上 下
232 / 316

232 お遊びはここまでだ!!

しおりを挟む

 形はどうあれ、私との信頼関係が深まったのが嬉しいらしい。王子様はすっかりご機嫌だ。まぁ、その分コチラで活動できる範囲が広がりますからね……。

 王子は満面の笑みで、


「召喚主との信頼関係が深まった記念に、城へと通じる隠し扉の横に看板を付けよう!」


 とか言って、ゲームのコントローラーを手にしている。


 ――って、ああっ!? いつの間に!?!?

 これ以上の機密漏洩はさせるものか……と、ついさっき王子からとりあげたのに!!



 ――どうやら。私が王子の数々の所業に脱力している間にコントローラーを取り戻したらしい。既に王子の宣言通り記念看板は設置され、城への隠し扉の位置は更に判りやすくなっている。ご丁寧に機密漏洩日の日付まで記入して。

 いや、もう、機密も何もあったもんじゃないでしょう、コレ。遊園地の観光案内バリに分かりやすいとか、侵入者が見たら、逆に罠かと疑うレベルだよ。

 こんなの偽王子(腹黒)が見たら何て言うか。そして何をされるか。
 考えるだけでもオソロシイ……。


………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。


 ――――って、よし! 考えるのやーめた!!


 大体、今はそれどころじゃないしね。私は眼鏡効果で知的に微笑む王子を見る。


 眼鏡、お似合いですよ。
 眼鏡、お似合いですけども。
 眼鏡、つい見ちゃうけど、そ・れ・よ・り・も!!

 無理やり王子の眼鏡から視線を引きはがし、目の前の緊急事態に思考を切り替える。


 テンションMAXの王子の手にはコントローラー。
 そして、クラフト系ゲーム内王子の前には城への隠し扉。


 不法侵入・ダメ・絶対!!


 今までの情報駄々洩れは言わば前哨戦。隠しルートとはいえ、『城への行き方』なんて、字面だけ見たら観光案内みたいなものだしね。

 ……だけれども、ここからは違う。国の中枢。本丸。
 全ての機密が集まる、絶対的に何を犠牲にしてでも守らねばならない、高貴なる王族が住まう場所(※塔住みの魅了堕ち幽閉王子は除く)。

 いいでしょう。ここまでは諦めます。でも、ここからは洒落にならない。この先の重要情報は徹底的に拒絶しなくては。


 たとえ王子がいつもの調子でサクッと強行しようとも。
 このパンドラの箱とも言える城への隠し扉だけは、絶対に開けさせてはならない――。


 ――と、私が決死の覚悟を決めた、その時。


「さて。見せて面白いのはここまでか。付き合ってもらって悪かったな」


 ……とか、王子が言い出した。


 …………………………は!? 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...