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236 モーニング王子。
しおりを挟む「この店はなんだ?」
王子による『城の地下ダンジョン』耳栓悪用機密情報駄々洩れツアーが終了した翌日。王子が散歩に行きたがったので連れ出した。
王子のマイナス方向への信頼度が深まったことにより、こちらでの活動可能範囲が広がったため、実際にその範囲を確かめたかったに違いない。その気持ちはよく解かる。
ただし、範囲が広がった経緯については納得していない。
いや、何だよマイナス方向の信頼度って。方向性がおかしくない??
いやまあ、一緒に行ける範囲が広がるのは歓迎するけどさ。
――で、その新範囲確認のお散歩中に王子が食いついたのがコチラ。
「ああ、ここは『コーヒーショップ』よ」
そう。頭スッキリ☆お飲み物はモチロン、甘ぁいケーキから軽食まで。お疲れサラリーマンから講義の合間の学生さん、お散歩途中のお年寄りetcetc…。老若男女問わず現代人の強ぉーい味方☆ のコーヒーショップ。
そこそこの駅の近くにはあったりしますね。もちろんうちの駅にもありますよ!
このお店は最寄り駅に行く途中にあるので、私も通学の際には必ず……横を通ります。スルーっと。
「なんか……いい香りがするな?」
「そりゃそうよ、本格的なコーヒーの……って、そういえば、王子ってばうちで飲むのは紅茶ばっかだもんね」
あとコーラ。いや、それもどうよ? ……とは思うけど。
確かにこういう本格的なコーヒーはあまり無かった気がする。そもそもウチにはインスタントしか常備してないし。すいませんね。貧乏学生なもんで。
ちなみに、紅茶は王子の為にそこそこ良いのを用意している。ただ、この王子Тバッグの紅茶を好むんだよなぁ……。理由は「あっちじゃ飲めないから」だそうで。
まあ、珍しさ優先で味にこだわらない王子のそういうところは好感が持てますね。今後もその調子でお願いします。
さて。その珍しいもの大好き王子様は件のコーヒー店のメニュー表にくぎ付けですね。恐らく翻訳魔法を使っているものと思われます。
その中でも特に気になったらしいのが。
「『モーニング』?? 朝と飲み物に何か関係があるのか?」
「ああ、【モーニングセット】のことね。朝だけの特別メニューよ。店によって違うけど、時間限定でコーヒーにトーストや卵が付いていたり、低価格で特別なセットメニューが選べたりするの。このお店の場合は……朝の特別メニューが何種類かあって、その中から好きなのを選べるみたい。へー、ここの店モーニングなんてやってたのね。ふーん、値段も結構お得……」
とはいえ、貧乏学生の身ではまだ一度も利用したことは無いけれど。それに……ちょっと入りづらかったんだよねぇ。
いえね、外観がすっごくオシャレなんですよ。イメージ的にリア充御用達と言うか……できるビジネスマンやОLさんがコーヒー片手に出勤している感じというか……。
学生が多いエリアだから、有名店から個人経営の個性あふれるものまでコーヒー店も結構な数あるんだけど、その中でもココは特にそういう傾向が強い……気がする。
ぶっちゃけ私みたいなオタ趣味全開のぼっちには敷居が高いです。
ただ、こういうお店に憧れていたりもする。
……まあ、モーニングなら値段もお手頃だし。
「『お得』? へー、夜のスーパーの半額シールと一緒だな?」
……とか言ってチラッチラッ☆ …っと、こちらの反応を窺ってくる王子も興味津々だし。
私はともかくイケメン王子にはイメージ的にもピッタリってことで。
バイトも大学も休みの明日、モーニングの時間帯に王子を呼び出して行ってみることにした。
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