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310 闇堕ち幽閉王子は召喚主を離さない
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「……ええと。王子、ごめんね? あの日は熱のせいか頭がボーっとしていたからさ。私もあまり頭が回っていなくて……」
すっかり心を閉ざしてしまったらしい王子様はいつものように着心地のいいジャージに着替えるわけでもなく、目にも麗しい真っ白なジャラジャラ服のまま、私に背を向けて体育座りをしている。
う……どうしよう。
何ていうか、部屋の空気が重い。
「…それでね? 翌日からはテスト勉強しなきゃって気持ちを完全に切り替えちゃったから、王子のことはすっかり頭から消え……ヒッ……」
う……わっ、どうしよう。体育座りしている王子の前に回り込んでみたら、表情が虚ろで目が死んでる。
これは病んでるっていうか、完全に闇堕ちしちゃってますね。
え。コレ大丈夫? このまま王子のこと放っておいたらまずくない??
「ほ……ほらっ王子。一緒におやつ食べようよ! 今日は久しぶりの召喚だから、王子の大好きなポテトチップスが30%増量してあるよ!」
「……」
「コ……コーラも好きなだけおかわりしていいし、氷だって王子の好きな丸いやつを用意したよ!!」
「…………」
く……っ、これでもダメか。
「ホラ……まだ王子のプレイしていない新作の乙女ゲームもあるからさ……」
……ピク……。
お?
「後期テストも無事に終わったから、春休み中は王子の召喚回数だって増やせるし」
……チラ……。
お!
「だから、ほらっ! 気を取り直して一緒に乙女ゲームやろうよ! 久しぶりにクラフト系ゲームで幽閉されたい塔の建設を進めてもいいしっ! ねっ!!」
「…ギリギリ……攻めても怒らない?」
「怒らない、怒らない。ま、まあ、限度はあるけどねっ」
よしよしいいぞ……この調子。
注意しろ……今が、一番大事な時だから……。
「ポテチ……盗み食いしても怒らない?」
「怒らない、怒らない。ま、まあ摂取カロリーは気になるけどねっ」
慎重に……慎重に……。
「……本当に? 眼鏡に誓える?」
「も、勿論」
え? 何でそこで眼鏡??
「そっか!」
……って、え? 何、王子のその眼鏡への謎の信用度。
ってか、王子に自分の性癖を完全に把握されているようで、それはそれで何かすごく嫌なんですけど……。
――と、いうわけで。どうにか闇堕ちしていた王子のご機嫌を取ることに成功し、一緒に新作乙女ゲームを始めたわけですが……。
「……あの……王子、ちょっと苦しいんだけど」
「嫌だ。僕はもう召喚主から離れないぞ」
王子の闇堕ち状態は続いているらしく、いつも通りにゲームをしながらも絶対に逃がすものかという勢いで私にぎゅうぎゅうとしがみついてくる。
いやまあ、3D酔い防止用の眼鏡があるから、日頃から王子と腕を組んでゲームすることには慣れているんだけどさ。
いくらなんでも密着度がおかしいというか、これは流石に……。
王子だって私を抱え込むようにしてコントローラーを持っているわけだから普通にゲームがしづらいと思うんだけど、いくらそう言っても聞く耳を持ってくれない。
それどころか。
「な……っ、召喚主いったいどこに行くんだ!? もしかして、僕を部屋に置き去りにしてそのまま見捨てる気か!?」
「いや、お茶のおかわりを持ってくるだけだってば」
「嫌だ! 召喚主と離れたくない!! 僕も一緒について行くからな!!!」
私がちょっと王子から離れるだけでもこの大騒ぎ。キッチンに行ってお湯を沸かすだけでも大慌てで私の後ろをついてくる。
いや、王子ってば母親から離れたくなくてギャン泣きする保育園児か何かなの?
