魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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247 鈴木さんと後輩君2(前の召喚主視点)

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「妹が男と腕を……相手はお年寄りか? 小学生か?」

「いや、俺、正面から見た訳じゃないんで。ただ、すっごい背の高い男でした。だから少なくともその二つはないですね。たぶん服装から同年代? くらいかと」

「それは……」

「それは?」







「――道案内、だな」





「――は!? いやいやいや、鈴木さん何で俺より現実逃避してるんスか。腕組んでるんですよ!? しかも言ってなかったけど相手金髪ですよ!??」

「……それなら見知らぬ土地で迷子にでもなっていた外国人を保護していたに違いない。他にあるか? いや、ない。あってたまるか。うんうん。わざわざ目的地まで連れて行ってやるなんて優しい妹さんじゃないか」

「いやいやいや、流石に無理が……って、いや、そうでもないか? ウチの妹、やたら面倒見がいいからな……。そういえば、何故か男の方が妹に縋りついていたような印象が」

「――だろ!? そうだよな!? そうだと思ったんだよ!! 大学生の妹にそんなのはまだ早いもんな!??」

「いや、だから何で俺より必死なんですか。鈴木さん、俺の妹に会ったことすらないでしょうに」

「俺の(心の)妹は俺の妹、お前の妹も俺の妹だ。」

「何スかそのとんでも理論。でもそうですよね、妹に彼「それ以上は言うな」あ、ハイ……ってか、鈴木さんのその妹愛はどこから来るんですか。鈴木さん姉だけで妹いないでしょうに」

「いるぞ? スマホの待ち受けにしている。例の妹から成人式の写真送ってもらったんだ。ああ、今は二十歳の集いとか何とか言うんだっけ。見せてやりたいが、私用の携帯はロッカーの中だしな……」

「いや、いいッス。遠慮します。てか、ソレただの心の妹さんじゃないですか。成人式の写真なんてどうしたんですか??」

「いつものバイトの時間に居ないから心配で昼間にメールしたんだよ。そしたら、成人式の前撮り写真撮るのに実家に帰っているって、写メを送ってくれたんだ。いい子だろう? やっと写真を手に入れた。もちろん永久保存した」

「鈴木さんいい人なのになあ……どこで道を間違えたのかなあ……。ってか、その女もよくそんな写メ送ってきましたね? ウチの妹も今年二十歳だし妙な相手に関わらないように注意しよう。あいつガード硬いクセに、変な奴に自ら関わりに行くとこあるからな……」

「おい、妹の悪口はやめてもらおうか。だが、注意は賛成だ。俺も自分の妹に注意しておこう」

「あーハイハイ『心の』妹さんね」

「おっと、そろそろ昼休み終わるな」

「あ、鈴木さん。そのパン食わないんなら俺にくださいよ。妹の話聞いてもらって安心したら腹減っちゃって」

「こっちは俺の残業時の夜食用だったんだが……まあ、いいか。同じ兄!! として! お兄ちゃんの辛さは俺にもよぉ~く分かるからな。うんうん。仕方ない、ほら」

「やった! あ、新商品」

「妹のお勧めだ。せっかくだから、味わってゆっくり食えよ。早食いは体に悪いからな。お前の急ぎの書類は代わりにやっといてやる」

「あいらひょーほらいはふ」

「いいって。夢のお陰で今日の俺は特別機嫌がいいからな!」


 俺の残業時の夜食がなくなってしまったが、スープくらいはあるし、仮眠室に泊まってまた朝方に例のコンビニで買い込めばいいよな。明日の朝食と昼食と夜食分。妹に会えるかもしれないし。いやきっと会える。必ず会える。



 夢のお陰か。俺の熱意が通じたのか。無事バイト中の妹に会うことが出来た。

 そのうえ、王子の過去のやらかしを聞いた彼女から、


『私が王子と楽しく遊んでいられるのは鈴木さんのお陰なんだってよぉぉ~く分かりました。鈴木さんは王子召喚の先輩だから、私からしたら『召喚主』のお兄ちゃんですね! 鈴木さんが前召喚主でよかったです』


 ……とまで言ってもらえた。あまりの嬉しさにお勧めされるまま新商品のスイーツを山のように買ってしまったので、同じく残業続きの他部署の人間に差し入れをしたら喜ばれた。やはり妹は世界を幸せにする存在のようだ。


 それにしても。


『お兄様』に『お兄ちゃん』……か。ここまでのハードスケジュールは久々だが、疲れが吹っ飛ぶ勢いで調子がいい。昨日までの疲れがまるで嘘のようだ。…というか、あと一カ月は残業できる元気をもらったぞ(ニヤニヤニヤニヤ)。

 ――なので。


 誰が出るかで揉めていた正月の出勤は率先して俺が引き受けようと思う。


 ――コンビニに行く口実も出来るしな!!






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