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209 先輩見ーつけた! 3

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 突然消えた先輩。ショックなことがあったにしても、一緒に居た私にひと言も無しに居なくなったんだから、私に対しても何か思うところがあったのは間違いない。

 その場で声をかけられなかったにしても、後で電話かメールをくれればいいんだから。


 まあ、先輩のケータイが電池切れだったのは予想外だったけども。


 何にしたって、話があるからと呼ばれて行ったのに、耳栓を付けて肝心の話をいっさい聞いてないとか失礼にもほどがある。


「すいません……先輩が何か悩んでるっぽいの分かっていたのに、つい直前の会話からまた前みたいに『聞いたら最後の絶対出る系怖い話』されるーって思って、反射的に耳栓で防御しちゃったんです」

「いや、それは……あながち間違ってはいないというか、聞いたら俺の事情に巻き込むって意味では同じというか……」

「いえ。疑った私が悪いんです。もし前と同じようなひどい事されたら、されてから怒るなり今後完璧に先輩を無視するなりやり返せばよかっただけなのに」

「え……俺を完璧に無視、するのか? その……目の前に居て、見えていても?」

「え? そりゃあしますよ。先輩のこと信じているのに理由もなく悪意あることされたら傷つきますもん。高校の時は……まあ、部員不足で大切な部活が無くなりそうで、先輩も焦っていたんだなあ、と思って気にしないことにしましたけど。あれ、メッチャ怖かったんですからね? ああいうの、もう絶対やめてくださいね? ちゃんと言ってくれれば、相談だったら聞きますから。その……まあ、恋愛相談とかだと、たいしてお役に立てないとは思いますけど」


 主に比較対象と参考例が二次元になりますのでね。でもまあ、聞くだけなら聞きますよ!


「……お前、まだその誤解しているのか。いいか、俺は別に花原のことなんてどうでもいいからな? アイツが卒業したらその分、部員数が減るという事実以外には興味もない。それよりも、その……ルカ、お前に怖い思いをさせて悪かった。前回も……今回も。どうしてもお前と一緒に部活動がしたかったというか……まあ、今ではサークル活動なわけだけども」

「ああ! そのことで、先輩に言いたいこともあったんですよ!」

「言いたい……こと?」


 先輩の顔が苦しそうに歪む。え。何、どうしたの?

 そういえば体調がどうのと言っていたし、もしかしたら、まだ具合が悪いのかもしれない。図書館から逃がさないようにとがっしり手を繋いでグイグイ引っ張って来ちゃったし、疲れさせちゃったかな。

 大した話でもないし、ここはさっさと話を終わらせて切り上げよう!


「その、私をサークルに誘ってくれてありがとうございました! 幽霊部員でいいって言われたから入ったけど、今回みんなと大学祭に参加してみてすっごく楽しかったです。先輩に誘ってもらわなかったら何だかんだ、どこのサークルにも入っていなかったと思うし、私、オカルト研究会に入って良かったです。だから誘ってくれた先輩にはちゃんとお礼を言っておこうと思って。ありがとうございます、草葉先輩――――って、え?」



 不意に。



 視界が真っ暗になる。え。ヤダヤダ、また停電? ってか、また金縛り??




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