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185 先輩とやけ食い

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「アレも食え、コレも食え、さあ食え、ほら食え、もっと食え」

「ちょ……っ、無理無理、先輩。限界、もう無理ですって」

 机の上に広がる美味しそうな料理やスイーツ。取り皿が空になるたびに、先輩がすごい速さでひょいひょい取り分けてくる。いや、無理、そんなわんこそば感覚で勧められても困る。


 占い後。上機嫌の先輩に学食へと連れて来られた私。やたらアレコレ食券を買っていたので、他の部員も来るのかな……と、思っていたのだが。


「いや、アイツらは最近打ち合わせによく使っているファミレスの方へ行ってもらった。だから、安心して二人でゆっくり食べられるぞ。…………アイツらに余計なモノを混ぜられても困るしな」


 言いながら、料理を取り皿に色々取ってくれるが、その量が半端ないので、落ち着いて会話に集中できない。そしてちっともゆっくりできない。

 学食には色々なメニューがあるが、おかずのみの単品や、定食やうどんに足せるようなちょっとした小鉢的なモノもある。あれこれ食べられるようにと、そういった物を中心に頼んだようだ。あと、スイーツ。こんなに種類があったのか……。

 確かに一品一品は私の好物だし、一回食べてみたいな、と思っていた物ばかりなので嬉しいのは嬉しいが、量が多すぎる。そう言ったら。


「だって、やけ食いに付き合ってくれるんだろ?」

 ――と、ニコニコ顔。いや、確かに付き合うとは言ったけど、私がやけ食いしたってしょうがないでしょうに。どうしよう、こんなに食べられない……とは思うが、出された食事を残すのは私の性格上ムリ。どうしても罪悪感がある。貧乏学生の性ですね。

 せめてほかの部員が居てくれたら手分けできたのに。やけ食いするなら皆と一緒のファミレスでいいじゃない……とか思ったが。

 考えてみれば。

 そもそも私がやけ食いの話を出したのは先輩と女性部員の意味深な会話を聞いたからだ。

 先輩は相手と顔を合わせづらかったのかもしれない。だから、あえて別行動した……? うん。ありそう。

 まあ、仕方ない。真相は分からないけれど、言い出したのは私だし。約束したからには責任を持たないと。
 それに、先輩には日ごろからお世話になっているしね☆


 よぉし! こうなったらやけ食いだ!! 


 ――と頑張ってはみても、もともと人並みの胃袋しか持たない私。残った料理やスイーツをどうしよう……と途方に暮れていたら。


「ああ、もういいのか? じゃあ、残りは俺が」


 ――と、あっという間に完食してくれた。え、すごい。結構な量があったのに。そういえば、先輩はいつもボリューム満点の定食をペロリと平らげているし、意外とよく食べるようだ。ああ、いや、そもそもやけ食いに来たのだからこれで目的達成――か?


「すごい。先輩、よくそんなに食べられますね」

「ああ、結構まりょ……いや、力を使ったからな。食べて補給しないと。それにしてもお前は少食だな。……昨日も食べさせたはずなのに、ちっとも効果が出てないし。まあ、今日はこのくらい食べさせれば間違いないだろ」

「効果?」

 言われて思い出す。昨日も定食に付いていたデザートの芋羊羹を分けてくれた。――と、いうか先輩は日頃からやたらとスイーツ系を私に食べさせる傾向が強い。

 今日も、もう無理ですお腹いっぱい……からのスイーツ攻勢で別腹が結構きつい。

 お勧めとか何かの吸収効率がどうとかブツブツ言っていたが、少し策略的なモノを感じる。コレはもしかして……。




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