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229 強硬手段をとらせてもらいます
しおりを挟む――――さてと!
しっかりと気を取り直して、隣に居る王子を見上げる私。
ビーズクッションの高さを揃えたお陰で段差が少し解消されたので、この距離で見上げても首はつらくない。……ので、遠慮なく『ソレ』をガン見する。
現在、王子と私は腕を組んでゲーム中。ってことは、ハイ! そうですね。アレを着用中ですね!
3D酔い防止の為の…
『セイレーンの魅了眼鏡』…………!!
元々、眼鏡好きの私が自分で見て楽しむために――じゃなかった、王子のために、彼に似合う眼鏡を徹底追求した眼鏡が元となっているので、これでもかってくらい良く似合う。
ただでさえ、少し冷たい印象のする美形王子に神秘的な流氷の色合いの、一点物の眼鏡が非常にお似合いで――これならいくらだって、集中して見ていられる。
……この色合い出すのに苦労したもの。
魔法で微調整しまくって(王子が)。私も口を出しまくって(口だけ)。……うん、いい思い出。
この間も王子の口パク解説は続いています。
ああ、音声聞こえないと眼鏡効果でどんなに知的なことを口にしているのかって思う。まあ言うまでもなく機・密・情・報☆ なんだけど。
しっかし、自分が巻き込まれてないってなると、他人事感半端なくて安心してじっくりと楽しめるな。お目目キラキラで眼鏡の魅力が倍増されてて凄いわあ。
そんな、私の熱い視線が気になったのか。熱烈解説が急に恥ずかしくなったのか。
すぐ間近で私の方を向いた王子が一瞬、頬を赤くしたあと軽く首を捻り――困惑したようにこちらを見る。おっと、流石に異変に気が付かれちゃいましたか。残念。
仕方がないのでネタ晴らし。下ろした髪の毛をスッと耳にかけ、完全無音のハイブリッド耳栓を王子に見せつけます。――もちろんドヤ顔で。
もう、何回も言っているのに王子がちっとも聞き入れてくれないからこちらも強硬手段に出ましたよ。
機密漏洩・ダメ・絶対!!
面倒臭くても、しっかりと王子に伝わるように主張しないと同じことの繰り返しになっちゃいますからね。流石に、ここまで拒絶をすれば、王子にも伝わったことでしょう。
……と、軽く油断しちゃった自分を説教したい。今までどれだけこの王子と付き合ってきたんだよ、と。
パチパチと。王子は目を瞬いて、驚いた顔で私を見る。そして、何を思ったのか。
自身の喉元に手をやり、
『あー…あー…、テステス……』
――と、気取った様子で発声練習を始めた。
……………………え、何コレ。
何で、どうして耳栓をしているのに王子の声が聞こえんの!?
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