291 / 326
291 お兄ちゃんと鈴木さん
しおりを挟む「お兄ちゃん、いらっしゃい。さっき電話で会社の人が一緒って言っていたけど……って、え!? 鈴木さん!??」
「なっ、ルカちゃん!??」
「――――よし! おい、ルカ。デコピンするから前髪あげてちょっとおでこ出せ」
「――何で!!??」
※※※
大雪が降った日。
代打でのコンビニバイトが終わって、帰宅後のお風呂上がり。
「どうだ、召喚主! 僕の作った雪だるまは見事だっただろう!」
「王子。確かに見事な出来栄えだったけどさぁ……あれじゃ雪だるまじゃなくて雪まつりでしょうよ。何なの、あの雪像の完成度。しかも、なんか竜の目が暗闇で赤く光っていたんだけど」
「ああ、それな……。本物の目は違うんだけど、雪で作った都合上、赤の方が映えると思ったんだよ。召喚主的にはリアルを追求した方が良かっただろうか? 大きさを妥協した以上、僕としてもそこは最後まで迷ったんだが、やはり映えがなぁ……」
「……いや、映えとかは別にどうでもいいんだけど。そんなことより、目が光ってるアレ、王子の魔法でしょ? こっちであまり目立つことはしないでよね」
――等々。
セルフ召喚してきた王子から雪だるまの感想を求められ、十分の一スケールの闇落ち竜の完成度についてあれこれ話している時に、お兄ちゃんから電話がかかってきた。
「はい、もしもし……ああ、お兄ちゃん。急にどうし――え!? 電車が止まって帰れない? しかも、この雪で会社のエアコンが? うわー、寒いのに大変だねぇ。うん、いいよ、いいよ。困ったときはお互い様だし。うちで良ければおいで。お客様用のお布団とかないからゴロ寝になるけど……あ、寝袋はあるんだ? ――は!? 会社の備品!?? 大丈夫なの、その会社……。ああ、うん。ご飯くらいは用意するよ。でも、あんまり遅くなると近所迷惑になるからお風呂は難し……え!? これからすぐに行くから大丈夫? うわわわ…、解った!! 急いで帰ってもら……ああ、いやこっちの話。ハイハイ。会社の人も一緒なのね。うん、待ってる!(やべえ!!)」
お兄ちゃんとの電話中。
手持無沙汰なのか全自動召喚機をいじっていた王子が、通話を切った途端に何やら慌てた様子で私に話しかけてきた。
「おい、召喚主どうした!? もしかしてお兄ちゃんとやらが家に来るのか!? 僕にお下がりをくれた、例のゲームが上手なお兄ちゃんか!??」
「そうよ。私の上から三番目のお兄ちゃん。この雪で家に帰れないのに会社のエアコンが壊れちゃったから、これから会社の人と一緒にウチへ泊まりに来るって。……それで、王子には悪いんだけど……」
「それは大変だ。急いで準備しないと!! 分かった、すぐ帰るから!!」
「え? あ、うん」
来た早々悪いな……とは思ったが、お兄ちゃんとの会話で何となく状況を察したらしい王子が空気を読んでサッと向こうに帰ってくれた。聞き耳を立てて慌てていたし、もう少しごねられるかと思っていたが――正直、助かった。
ただでさえ急なお客様でゴタゴタしているのに、これで王子まで居た日には収拾がつかなくなってしまいますからね。
――で。電話で言っていた通り、しばらくしてお兄ちゃんが来たわけですが。
「……いや…、まさかアイツの妹がルカちゃんだったとは」
「……私もビックリしました……。……まさか、お兄ちゃんと鈴木さんが知り合いだったなんて」
そう、何とお兄ちゃんがまさかの鈴木さん連れでやってきたのだ。
どうやらお兄ちゃんと鈴木さんは同じ会社に勤めていたらしく、鈴木さんはお兄ちゃんの直属の上司にあたるのだとか。
前に鈴木さんの会社名を聞いた時に何となく聞いたことある気がしたんだけど――どうりで聞き覚えがある訳だ。
44
お気に入りに追加
353
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる