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281 悪魔王子と鈴木さん~感動の再会~3
しおりを挟む「あ、そうだ。二人に渡す物があったんだ。はいお年玉」
ケーキを食べながらアレコレ考え事をしていたら鈴木さんが急にカバンからポチ袋を出してきた。
「おとしだま?? ……あ、滅多に見ない紙のやつ」
と、王子は速攻で鈴木さんから貰ったポチ袋を手に取って中を覗き込んでいる。いやいやいや。何してんの、普通目の前で開けたりしないでしょ。
ってか、王子はともかく、流石に私はそこまで甘えるわけにはいかないだろう。『妹』とか言ったって、そんなの鈴木さんが一方的にそう言っているだけで、血縁ないどころか王子の事さえなかったら、ぶっちゃけただの他人だし。
「いえいえ、鈴木さん。コーヒーをご馳走になるだけでも心苦しいのに、流石にここまでしていただく訳には……お気持ちだけいただいておきます」
……と返そうとしたのだが、鈴木さんは首を振る。
「いいから。ルカちゃんにはあの魔法陣を引き取って貰った恩もあるからね。正直なところ、俺も色々と限界だったからルカちゃんにはすごく感謝をしているんだ。仕事だって忙しいのに、王子絡みでコツコツコツコツ色んな事が積み重なってしまって、その……心が折れて」
あ、それは想像がつきますね。
むしろよく耐えた方だと思います。
「それにさ、俺も経験したから分かるけど、正直なところ王子の召喚を続けるにも学生のバイトだけでは色々とキツイところがあるだろう? おやつ代だけでも結構かかるし」
「……それは」
確かに……王子を召喚するようになってから、色々と犠牲にしているところはある。主に乙女ゲームとか乙女ゲームとか乙女ゲームとか。支出が増えた分、厳選して買うようにはなりましたね。
大学がある以上そんなにバイトも増やせないし、王子だけじゃなく偽王子がわらわらやってくる現状を考えると、経済的にはかなりキツイ。
「そうだ、『お年玉』が受け取りづらいなら『養育費』って考えたらいいんじゃないか?」
「養育費……ですか?」
「そう。俺としてはコイツを引き受けてもらっただけで充分すぎるほどありがたいし。コイツに色々な経験させてやるのに使ってもらえれば、今後誰かに魔法陣を引き継ぐ時に役に立つだろう?」
確かに……『この先』を考えるなら、鈴木さんが王子にやってくれたように、少しでもこちらの常識を身に着けさせる必要がある。そして、それにはどうしても資金がかかる。日々のおやつ代然り……スーパーでの買い物然り。
……考えたくはないけれど。いつかは考えなくちゃいけないことではある訳で。なるほど『養育費』か。
ただの言葉遊びではあるけれど、思いのほかその言いかえはすんなりと受け入れることが出来た。
「分かりました。鈴木さん、ありがとうございます。これは王子の為に使わせてもらいますね」
「うん。まー、二人ともまだ若いんだし、あまり難しく考えずに楽しく使ってくれたらいいから」
「あ。じゃあ、僕は駅前のゲーセン行きたい」
……いや、王子はもうちょい考えろ。
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