お金持ちの大豪邸とかならいざ知らず、狭い学生向けのアパートなんだから部屋のどこに居ようがお互いの姿が見えるし、声だって聞こえるでしょうよ。何なら隣の部屋の音まで聞こえるくらいなんだからさあ……。
少し召喚が途絶えたからって、王子ってばどんだけ心が追い詰められてんのよ。
挙句の果てにトイレの出待ちまでしようとしてくるから参ってしまった。これには流石に文句を言ったけど、そしたら今度は逃げられないようにと魔法で首に縄みたいのをつけられた。…なんか、お散歩中の犬みたいなんだけど、何だコレ……。
このままでは落ち着かないしやってられない。仕方がないのでゲームはやめて、気分転換のために王子を買い物へ連れ出すことにした。
すっかり心を閉ざしてしまったらしい王子様はいつものように着心地のいいジャージに着替えるわけでもなく、目にも麗しい真っ白なジャラジャラ服のまま、私に背を向けて体育座りをしている。
う……どうしよう。
何ていうか、部屋の空気が重い。
「…それでね? 翌日からはテスト勉強しなきゃって気持ちを完全に切り替えちゃったから、王子のことはすっかり頭から消え……ヒッ……」
う……わっ、どうしよう。体育座りしている王子の前に回り込んでみたら、表情が虚ろで目が死んでる。
これは病んでるっていうか、完全に闇堕ちしちゃってますね。
え。コレ大丈夫? このまま王子のこと放っておいたらまずくない??
「ほ……ほらっ王子。一緒におやつ食べようよ! 今日は久しぶりの召喚だから、王子の大好きなポテトチップスが30%増量してあるよ!」
「……」
「コ……コーラも好きなだけおかわりしていいし、氷だって王子の好きな丸いやつを用意したよ!!」
「…………」
く……っ、これでもダメか。
「ホラ……まだ王子のプレイしていない新作の乙女ゲームもあるからさ……」
……ピク……。
お?
「後期テストも無事に終わったから、春休み中は王子の召喚回数だって増やせるし」
……チラ……。
お!
「だから、ほらっ! 気を取り直して一緒に乙女ゲームやろうよ! 久しぶりにクラフト系ゲームで幽閉されたい塔の建設を進めてもいいしっ! ねっ!!」
「…ギリギリ……攻めても怒らない?」
「怒らない、怒らない。ま、まあ、限度はあるけどねっ」
よしよしいいぞ……この調子。
注意しろ……今が、一番大事な時だから……。
「ポテチ……盗み食いしても怒らない?」
「怒らない、怒らない。ま、まあ摂取カロリーは気になるけどねっ」
慎重に……慎重に……。
「……本当に? 眼鏡に誓える?」
「も、勿論」
え? 何でそこで眼鏡??
「そっか!」
……って、え? 何、王子のその眼鏡への謎の信用度。
ってか、王子に自分の性癖を完全に把握されているようで、それはそれで何かすごく嫌なんですけど……。
――と、いうわけで。どうにか闇堕ちしていた王子のご機嫌を取ることに成功し、一緒に新作乙女ゲームを始めたわけですが……。
「……あの……王子、ちょっと苦しいんだけど」
「嫌だ。僕はもう召喚主から離れないぞ」
王子の闇堕ち状態は続いているらしく、いつも通りにゲームをしながらも絶対に逃がすものかという勢いで私にぎゅうぎゅうとしがみついてくる。
いやまあ、3D酔い防止用の眼鏡があるから、日頃から王子と腕を組んでゲームすることには慣れているんだけどさ。
いくらなんでも密着度がおかしいというか、これは流石に……。
王子だって私を抱え込むようにしてコントローラーを持っているわけだから普通にゲームがしづらいと思うんだけど、いくらそう言っても聞く耳を持ってくれない。
それどころか。
「な……っ、召喚主いったいどこに行くんだ!? もしかして、僕を部屋に置き去りにしてそのまま見捨てる気か!?」
「いや、お茶のおかわりを持ってくるだけだってば」
「嫌だ! 召喚主と離れたくない!! 僕も一緒について行くからな!!!」
私がちょっと王子から離れるだけでもこの大騒ぎ。キッチンに行ってお湯を沸かすだけでも大慌てで私の後ろをついてくる。
いや、王子ってば母親から離れたくなくてギャン泣きする保育園児か何かなの?
お金持ちの大豪邸とかならいざ知らず、狭い学生向けのアパートなんだから部屋のどこに居ようがお互いの姿が見えるし、声だって聞こえるでしょうよ。何なら隣の部屋の音まで聞こえるくらいなんだからさあ……。
少し召喚が途絶えたからって、王子ってばどんだけ心が追い詰められてんのよ。
挙句の果てにトイレの出待ちまでしようとしてくるから参ってしまった。これには流石に文句を言ったけど、そしたら今度は逃げられないようにと魔法で首に縄みたいのをつけられた。…なんか、お散歩中の犬みたいなんだけど、何だコレ……。
このままでは落ち着かないしやってられない。仕方がないのでゲームはやめて、気分転換のために王子を買い物へ連れ出すことにした。
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