネも少しずつ僕に心を開いてくれて、ついに交際を受け入れてくれた時は飛び上がるくらいに嬉しかった。
不思議だった。僅かに獣人の血が混ざっているとはいえ、外見的にはただの人間。所詮は獣人モドキの紛い物なのだ。何でこの僕がそんな紛い物にここまで心惹かれるのか、自分でもよく解らなかった。
もっともこれについてはクラスの大半も同じ感想を抱いたようで、皆が不思議そうに僕たち二人の関係に首を傾げていた。
そうしてようやく付き合い始めたものの、見た目が人間だと価値観もそちらに引っ張られてしまうのか、早熟な獣人が多い中でラジョーネは『結婚するまでは綺麗な身体でいたいから』と言って肉体的な接触は絶対に許してくれなかった。
僕としてはそんなお堅いところも好意的に感じていたし、できるだけ彼女の嫌がることはしたくない。
それに、彼女のこういった貞節を重んじる態度は他の誰かに彼女を奪われたくない僕にとっては非常に都合がよかったのだ。
とはいえ僕も健康な男子。そういった衝動は当然あるし、何もできないのはつらいものがある。だから欲望については適当に『他』で発散させていた。
幸い。僕の容姿は優れているし、家も非常に裕福だ。だからわざわざ自分から探さなくても相手はいくらでも寄ってきた。
遊び相手の女の子達には『ラジョーネは隠れ蓑なのさ。ああいうお堅い女は教師受けがいいからな。お飾りの恋人にするにはちょうどいい。だから彼女のことは相手にせずに放っておけ』とでも言っておけば特に問題は起こらなかった。
僕にとってラジョーネはそういったただの遊び相手とは違った。ラジョーネの傍は不思議と居心地が良くて、彼女とならそういった行為をせずとも話すだけでも幸せを感じられたのだ。
まあ、あわよくば――とは、常に思っていたけれど。
ただ、獣人の血が若干混ざっているとはいえ、所詮は紛い物。彼女との結婚は中々に難しいものがあることもしっかりと理解をしていた。
僕の両親は獣人としての誇りを大事にしているから、人間にしか見えないラジョーネとの交際にあまりいい顔はしていなかった。それでもラジョーネの唯一の取り柄ともいえる成績の良さだけは認めていたから、彼女との交際は『学生時代のお遊び』としてギリギリお目こぼしされていると言ったところだろうか。
そんな両親から育てられた僕は女性としての好みも当然獣人寄りだ。『耳や尻尾』といった獣人的な部分に魅力を感じるし、実際遊び相手の女の子達もそういった外見の子がほとんどだ。
獣人として運命の番に対する憧れもあるので、ラジョーネと番どちらを選ぶかと言えばもちろん番だと言い切れる。
だから運命の番と出会った時はつらくとも距離を置かねばならないと覚悟していたし、両親の反対もあるから結婚については遊び相手の女の子達から適当に選ぶしかないな――と少しだけ寂しく思っていたのだ。
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