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316 イタズラ心と想定外
しおりを挟むおでこにごっつんこ。肉球ぺたぺた。
偽王子(猫)の謎行動に首を傾げながらも、その愛らしい動きに思わず口元が緩む。
「なあに? 猫ちゃんたらお熱を測ってくれてるの? 心配しなくても私は元気よ~(スリスリスリ)」
「! にゃ~ん♪(ゴロゴロゴロ♡)」
私の返答に満足したのか機嫌良さそうに喉を鳴らす猫ちゃん。
おおっと、まさかの正解だったようだ。もしかして、私が召喚早々猫ちゃんの体調をチェックしていたのを見て、それを真似していたのだろうか。
あらまあ、なんて頭の良い猫ちゃんなのでしょう……!
いいこいいこと頭を撫でると、猫ちゃんはゴロゴロと喉を鳴らしたまま、私が着ているふわもこ部屋着の上で丸くなってお昼寝体勢に入る。どうやら布地の感触が気に入ったようだ。
「ああ、そっか。猫ちゃんはこの部屋着を見るの今日が初めてだもんね」
「にゃあぁ~♡(モフモフ…モフ……)……スヤスヤ……」
ふわもこをモフモフしながら答える猫ちゃん。そしてすぐ幸せそうに寝息を立てだした。
この部屋着を買ったのは偽王子(猫耳)の召喚が途絶えた後だったから王子や偽王子(大・腹黒)にとってはおなじみだけど、猫ちゃんは今回が初対面。ふわもこ布地は手触りもよく暖かいので、一瞬で魅了されちゃう猫ちゃんの気持ちも解ります。
グッスリ眠っているところを起こすのは忍びないけど、また朝帰りして腹黒さんあたりに怒られたりしたらかわいそう。
なので、今日は寝不足覚悟で猫ちゃんのお昼寝に付き合って、召喚時間ギリギリの0時前に起こしてあげよう……と覚悟していたのだけれど、なんと猫ちゃんは30分ほどで目覚めて帰り支度を始めました。
え。これ本当に猫ちゃん?
別人、ってか、別猫に入れ代わったりしてないよね??
思わずそう考えてしまうほど今日の猫ちゃんは本当にいい子。偽王子(猫耳)の召喚が途絶えたのってあの朝帰りが原因だろうし、久々の召喚だから寝落ちを警戒しているのかな?
バイトあるし早く眠れるのはありがたいけど、私にとって猫ちゃんは貴重なモフモフ枠。今度はいつ来てくれるのだろうか。
「…はあ……次にいつ猫ちゃんが来るのかわかっていれば、前もって色々と準備ができるのになぁ……」
…ピクリ……。
私の何気ないつぶやきを聞き取ったのか、猫ちゃんが素早く机の上に飛び乗って、開いたままになっていた私のスケジュール手帳にポンポンポンっと前足を押し当てて……って、あれ??
なんか、猫ちゃんの肉球模様がキラキラと光って見えるんですけど……。
「え。何コレ、魔力か何か? ……もしかして、猫ちゃんが来る日を肉球スタンプで私に教えてくれているの?」
「にゃ~ん♪」
――と、名残惜しそうに私のふわもこ部屋着に身体をすりすりして、お久しぶりの猫ちゃんはご機嫌で帰っていきました。
え。マジで?
偽王子召喚のシフト管理まで出来るとか、ウチの猫ちゃん天才か!!
※※※※※
そうして予告されていた猫ちゃんの召喚予定日。
猫ちゃんが来ると判っている私はちょっとしたイタズラ心が湧いてしまった。
最近は毎日王子と100均に行っていましたからね。実はそこでイタズラに使えそうなモノを偶然見つけてしまったのです。
――と、いうわけで。
100均で見つけた猫耳カチューシャをバイトの帰りに購入。コレを頭につけて召喚したら、猫ちゃんはどんな反応を見せるのだろうか。
驚くかな?
無反応かな?
可愛く首を傾げたりして!
ワクワクしながら猫ちゃんの夜食用お握りをこしらえて、猫耳を装着して召喚に臨んだのですが――。
「いらっしゃい、猫ちゃ……って、え…………?」
どさ……っ。
……なんか速攻でベッドに押し倒されて、身動きが取れなくなっているんですけど……。
え、ナニコレ。何がどうしてこうなった!??
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