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223 魅了堕ち幽閉偽王子(猫)の召喚生活
しおりを挟む「にゃにゃん、にゃん、にゃん、にゃん!」
「いらっしゃい、王子!」
「ニャンにゃ、ニャンニャンにゃ……」
「あ~ハイハイ。お握りなら出来ているわよ」
「にゃーん☆ ……にゃん、にゃん、にゃん! にゃんにゃ……」
「大丈夫、大丈夫。猫ちゃ……じゃなかった、ちゃんと王子の好きなシャケとツナマヨもあるから。し・か・も、じゃーん! 今日は特別におかかお握りも用意しました~☆」
「ニャ!? にゃーん♡(ゴロゴロゴロ……)」
猫ちゃんが変な知恵をつけた。
どうやら偽王子(猫耳)状態で来るよりも、偽王子(猫)状態で召喚されてきた方が待遇が良いことに気が付いたらしい。
ほんの少し前までは。
『王子は宝箱があると中身を見ずにはいられない』
『ちょっと位置をずらしてやると新しい宝箱と勘違いして寄り道してまで開けるから面白い』
『オレのイタズラのせいで、あと少しなのに城の地下ダンジョン攻略がちっとも進まない。ウケル』
『最近、新入りの影が増えたようだ』
『食堂の獣人用メニューにシャケお握りが採用されたから新入りにも教えてやった……ああいや、オレは王子だけどね?』
――――等々。
偽王子(猫耳)からはこんな感じで王子のダンジョン攻略の進み具合や、ちょっとしたあちらの情報なんかを聞き出せていたのだが……。
……って、アレ?
こうして改めて考えてみると、別に大した情報でもないな。
王子(本物)に対して碌な扱いをしていないのは相変わらずだし。
王子(偽者)として正体バレ厳禁の筈なのに相変わらず発言はギリギリアウトだし。
最近では猫ちゃん状態で召喚されてくるようになってしまったので、何を言っているのかが分からない……んだけど。
こうなってくると、むしろこれはこれで良かったような気がする。うん。リスクと比べて得られる情報がショボすぎる。
偽王子(猫耳)は偽王子(猫)状態では私に言葉が通じないのは理解しているので、自らが迂闊な発言をしたところで攻撃的な深追いはしない。勿論、私も何を言われているのか分からない。
結果的に私がピンチに追い込まれることは無い。
あと、猫可愛い。
――と、いう訳で。
最近ではすっかりこの状態を受け入れて、猫ちゃん召喚生活を心行くまで楽しんでおります☆
いやー、別に特別扱いしてるつもりはなかったんだけどなぁー。
同じようにおもてなししているつもりだったんだけどなぁー。
猫ちゃんが食べる様子が可愛いとか、好物あげるとスリスリして来るとか、お腹いっぱいになると警戒心消えてお膝の上で寝落ちしてくれるとか――――まあ、ちょっとしたことは色々あるけれど、自分でも気が付かぬうちに、私にとって都合の良い方を少しだけ…そう、ほんの少~しだけ優遇していたのかもしれない。
それに気が付くとかウチの猫ちゃん天才かっ!!
ああ、ちなみに。召喚早々自然な会話をしているように見えるかもですが、基本言葉が通じないのでソコは空気を読んでの適当です。
まあ、過去の偽王子達の発言から考えても「吾輩は王子である」――的なことしか言ってないと思うけど。
でもねー。
結構いい線いっていると思うんだよねぇ。
『ゴロゴロゴロゴロ……』
――って、満足そうに喉を鳴らしているのがいい証拠。
おっと! 用意したお握りを上手にローブに仕舞えましたね、いい子いい子(なでなで)。
おやおや。余っちゃったシャケがこんなところに!!
食べるかなー。うん! キレイに食べたねー。いい子いい子(な~でなでなで)。
用意したお水で乾いた喉を潤して、最近お気に入りの定位置へとやってきました。いよいよ私のお膝で寝落ちか(わくわく)……と、いったところで。気まぐれ猫ちゃんが何かを見つけたみたいです(何かな、何かな~? ドキドキ)。
お膝の上から飛び降りて、猫ちゃんが向かった先を見れば。
全身をスッポリと包み込むような。この冬、愛用している真っ黒い――。
おっとマズイ! 出しっぱなしだ、イタズラされるっっ!!
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