魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
上 下
243 / 326

243 過去のアレコレ

しおりを挟む

「☆☆☆※☆☆※☆※※っ※※※! △△☆※※☆☆☆○○△△※※…………凄い。ミルクティーは大好きだが、こんなの初めてだ。甘くて美味しい! 食感が面白い! 豆腐でもない、ゼリーでもない、何だコレは! あはは、何だこのストロー、太い」

 お手手繋いでタピオカ飲みながら帰っている途中、翻訳魔法発動圏内に入りお互いの言葉が通じるようになると、ようやく王子のマシンガントークが聞き取れた。

 いや、王子ってば豆腐を知っているのか? もしかして異世界にも存在する……? 食堂のメニューにシャケお握りもあるらしいし、あり得るかも……と思い質問すると、豆腐は前の召喚主の鈴木さんに教わったらしい。


 まだ王子が鈴木さんに召喚されていた頃。

 鈴木さんが料理中に『悪いがそこの机の上に置いてある買い物袋に豆腐が入っているから取ってくれ』と、王子にちょっとしたお手伝いを頼んできたそうだ。

 でも、王子はゲーム中だったんで、手が離せなくて袋ごと適当に投げたら、鈴木さんが受け取り損ねて中の豆腐がぐしゃぐしゃに……って、久しぶりに王子の前召喚主へのやらかし暴露がきましたね。過去の王子は安定のダメっぷり。

 もう、王子ってばどれだけ鈴木さんに迷惑かけていたんだか……いや、でもそうなると『マイナス方向の信頼度』も結構上がったんじゃないの?

 え? 鈴木さんは根気強くて、『話せばきっと通じるはず』って何だかんだ心の中では王子を信じてくれていたからそっち方向はあまり……って、鈴木さんやっぱいい人。
 ……そして、だからこそ不憫………………。

 ン? え~と、なに、なに? 『崩れた豆腐の味噌汁も味が染みて美味しい』と鈴木さんは言っていた(エッヘン!) ――って、いやいや。

 そこで王子が胸を張る気持ちは解かりませんね。発見の功労者的な気分なのだろうか? いやいや、「……あ…………♡」じゃなくってさ……。また範囲……あー、もういいや。



 …………やっぱ王子がここまでこっちに馴染めたのってどう考えても鈴木さんのお陰だよなあ……。王子をここまで育て上げるのにどれだけの辛苦を舐めたのか。

 今度『頑張ったね、お兄ちゃん』って言ってあげようかな。あの人、妹属性強いというか、度を超えた妹(架空)好きだからきっと喜ぶよね。私に『お兄ちゃん』とか遠回しに言わせようとしてくるし。


 ……でも、なんか鈴木さんにソレ言うのに抵抗あるんだよなぁ……。


 まあ、本来他人なんだから当たり前か。鈴木さんが勝手に私を『心の妹』扱いしているだけで。まあ、私には実の兄が三人もいますしね。


「………………(チラッチラッ)」


 おや? 黒糖タピオカ抹茶ミルクを楽しみながら考え事をしていると、王子が熱い視線でこちらを見ていますね。
 私……じゃなくて。

 私の『黒糖タピオカ抹茶ミルク』を。



 …コレは…………。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...