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226 猫暖房☆ 最大の欠点
しおりを挟む「にゃう…スー……スー……」
ローブを着込んだ私の両腕の中で。穏やかな寝息を立てて、幸せそうに眠るローブ猫。時折体勢を変えながら、またすぐに深い眠りへと落ちていく。
それにしても流石はモフモフ。二人(?)でローブを使うにしても、王子よりかなり体温が高いです。人肌ならぬ猫肌が心地よいですね。これは幸せが過ぎる……!!
はぁ~…♡ ローブ暖房最強だとばかり思っていたけれど、上には上があるんだな。世界は広い……って、異世界まであるのだから、そりゃそうか。狭い筈がない。
是非ともこの感動を王子(本物)にも教えてあげたいところだけれど――残念ながらそれは不可能だ。
相変わらず私は偽王子さん達の話題を口に出すことが出来ない。何故だか不思議な力で止められてしまう。
ならば、と言える範囲で遠回しに伝えようとしても……平常運転で斜め上の理解力を発揮する王子には、絶対に上手く伝わらない自信がある。
……うーん…。――ま、いいか!
そもそも。こっそり王子の身代わりを務めている偽王子が王子(本物)と直接顔を合わす機会などある訳ないし。
どうにかして王子に教えてあげたところで、この幸せを味わえないのであればただの飯テロならぬ暖房テロになってしまうし。
――それに王子が犬派の可能性だってある。
なので、この偽王子(猫)暖房は私専用ってことで☆
はあぁぁ、癒されるうぅ~。
……なんて。
のんきに猫暖房を楽しんでいた私はすっかり油断をしてしまった。
いつも本物の王子の召喚スケジュールに合わせて日付が替わる前には偽王子を異世界に帰していたのだけれど、ウッカリ私まで寝落ちをしてしまい、目が覚めたら朝の3時29分。驚異の癒し効果でひと晩ガッツリとこの体勢のまま過ごしてしまった。
腕の中ですっかり溶けて、ぐっすりと眠りこけていた気まぐれ猫ちゃんは、私が起こすと慌てた様子であちらへと帰っていった。
猫ちゃんてばこんな時間までウチに居て大丈夫なのかしら?
あっちで王子と鉢合わせしていたりして……。
どうやら完璧に思えた猫暖房にも、リラックスしすぎるという欠点があったようだ。
それにしても。
今日は早朝バイトがお休みだったこともあり、私も完全に気を抜いてしまっていた。それでもいつも私が起きる時間……目覚まし時計が鳴る一分前には目が覚めたから、早起き習慣には助けられた感じだ。
昨日の夜は起こしてあげられなくてごめんね、猫ちゃん……。腹黒さんに怒られたりしてなきゃいいけど。
これに懲りずにまた来てくれるかな…。ああ、もちろん猫の方の姿で。
はぁ……暖かかったなぁ…。
――なんて。人(?)のことを心配していられる余裕なんて私には無かったのに、何を悠長にモフモフの余韻を楽しんでいたのか。
偽王子(猫)は私に何かを伝えようとしてくれていたのに。
前に与えられた情報のなかにもヒントはあったのに。
情報を活かせなかったばかりか、分かった気になっていただけで、私は猫ちゃんの言いたいことを何一つ理解なんてしていなかった。
何でもっと深く掘り下げて考えなかったのか。
何でもっと王子の動向を気にかけなかったのか。
……本物の王子を召喚したときに、私はソレを思い知ることになる。
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