魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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267 非リア召喚主のクリスマスパーティーへようこそ

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「メリークリスマス!」
「メリ―クリスマス!!」

「さあ、王子。温かいうちに食べましょう!!」

「うわぁ、どれも美味しそうだな~♪」


 王子に駅前のイルミネーション見せた私のせいかもとか。
 怒った腹黒さんにサクッと消されたらどうしようとか。

 幽閉中の塔をキラキラさせた件について色々と思うところはあるけれど、とりあえず面倒なことは全て後回しにして用意したご馳走を食べることにした。

 この先起こりうる現実的な事を考え出したらせっかくのご馳走を前にして食欲が無くなっちゃいますからね!

 何よりせっかくのチキンが冷めちゃうし!!


 ――ってな訳で!
 今回私が用意したのは腹ペコ学生の強~い味方、コンビニチキン。

 バイト帰りに朝イチでスーパーに寄ったんだけど、残念ながら店内は既にお正月一色。

 期待していた割引き骨付きチキンは買えなかったので、チキンだし美味しいしコレでいいや……ってことで、ここはコンビニに戻ってバイト先の売り上げに貢献しました☆

 ちょっと味気ないかな? とも思ったんだけど、お陰でレンジしなくてもアツアツだからそれもあって早く食べちゃいたかったんだよね。ホットスナックは買いたてが一番美味しいし。

 王子の話が長すぎてほんの少し冷めちゃったけど、この位なら許容範囲です。うん、美味しい!


 ちなみにクリスマスケーキは三割引きでちょうどいい大きさのホールケーキがあったからそれを購入。これはデザートとして食後にいただきますよ☆

 割引が半額までいかなかったのは残念だけど、最近はクリスマスケーキも注文生産が多いみたいだから仕方ない。欲をかくと売り切れちゃいますからね。まあこんなものでしょう。

 そもそもケーキについては二個入りくらいのカットケーキを買うつもりだったのだ。

 けれど私が期待していたちょうどいいの(割引き)がなかったのと一人でホールケーキを食べるのが夢だったから、いい機会なのでそれを実現させることにしました!

 王子と二人で食べるから半分こにはなっちゃうけど、一人でワンホール食べるとなると絶対にキツイし何より途中で飽きると思う。
 その状態でどうにか完食しても後で体重増えて更に後悔しそうだから、ほどほどの大きさで半分こならむしろ無理をせずに夢を叶えられていいんじゃないかな。

 あとは前もって作っておいたスープや揚げ物等のおかず、それに王子の為に新鮮なサラダをた~っぷりとご用意しました。

 パーティーとはいえ、栄養バランスは大事ですからね! ええ。

 テーブルの上には実家から持ってきた卓上型のミニツリーも飾って、クリスマスの雰囲気もバッチリです。

 うん! 一人暮らしの貧乏学生にしてはよく頑張ったと思う!!



 私が用意したご馳走は王子様にもご満足いただけたようで、『温かい美味い』と言いながら宣言通りに遠慮なく食べている。食べっぷりが見ていて気持ちがいい。こちらとしても頑張って用意した甲斐がありますね。雰囲気に流されて嫌いなお野菜もしっかり食べてくれていますよ。

 そして食欲と共に好奇心旺盛な王子様は私に『クリスマス』についての質問をアレコレと投げかけてくる。



「なるほど、クリスマスは『チキン』を食べるんだな?」

「――え。うん、ええと……日本では?」


 おっと、微妙に答えづらい質問がきましたね。


『本当は七面鳥』とか『本場では~』とか、別にそういうのは説明しなくてもいいかな。王子としてもちょっと知りたいだけだろうし。『じゃあ七面鳥が食べてみたい』とか言われても困るし。

 伝統云々なんてあえてうるさく言わなくてもねえ。


「フムフム。そしてクリスマスは『家族で過ごす』と」

「そう! 『本場では』ね!!(即答)」


『クリスマスは恋人と~』とか『彼氏と~』とか、いったい誰が決めたんでしょうねぇ。そういうのは乙女ゲームの中だけで満足しています。ええ。

 なので、そこは本場準拠で。
 敢えて言いましょう、伝統は大事!!


「僕がやった乙女ゲームではクリスマスは『12月24日か25日』だったけど、今日は『12月26日』なのだが…」

 ……それは私が貧乏学生だからですね。



「――って、ああもう! クリスマス本番はリア充やご家族持ちのバイト仲間がイロイロと忙しいから、予定のない私はバイトだったの! まったく、そんな答えづらい質問ばかりしてくる悪い王子にはプレゼントあげませんよ!」

「――え!? いやいや、それは困る! ええと……召喚主はリア充じゃないから働いていて偉いな~! いつもお得でしっかり者だな~! 僕はお得なクリスマスはいいと思うぞ!!」


 ――よろしい。解ればいいのです。
 発言に若干引っかかるところはありますが私情を挟んでイジメるのも大人げないので、頑張って空気を読んだ良い王子様には用意しておいたプレゼントをあげましょう。努力賞です。


「!!!! すごい! 大きなブーツだ!!」


 おっと外側に大喜びしていますが、ソレは実家から持ってきた使いまわしですね。メインは中身。

 でもまあ、喜んでくれて良かった。何年か前にお兄ちゃんがウケ狙いで特大のクリスマスブーツくれたんだけど、中身のお菓子を食べ終わっても勿体なくてなんか捨てられなかったんだよね。うまいこと有効利用が出来ました。

 これをくれた二番目のお兄ちゃんもきっと喜んでくれることでしょう。





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