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183 貴女の運命を占います 前編
しおりを挟む「今のお仕事は大変ですが……貴女としてはやりがいも感じているようですね。人間関係にも恵まれていると感じているようです。出来ればこのままバイトを続けたいと思っているのでは?」
「! そうなんです!! 朝は早くて大変だけど、学業との両立に理解のある職場で時間とかも考慮してくれるし、居心地がすごくよくて。でも……」
「なるほど。学年が上がって状況が変わったときに今のバイトが続けられるのかが不安――と占いでは出ていますね。フム……しかし、心配はいらないようですよ。うまい具合に新人のバイトが入って、調整が取れることでしょう。後期の試験期間についてもシフトを考慮してもらえそうですね。日頃から貴女自身が緊急時の代打を引き受けているのがいい方向へと進んでいるようですよ。それと……プライベートとアルバイトのバランスについても悩んでいるようですが、これは自然に任せた方が良いでしょう」
オカルト研究会部員による占いは凄かった。
まるで。先回りするようにこちらの抱えている問題を言い当てては、次々と解決策をくれる。何という的中率。
先輩に頼まれて引き受けた練習の為のお客さん役だったのに、気が付けば夢中になって占いを聞いていた。すごい技術! すごい話術!! 素晴らしいの一言です!!!
あと、眼鏡好きとしては占いの合間に眼鏡を上げるその仕草が最高。
つい、くぎ付けになっちゃう。
そして占い結果には大満足だった。よかった! どうやら、私の仕事運はとてもいいようだ!
「ありがとうございました! すごいですね、話していないことまで全部当たっています。コレは、『占いの館』大成功間違いなしですね。聞きたい事が全部聞けてスッキリしました!! ほとんどこちらからは聞いていないのに!!!」
では――と大満足で席を立とうとしたら。
「え。あの、まだ占ったの仕事運だけなんですが……!」
「あ、はい。一番気になるところだったので」
部員に何故か引き止められた。占い中の淡々とした様子から一転、周囲にオロオロと視線を泳がせて戸惑っている。
――で、気が付いた。私が頼まれたのはお客さん役。本番に向けての練習なのだから、あらゆることを占ってもらわなくては意味がないのではないか。
「あの、えっと……、他のことも見てもらえますか?」
「は……はいっ! あー、良かった……」
おっと、正解だったようですね。そうだ。大学祭でやる占いなのだから、客層は私と同じお年頃の大学生。きっと気になることは仕事運だけではない。
しっかりと座り直して考える。そして。
「健康運についてお願いします!」
そう!! 学業もバイトも体が資本!!!
「あ…。あーええと、健康運、ですか。そっか、そうですね……。それは今のまま、早寝早起きを続ければ問題ないかと……」
「やった! やはり今のバイトが私には向いているってことですね! 仕事運バッチリ☆」
よっしゃ! と気合を入れた所で場の空気に気が付いた。
いけない。振り出しに戻してしまった。
仕事運、健康運、あと年頃の大学生として、他に気になるものといったら……ええと……。
ええと……??
「あの……っ! よろしければ総合運的なのを見ましょうか!! 恋愛運やら、今後の運命的な……」
「あ! そうですね、ソレ大事! ゲーム運!!」
「え?」
「あ、いえいえ。コチラの話です。恋愛を絡めた総合運、是非お願いします!」
恋愛と言えば私にとっては乙女ゲー。
恋愛はゲームで満足しているが、新作は続々と出るし、貧乏学生の身では全てを購入は出来ない。それでもぜひとも当たりのゲームと出会いたい。厳選して買うから、占いでヒント的なモノを貰えるなら是非アドバイスをしてもらいたい。
乙女ゲームに恋愛を丸投げしている私にとって、恋愛運=ゲーム運なのだ。前半の占いの的中率からすると、なかなかに信憑性がある。
コレは真剣に聞かなくては。
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