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277 王家の影side

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「なー、なー、なー、なー、なー、なー、なー、なー。何でオレだけ王子の身代わりの仕事外されんだよ! ズルいぞ、オレだって召喚されたいのに!!」

「にゃーにゃーにゃーにゃーウルサイですね、この馬鹿猫が。貴方が規則を破ったからでしょう。いい加減諦めなさい」

「朝帰りしたのは悪かったよ。でもしゃーないじゃん、アイツんちスゲー居心地いいんだもん」


 オレだって身代わりを務める王家の影として、王子がやったこと以外やっちゃ駄目なのは解ってる。でも、王子の代わりに召喚されているうちにどんどん居心地よくなって、気が緩んでしまったのだ。

 そのせいでウッカリ寝落ちして、帰る時間を大幅に過ぎてしまった。

 ――ま、豪快に遅れたお陰で王子の奴完全に熟睡していたから、鉢合わせすることも気付かれることもなかったけどな! 何てったってオレ忍び足するの得意だし! 

 だから堂々とスキップしながら眠っている王子の真横を通ってやったんだ。猫の姿で。あいつ『うぅ~ん、暖房費節約最高……』とか変な寝言を言ってて、全然起きねーの。
 召喚主にもあの時のオレの華麗な肉球捌きを見せてやりたかったぜ☆

 あ、今度みせてやろうかな?


「……何を偉そうにしているんですか。そして何をしているのですか。少しは反省なさい」

「あ~! 陰湿眼鏡め、お前またオレの心読んだな。――ま、文句言う手間省けるから別にいいけどな。オレには隠さなきゃいけないことなんか一つもね~し。お前のそのスキルって猫んときも話せるから何気に便利だよな~。他の影にももっと普及すればいいのに。きっと獣人連中大喜びするぜ? まあ、もし召喚主に対して使ってたりしたらとんだセクハラ野郎だけど……って、笑顔で睨むなよ。え? マジ? お前やってんの? ガチで? うっわー、引くわー。あ、ウソウソ水魔法やめて、オレそれ嫌い。……ってかさー、アイツんち本当に居心地いいんだよ。何、あの乗っかるだけでダメになりそうなクッション。初めて乗った時ビビったわ。あんなんフツーに眠くなるだろ。気持ち良すぎて」

「……まあ、それは否定しませんが」

「だろ!? ついつい飛び乗りたくなっちゃうよな!? え? それはしねーの? 今度やってみ? あ、でもお前は年齢的に……あ、ダメダメ、水魔法はダメだって、あーっ、コラ、冷た……シャ――ッ!! ……ったく、自慢の毛並みが乱れるじゃんか。せっかく召喚主のお気に入りなのに傷んで嫌われたらどうすんだ……って、あ、そうそう、召喚主の話をしてたんだ。アイツって王子を召喚するときおやつ用意してくれるじゃん? あれスゲーよな。オレ、完璧に王子の姿に擬態してっから絶対にこっちの正体には気付いていない筈なのに、アイツ確実に好みを読み取ってくれっから、オレついついリラックスして猫の姿で行っちゃったもん。そしたら待遇良いのなんのって! あいつにギューッとされんの至福のひとときだね。あ! 誤解すんなよ、これくらい王子だってやってるからな? 王子の奴、あっちで昼寝して寝ぼけて召喚主ギューってやって、めっちゃ焦ってて超ウケル。アイツ寝起きわりーからな。こっそり日記読んで爆笑したね。え? 王子がつけてる日記の隠し場所? 毎回変えてて、ゴリゴリの認識阻害かかってるけどフツーに匂いで分かるよ? オレ鼻いいもん。まー、確かにギューッとするかされるかの違いはあるけどそんなん誤差だろ。問題ないって。セーフセーフ。つーか、問題はそこじゃねーよ。アイツのおもてなしマジスゲーんだって。こっちが完璧に擬態してても猫んときは水飲みやすいようにコップじゃなくて皿を用意してくれるしさー。24時間勤務だっつったら、腹減ってるだろーって夜食まで持たせてくれて、もう完璧! へへっ、ココだけの話、猫の時のがオニギリの数多いの。アイツもうオレの毛並みに夢中だな。不思議だよなー、オレ完全に王子化してんのに。アレ、きっと『本能』で読み取ってるんだぜ。まあオレも獣人として本能については理屈じゃねーって分かってるけど、アイツの場合はオレらと違って魔力すらねーじゃん。つーか魔力0って逆にすごくね? よく生きてられるよな。そういうのってフツー死ぬだろ。まー、守護してる奴いるのかたまーに変な魔力纏っててムカつくからオレ様の魔力で上書きしてやってるけどな! あー、証拠残すなって顔してる! でもしゃーねーだろ。だって、マーキングされてるみたいでムカつくんだもん。何、あのねっとりとした妙な魔力。キモッ。王子のとは違うし、アイツの家族? のとも違うしさー。アレ、確実に狙ってきてるだろ。だからさー、アイツにはオレが必要なんだって! 王子の馬鹿はそういうの気にしないっつーか、鈍くて気付かねーから、アイツ守るのオレの役目なの! 獣人の生存本能はつえーから、その辺敏感に察せるの! アイツんち、もうオレのテリトリーみたいなもんだし、オレがサクッとやんのはいいけど、他人に手出しされたくねーんだよ。お前とかでっかいのとか、影仲間やポンコツ王子は家族みたいなもんだからいーけどさ。ああ、あとアイツの家族? +1は無害みたいだし。一匹妙なのは紛れ込んでるけど――ま、群れに入った優先順位ってのはあるからさ。オレってば待てとかできる系の猫だし。召喚主に言われたもんね。ちゃんとお握り用意できるの待ってて偉いねー、いい子いい子って。頭撫でてくれるから気分良くて、つい喉をゴロゴロと鳴らしちゃったね。それでも、あのねちっこいオスだけは絶対にダメ。どっか持ってかれちゃう。……それにさ、こないだ気付いたけど、多分アイツってオレの「ストップ。その辺になさい」」

「いや、多分じゃないな。絶対アイツ、オレのツ「待て」」

「何を平然と話し続けているのです。少しは黙りなさい、この馬鹿猫が。食堂の獣人用裏メニューのシャケお握り廃止にしますよ?」


 ぴた☆




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