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14 幼馴染の選択(勇者side)
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しかし、一度暗殺を失敗したとなるといくら危機感のないキャンディッドでもさすがに警戒をしているだろうし、辺鄙な村では部外者はどうしたって目立つ。そう何度も暗殺者を送り込むわけにはいかない。
仕方なく真摯に謝罪するふりで毒を仕込んだ花束をキャンディッドに渡そうとしたのだが、突然の突風で花束が近くの沼に飛ばされてしまい、口封じに失敗をしてしまった。
俺が仕込んだ毒のせいで沼に生息する魚が大量に死んだが、念のために他国から取り寄せた希少な毒を使ったうえに人をやってすぐに証拠隠滅を図ったので、キャンディッドはともかく村の者にはバレていないはずだ。
ただ、これのせいで俺が直接手を下すことも難しくなってしまった。
仕方なく俺は王家の威光をチラつかせて村人に脅しをかけた。そのことで居場所を失ったキャンディッドは故郷の村から姿を消した。これでどうにか秘密は守られた。
しかし、キャンディッドの口を完全に塞がなければ安心は出来ない。念のために適当に罪を捏造して指名手配をかけたが、どうしてもキャンディッドは見つからなかった。
そして、時が経ち――妻の不倫が発覚したことで、俺は無性にキャンディッドに会いたくなった。
キャンディッドは妻ほど美しくはないが見れない顔というわけでもない。少なくとも身持ちは固いし、あの女のように俺を裏切ることだけはないだろう。
指名手配をかけても見つからないことでこれまでは放置していたが、小さな頃から運だけはいいキャンディッドのことだ。その辺で野垂れ死んでいるとは思えなかった。
こうなってくると、命を奪えなかったことも運命なのかもしれない。
そう考えた俺は密かにキャンディッドを囲うべく、人を使って彼女の行方を探させた。
その結果――キャンディッドは最悪な形で俺を裏切っているのを知った。なんと、キャンディッドは姿をくらましている間に魔王の子供を孕んでいたのだ。
何がどうしてそうなったのかは分からないが、俺を捨てた両親よりも浮気した妻よりも、信じていた幼馴染の裏切りが何より許せなかった。
力づくで揉み消したとはいえ、キャンディッドは俺の婚約者なのだ。勇者である俺の婚約者が魔王を選ぶなどあっていいはずがない。
頭にきた俺は国民からの人気が陰ったことでイライラする妻に俺が入手したキャンディッドの情報を流した。
もう一度魔王を殺せば国民人気も回復する。生まれる前ならば倒すのも容易なはずだ――そうやって甘く囁けば、俺に対し冷めていた妻の瞳に再び熱が灯った。
そもそも、王女とは魔王討伐という共通の目標があったからこそ結ばれたのだ。だとすれば、新たな討伐対象ができたことでよりを戻すのも当然のことなのかもしれない。
今では女王となった妻の協力を取り付けて、俺はキャンディッドの捕縛に成功した。このまま放置しておけば腹の子共々命を落とすことになるだろう。
けれど、もしもキャンディッドが俺を裏切ったことを謝罪し、魔王の子供を自ら手放してくれたら――母体であるキャンディッドの命までは取らずに、俺の愛人として密かに囲ってやってもよいと思っていた。
だから、わざわざ選択肢を与えてやったのに、キャンディッドはこの俺を拒絶したのだ。
キャンディッドの裏切りが許せなくて、気が付けば血まみれになるほど殴っていた。それで時期魔王の討伐という当初の目的は達成できたものの、キャンディッド自身も虫の息になっていた。
せっかく命を守ってやろうとしたのに。いつまでも腹を庇おうとするのが悪いのだ。
仕方なく俺は兵士に死体の処理を命じた。
仕方なく真摯に謝罪するふりで毒を仕込んだ花束をキャンディッドに渡そうとしたのだが、突然の突風で花束が近くの沼に飛ばされてしまい、口封じに失敗をしてしまった。
俺が仕込んだ毒のせいで沼に生息する魚が大量に死んだが、念のために他国から取り寄せた希少な毒を使ったうえに人をやってすぐに証拠隠滅を図ったので、キャンディッドはともかく村の者にはバレていないはずだ。
ただ、これのせいで俺が直接手を下すことも難しくなってしまった。
仕方なく俺は王家の威光をチラつかせて村人に脅しをかけた。そのことで居場所を失ったキャンディッドは故郷の村から姿を消した。これでどうにか秘密は守られた。
しかし、キャンディッドの口を完全に塞がなければ安心は出来ない。念のために適当に罪を捏造して指名手配をかけたが、どうしてもキャンディッドは見つからなかった。
そして、時が経ち――妻の不倫が発覚したことで、俺は無性にキャンディッドに会いたくなった。
キャンディッドは妻ほど美しくはないが見れない顔というわけでもない。少なくとも身持ちは固いし、あの女のように俺を裏切ることだけはないだろう。
指名手配をかけても見つからないことでこれまでは放置していたが、小さな頃から運だけはいいキャンディッドのことだ。その辺で野垂れ死んでいるとは思えなかった。
こうなってくると、命を奪えなかったことも運命なのかもしれない。
そう考えた俺は密かにキャンディッドを囲うべく、人を使って彼女の行方を探させた。
その結果――キャンディッドは最悪な形で俺を裏切っているのを知った。なんと、キャンディッドは姿をくらましている間に魔王の子供を孕んでいたのだ。
何がどうしてそうなったのかは分からないが、俺を捨てた両親よりも浮気した妻よりも、信じていた幼馴染の裏切りが何より許せなかった。
力づくで揉み消したとはいえ、キャンディッドは俺の婚約者なのだ。勇者である俺の婚約者が魔王を選ぶなどあっていいはずがない。
頭にきた俺は国民からの人気が陰ったことでイライラする妻に俺が入手したキャンディッドの情報を流した。
もう一度魔王を殺せば国民人気も回復する。生まれる前ならば倒すのも容易なはずだ――そうやって甘く囁けば、俺に対し冷めていた妻の瞳に再び熱が灯った。
そもそも、王女とは魔王討伐という共通の目標があったからこそ結ばれたのだ。だとすれば、新たな討伐対象ができたことでよりを戻すのも当然のことなのかもしれない。
今では女王となった妻の協力を取り付けて、俺はキャンディッドの捕縛に成功した。このまま放置しておけば腹の子共々命を落とすことになるだろう。
けれど、もしもキャンディッドが俺を裏切ったことを謝罪し、魔王の子供を自ら手放してくれたら――母体であるキャンディッドの命までは取らずに、俺の愛人として密かに囲ってやってもよいと思っていた。
だから、わざわざ選択肢を与えてやったのに、キャンディッドはこの俺を拒絶したのだ。
キャンディッドの裏切りが許せなくて、気が付けば血まみれになるほど殴っていた。それで時期魔王の討伐という当初の目的は達成できたものの、キャンディッド自身も虫の息になっていた。
せっかく命を守ってやろうとしたのに。いつまでも腹を庇おうとするのが悪いのだ。
仕方なく俺は兵士に死体の処理を命じた。
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