魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
上 下
269 / 326

269 おもてなし召喚主VS悪戯っ子精霊

しおりを挟む

「ん? 召喚主どうかしたのか?」

「あ、いや……何か、キラキラしたのが王子の周りに見えるんだけど」


 まるで。漫画に出てくるイケメンのキラキラ表現のように。王子の周りが物理的に光って点滅している。

 ちょっと眩しめの白いホタルみたいな感じというか……。

 真っ昼間でそれが似合う王子の周りだからいいけど、暗い夜道だったら悲鳴を上げる自信がある。どことなく心霊写真のオーブっぽくもある。


「――ん? ああ、昨日集めた精霊が何体か付いてきちゃったのか」

「は? 精霊??」

「ああ。昨日の塔でのイルミネーション祭りでテンションが上がってはっちゃけているんだろう。もしかしたら僕の話を聞いてこっちに興味を持ったのかもしれない。どちらにしても神聖な存在である彼らは魔法陣なんて使わなくても自由に行き来できるから、ほどほどで満足して帰るか気に入って住みつくか、自分達で適当に判断するだろう。放っておいて大丈夫だ」


 扱い雑だな!! たった今、神聖な存在って言ったばっかじゃん! いいのかソレで。

 ……ってか軽~く言っているけど、そもそも精霊って王子が勝手に招集しちゃっていいものなの? 街に存在して当然のモノが根こそぎ塔に集まっちゃったりしたら国民の日常生活に支障が出そうなんだけど。


「……ねえ、王子。さっき王都中の精霊集めて塔を光らせたって言っていたけど、そんなことして大丈夫なの? 王都? から精霊が消えたらソコに住んでいる住民が困ったりしない? それに突然塔が光るとか、そんな異常現象が起こったりしたら見た人が怯えそう。天変地異の前触れだとか思われたりしないかな?」

「いいや? 精霊は気に入った人間に手を貸してくれることもあるが、暗い夜道で転ばないよう足元を照らしてくれるとかその程度だ」

 トナカイ的なやつかな?


「でも気まぐれだから飽きたらすぐに手伝いをやめてどっか行っちゃうし、国民の方もそこまで精霊を頼りにはしていない。基本的に見えないから王都民は周囲から精霊がいなくなったことに気が付いてすらいないと思うぞ。まー、イルミネーションの目撃者は多少驚いたかもしれないが、そもそも精霊は祝福を与えてくれると言われているからな。塔の光を見た者は『縁起がいい』と喜んでいるはずだ。精霊はイタズラ好きだからそういう事をやりかねないし……まあ実質的な影響としては癒し効果で見た者がちょっとほっこりするくらいだな」


 茶柱的なやつだった。


 そしてどうやら精霊の存在は生活に必須という訳でもないらしい。う~ん……まあ、困る人がいないのなら別にいいか。


 王子についてきちゃった精霊は物珍し気に私の部屋の中を飛び回っている。テレビに集まったり照明器具に集まったり。電気に興味津々らしい。電化製品に自己アピールして光ったりしているからもしかしてお見合い気分だったりするのだろうか。それか異世界観光とか?

 放っておいていいと言われたが、何となく気になったのと王子にこき使われてさぞお疲れだろうと思ったので、自分の分のケーキを少し切り分けて彼ら用に置いてみた。

 疲れた時には甘い物って言うし。
 精霊にそれが通用するかは謎だけど。


「うん! やっぱりこっちで食べるケーキは美味しいな~。クリスマス楽しいな~。あ、お茶がない」

「あ。ハイハイ」


 王子の紅茶が空になったのでお代わりを注いでやる


 そうして一瞬ケーキから目を離すと。


 ごそっ。

 え。精霊用ケーキが減っている!?


「あ、ミルクがもう無い」

「すぐ持ってくるわね」


 ごそごそ。


 ……また減ってる。

 食べているところは見えないけれど、一瞬ケーキから目を離すと量が減る。何、この不思議現象。3度目で精霊用のケーキは完全になくなった。

 王子は既に自分のケーキを食べ終えて、クラフト系ゲームを立ち上げ久々の建築に夢中になっている。ゲーム内に作った幽閉中の塔にイルミネーションを仕込んでいるようだ。よほどキラキラが気に入ったらしい。

 それはともかくとして、ケーキの行方が気になる私は更に自分の分を切り分けて精霊用のお皿に置くが、ついつい王子の建築に気をとられて目を離すとケーキが減る。

 何だろうこの『だるまさんが転んだ』的なヤツ。
 何か悔しい。

 どうしてもその瞬間を見たくなった私は今度はかなり大きめにケーキを取り分けた。

 王子の建築を見るふりをして……



 だるまさんが転んだっっ!!(超高速)



 ご……そ…?


 光がわらわらと集まって、ガツガツと豪快にケーキをかっ食らっている。私に見られているのに気が付いて精霊たちのその動きがピタリと止まった。

 その後、決定的瞬間を見られて諦めがついたのか、精霊たちは開き直ってゆっくりとケーキを食べだした。私としても満足したので、紅茶も淹れてあげると精霊たちは嬉しそうにわらわら~っとそちらに移動する。ちょっとかわいい。

 せっかくホールケーキを買ったものの、ほとんどを精霊にあげてしまったので私が食べられたクリスマスケーキはごく僅か。だけどとっても満足です。


 なんかいいものが見られたし!(ほっこり♡)


 ……って。
 ああ、王子の言っていた癒し効果ってコレのことか。納得。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...