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239 小細工王子。
しおりを挟むさて、肝心のお味の方ですが。王子の卵サンドもサクサクッと切り分けて、半分ずっこで食べてみれば、パンもコーヒーも素晴らしかった。うん。やっぱりおしゃれなだけはありますね。
毎週は無理だけど、たまになら来てみてもいいかもしれない。一人じゃ気おくれしちゃって入れなかったから、これは王子に感謝だな。
素直にそれを伝えれば、王子は不思議そうだった。
「? なんで、興味あるのに一人では入れないんだ?」
「いや、ほら。こういうお店って、カッコいい人御用達……って感じするじゃない?」
「カッコいい人?」
「そうねぇ、分かりやすく言えば、出来る眼鏡のビジネスマンが英字新聞や海外小説読みながらコーヒーブレイクしていたり、眼鏡の美女が仕事の打ち合わせしているイメージと言うか……」
「……よく分からんが、つまりはこういう事か?」
王子はそう言うと、店の入り口に設置してあったラックから小冊子を手に取り席に戻ってきたと思ったら、眼鏡ケース(無限収納)からいつもの王子専用眼鏡を取り出し、コーヒー片手にパラリパラリと……あ、まさにそれですね。
どうせ伝わらないだろうと思いながら口にしたのだが驚きの再現度。
ってか、その英語の小冊子何なの? よく気付いたね?? と聞いてみたら、クラフト系ゲームで再現するために、入店早々店内を細かく記憶魔法で覚えておいたらしい。
いや、何、その記憶魔法の無駄遣い……。まあ、ゲームで再現するのは賛成だけれども。
「コレは外国人留学生向けのフリー情報誌らしいな。近くのお店案内に求人情報、それに……」
「ちょ……王子、待って、待って! コレ、全面外国語じゃん! ってか、よく見たらこっち英語ですらないじゃん。え、何読めるの!?」
「? 翻訳魔法だからな。どこの言語とかは関係ないぞ? 王族としての必修魔法だ。外交の場では必須だし」
夢のようだけど夢ないな! 何だ、必修魔法って!!
確かに、国境どころか世界線無視なんだから、翻訳魔法とやらは万能なんだろうけども……。
いやいや、でも本当にスペック高いなこの王子。眼鏡クイクイも、眼鏡キラーンも、今日は本気で文句のつけようのないほどに素晴らし……。
…………。
完全無欠の高スペック後付け眼鏡王子様。
店と眼鏡王子の驚異のマッチングに、思わず見惚れて心を持っていかれそうになりましたが、残念ながら見つけてしまいましたね。私から見えない位置にさりげなく隠しているけれど、付け合わせのサラダが手付かずです。
「また来たいなー。今度はこの…」
「完食したらね?」
「あ、いや、その」
「サラダ残ってるよね?」
「………………☆」
ダメです。眼鏡クイクイ、キラーンは通じません。
「………………ニコ」
笑顔で誤魔化されると思うなよ?
いいですか、好きで早起きしているとはいえ、こちとら朝三時起きでバイトしてるんですよ。時間と労力を使って稼いだ、大事な乙女ゲーム代を王子に回しているんですよ。アレルギーなら仕方がないけど、何となくヤダ程度の好き嫌いでお野菜残したりとか許しません。
ってか、前に私が夕飯用に作った野菜クレープを興味本位でつまみ食いして、これはこれでとか言って完食していたの知ってますからね?
いくら私が眼鏡好きだからって、眼鏡さえかけていれば何でも私が許すと思ったら大間違いなんですよ。
「………………(うるうるうる)」
いや、だから……
「…………(じわぁ…)」
……って、ああもう!
「半分こ!」
「え?」
「私が半分は食べてあげるから、ちゃんと半分は食べてよね」
「!!(ぱあぁぁぁ!!)」
…ったく、しょうがないな。高身長からの上目づかいでの眼鏡うるうるとか、レア感強くて昔から何か弱いんだよなー。
……ん? いやいや、昔からって、この王子との付き合いまだ一年半くらいじゃん。
なーんか、毎日のように召喚して一緒に遊んでいると、その辺の感覚バグってきちゃうのかな。
とか、考えているうちに、ちゃんとお野菜キッカリ半分食べましたね。……ってか、一個しかないトマトもカトラリー使って、キレイに半分こしやがりましたね。
「なるほど、これは便利だな!!」
……って、メッチャ笑顔。
ちなみに。予定通り、アパートに帰ってからペットボトルのおまけでついていたお弁当用のお箸セット(子供用)をあげたら予想通り(以上に)喜んでいましたよ。
即、眼鏡ケースにしまい込んでいたのも予想通り。「これで、いつでもトマト半分食べてもらえるな」と大喜びでしたが、それはどうですかね。それ、ナイフは入っていないので。残念でした☆
ってか、この王子こんなんで、このあとにくる自己責任のお野菜増量キャンペーン乗り切れるのかな?
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