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3 まだ早い愚痴
しおりを挟む「それでね、魔王様。勇者リキは年頃になると急にモテだしたの。もともと顔が整っていたし、彼は村で一番背が高かったから、女の子たちはみんな勇者リキを狙っていたわ。自分はそんな女の子たちを木陰に連れ込んであんなことやこんなことをして楽しんでいるくせに、私が他の男の子と目が合うだけで勇者リキは人を浮気者呼ばわり……おっと、もうこんな時間。魔王様は寝る時間よ」
「は? まだ早いだろう」
「だ~め。子供は寝る時間よ。早くベッドに横になって。昼間、お布団を干したから気持ちいいわよ。ほら、眠るまで私が横についていてあげるから。しっかり寝ないと大きくなれないわよ?」
吾輩をベッドに寝かしつけ、破廉恥にも同じベッドに横になってポンポンと優しく吾輩の胸のあたりを叩くキャンディッド。完全に子供を寝かしつける体勢だ。
一度滅ぼされた影響で赤子からやり直しているせいで、吾輩は今、一時的に子供の姿になっている。そのせいか、キャンディッドはやたら吾輩を子供扱いするのだ。
その割にキャンディッドから吐き出される愚痴は年齢制限を考えないエグイものが多い。それもこれも勇者がやらかしたせいなのだろうが……。
まあ、勇者に滅ぼされた後たった一年で赤子からここまで育ったのだから、角が生えそろって完全に元の身体を取り戻したら、コイツも吾輩を恐れて震えあがることであろう。それまでの辛抱だ。
「……それでね、領主様の娘の妊娠騒動があった時に真っ先に勇者リキの名前があがったの。まあ、それについては領主様の娘の虚言だったんだけど、アイツが『夜はずっとキャンディッドといた』って嘘をついたせいで、私は男グセが悪い誰とでも寝る軽い女だって村で不名誉な噂を立てられて……」
子供の情操教育に悪そうな女の愚痴を聞きながら、その日は寝た。
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