魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
上 下
223 / 326

223 魅了堕ち幽閉偽王子(猫)の召喚生活

しおりを挟む

「にゃにゃん、にゃん、にゃん、にゃん!」

「いらっしゃい、王子!」

「ニャンにゃ、ニャンニャンにゃ……」

「あ~ハイハイ。お握りなら出来ているわよ」

「にゃーん☆ ……にゃん、にゃん、にゃん! にゃんにゃ……」

「大丈夫、大丈夫。猫ちゃ……じゃなかった、ちゃんと王子の好きなシャケとツナマヨもあるから。し・か・も、じゃーん! 今日は特別におかかお握りも用意しました~☆」

「ニャ!? にゃーん♡(ゴロゴロゴロ……)」




 猫ちゃんが変な知恵をつけた。

 どうやら偽王子(猫耳)状態で来るよりも、偽王子(猫)状態で召喚されてきた方が待遇が良いことに気が付いたらしい。

 ほんの少し前までは。


『王子は宝箱があると中身を見ずにはいられない』
『ちょっと位置をずらしてやると新しい宝箱と勘違いして寄り道してまで開けるから面白い』
『オレのイタズラのせいで、あと少しなのに城の地下ダンジョン攻略がちっとも進まない。ウケル』
『最近、新入りの影が増えたようだ』
『食堂の獣人用メニューにシャケお握りが採用されたから新入りにも教えてやった……ああいや、オレは王子だけどね?』


 ――――等々。

 偽王子(猫耳)からはこんな感じで王子のダンジョン攻略の進み具合や、ちょっとしたあちらの情報なんかを聞き出せていたのだが……。

 ……って、アレ?
 こうして改めて考えてみると、別に大した情報でもないな。


 王子(本物)に対して碌な扱いをしていないのは相変わらずだし。
 王子(偽者)として正体バレ厳禁の筈なのに相変わらず発言はギリギリアウトだし。


 最近では猫ちゃん状態で召喚されてくるようになってしまったので、何を言っているのかが分からない……んだけど。

 こうなってくると、むしろこれはこれで良かったような気がする。うん。リスクと比べて得られる情報がショボすぎる。



 偽王子(猫耳)は偽王子(猫)状態では私に言葉が通じないのは理解しているので、自らが迂闊な発言をしたところで攻撃的な深追いはしない。勿論、私も何を言われているのか分からない。
 結果的に私がピンチに追い込まれることは無い。

 あと、猫可愛い。


 ――と、いう訳で。

 最近ではすっかりこの状態を受け入れて、猫ちゃん召喚生活を心行くまで楽しんでおります☆


 いやー、別に特別扱いしてるつもりはなかったんだけどなぁー。
 同じようにおもてなししているつもりだったんだけどなぁー。


 猫ちゃんが食べる様子が可愛いとか、好物あげるとスリスリして来るとか、お腹いっぱいになると警戒心消えてお膝の上で寝落ちしてくれるとか――――まあ、ちょっとしたことは色々あるけれど、自分でも気が付かぬうちに、私にとって都合の良い方を少しだけ…そう、ほんの少~しだけ優遇していたのかもしれない。


 それに気が付くとかウチの猫ちゃん天才かっ!!


 ああ、ちなみに。召喚早々自然な会話をしているように見えるかもですが、基本言葉が通じないのでソコは空気を読んでの適当です。
 まあ、過去の偽王子達の発言から考えても「吾輩は王子である」――的なことしか言ってないと思うけど。

 でもねー。
 結構いい線いっていると思うんだよねぇ。

『ゴロゴロゴロゴロ……』
 ――って、満足そうに喉を鳴らしているのがいい証拠。


 おっと! 用意したお握りを上手にローブに仕舞えましたね、いい子いい子(なでなで)。

 おやおや。余っちゃったシャケがこんなところに!!
 食べるかなー。うん! キレイに食べたねー。いい子いい子(な~でなでなで)。

 用意したお水で乾いた喉を潤して、最近お気に入りの定位置へとやってきました。いよいよ私のお膝で寝落ちか(わくわく)……と、いったところで。気まぐれ猫ちゃんが何かを見つけたみたいです(何かな、何かな~? ドキドキ)。
 お膝の上から飛び降りて、猫ちゃんが向かった先を見れば。

 全身をスッポリと包み込むような。この冬、愛用している真っ黒い――。


 おっとマズイ! 出しっぱなしだ、イタズラされるっっ!!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

処理中です...