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12 変わらない幼馴染(勇者side)
しおりを挟むそんな俺も成長するに従いがっしりとした体つきになり、誰かに虐められることはなくなった。それどころか、他国の特徴を色濃く残した俺の容姿は異性を強く惹きつけるようになった。
俺が持つ輝く金髪も宝石のような青い目も、それまで虐められる原因となったもの全てが、そのまま俺の魅力へと変わったのだ。俺自身は何一つ変わっていないというのに、周囲からの手のひら返しには呆れてしまう。
女どものあからさまな態度にうんざりしていた俺は、復讐をしてやるつもりで片っ端から村の女に手を付けた。
王都から遠く離れた小さな村だ。ほとんどの人間は村を出ることなく、村人同士で結婚をすることになる。俺を虐めていた男どもは俺のおさがりで満足しているといい。そう思うと胸がすっとした。
好きな女を奪われた男の中には仕返しを企む血の気の多い奴もいたが、この頃には腕っぷしもかなり強くなっていたので、俺が負けることはなかった。
そんな俺はある日勇者に選ばれた。
俺を保護した教会に神託が下り、国宝の聖剣によって勇者の力が与えられたのだ。
それ以来。みんなが俺をちやほやした。今までのように村の人間だけじゃない。町の女や、領主の娘までもが俺と関係を持ちたがった。そんな中で、キャンディッドだけがずっと変わらなかった。
妊娠を盾に領主の娘に結婚を迫られたときは正直焦ったが、あの女とはただの遊びだった。あの女も初めてではなかったし、お互い合意の下で楽しんだだけだ。
それに、相手に気づかれぬようこっそり避妊薬を飲ませていたため、腹の子が俺の子供のはずはない。
自分が遊ぶ分には構わないが、俺は誰かのおさがりなんて御免だ。そんな軽い女と生涯を共にすることなんてできない。仕方なく俺は自分の身の潔白を示すため、キャンディッドの名を出して責任を逃れた。
俺の発言のせいでキャンディッドに不名誉な噂が流れてしまったが、どうせ将来的にはアイツと結婚をするつもりだったのだ。嫁の貰い手がいなくなったところで特に問題は無いし、優しいだけが取り柄のキャンディッドが俺のような村一番の人気者と結婚できるのだから、文句だってないはずだ。
現に、俺がどんなにひどい扱いをしてもキャンディッドは俺の唯一の幼馴染として変わらず傍にいてくれた。
親にすら捨てられた俺のことを、キャンディッドだけは見捨てない。それを確かめたくて――俺はついつい幼馴染を試すような真似を繰り返した。
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