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1 幸せと違和感

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「ああ、ラジョーネ! 僕はなんて幸せなのだろう! 愛する恋人の君が運命の番と判明したときの喜びと言ったらもう……!!」

「うふふ。私も幸せよ、アンスタン。そして私も貴方と同じ気持ちだわ。恋人の貴方が私の運命の番で本当に良かった」


 私、ラジョーネ・ジュジュマンとアンスタン・ラヴィッスマンは恋人同士だ。そして、つい先日お互いが運命の番であると判明したばかり。

 番と出会う確率だけでも天文学的な数字なのに、たまたま愛し合う恋人同士が運命の番だなんて、こんな素晴らしい偶然があるかしら。

 ううん、コレはもはや必然よ。番であるからこそ惹かれ合ったと考えるべきなのだわ。

 愛する番……恋人のアンスタンを愛情いっぱいに見つめれば、彼は同じだけの愛情をたたえた瞳で私を見つめ返してくれる。



 ここは獣人と人間が暮らす国。学園に通う生徒も獣人と人間、それに二つの種族の特性を併せ持つ獣人ハーフやクォーターなどでバランスよく構成されている。

 種族間の交流を深めるためにこういう形態がとられているが、世代が進むにつれて純粋な獣人や純粋な人間は数を減らし、今では双方のルーツを持つ生徒の割合が増えつつある。

 かくいう私も獣人のクォーターだ。人間の血が濃い目だが、父方のおじい様が狼の獣人。

 一方、恋人のアンスタンは純粋な獣人。犬獣人で、外見的にもとても立派な犬耳と尻尾を持っているので少し羨ましい。私は人間の血が濃いせいか、外見も人間と変わらないので種族的に人間と間違われる事の方が多いのだ。

 それでも私にも確実に獣人の血は入っている。だからこそ、アンスタンが自らの番であると判別できたのだ。この幸福感を味わうことが出来たのだから、獣人だったおじい様には感謝したい。



 まあ、もっともアンスタンとは元々仲の良い恋人同士であったわけだし、番云々にかかわらず彼とは将来的に結婚したいと思っていたけれど。

 だから恋人のアンスタンが番であったという喜びも勿論だけど、


『いつかアンスタンの番が現れて愛する彼を奪われてしまうかもしれない』


 ……という不安から解放された、という思いの方が強かった。

 もちろん私の方に番が現れる可能性だってあった訳だけど、そっちについてはそんなことくらいで自分の思いが揺らぐとは思えなかったもの。


「……実はね、本当は私ずっと心配だったの。だからアンスタンが番で安心したわ」

「僕もだよ、ラジョーネ。もし君が番じゃなかったら、愛する君を冷たく突き放して捨てなきゃいけないと思うと辛くて辛くて」

「え?」
「ん?」


 ……え? いや、ちょっと待って。
 今、何か引っかかるものがあったんだけど。




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