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181 先輩の事情 後編(先輩視点)

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 ルカは付き合いがいいから。優しいから。きっと応えてくれると思っていた。他に人が入らなくても、もし居場所がなくなっても構わない。アイツさえ――ルカさえ居てくれたら。

 俺を見ることが出来るルカ。

 例えこのまま存在感が消え誰にも見られることがなくなっても、終わらない部活をルカと二人で続けていけたらそれだけで――そう思っていたのに。


 ルカは即答で断った。乙女ゲームをやる時間が減るのが嫌だと言った。悔しいことに彼女には何の迷いもない。


 俺が本の中に救いを求めたように。ルカはゲームの中に足りないものを見出していたのかもしれない。ただ、単純にゲームを楽しみたかっただけかもしれないが。

 話せるようにはなったし懐いてくれたが、アイツとはただの先輩後輩の間柄に過ぎない。高校を卒業すればそれまでだ。


 ……そんなのは認めない。


 ルカが図書室で俺を見つけてくれた時に決めたんだ。
 アイツはその目で俺を見てくれる。存在を認識してくれる。俺にはアイツが必要だ。

 焦った俺は怖がりな癖に怖い話が大好きなルカに対し、少し卑怯な手を使って無理矢理部活へと縛り付けようとした。――が、兄の一人に気付かれて上手くいかなかった。それどころか警戒されて、しばらくは近づけなくなってしまった。

 魔力による守りを強くされると、俺の認識阻害能力が発動してしまい、自然とアイツは俺を排除してしまう。

 俺は距離を保ち、仕切り直しをする必要に迫られた。



 そして――。

 学年が上の俺は一足早く大学へと入り、新たな居場所を見つけた。

 ……と、いっても所属するのは現在は廃部になった部活のОBばかりだけれど。その分、俺の事情も分かっている。全員悩みは同じなので、協力体制はバッチリだ。

 本当は他の奴らと関わらせるのは嫌だけど……背に腹は代えられない。とにかく繋がりを作らなければ。

 距離を取らざるを得なくてほとんど連絡を取れなかったけれど、この一年で仲間を迎える準備は出来ているし、あらゆる調べもついている。

 教育、情報、不動産、飲食、警備etc……。

 親戚や、部活のОB、ОG。幸運なことにあらゆる業界に俺達の仲間は潜んでいる。アイツを手に入れるためなら何でもするし、その努力は惜しまない。

 アイツの希望している進路に先回りしたのもその一つだ。


 前回は失敗したけれど。もし、入学してくるアイツがサークルに入ってくれたら、今度は絶対に逃がさない。

 兄弟なんかの力を借りなくても生きるのに必要なモノは俺が与えるし、ルカは何の心配もしないで、俺をその目で見ていてくれるだけでいい。

 一年かけて準備したローブはサイズもピッタリで、俺が一針一針魔力を込めて刺繍を施した特別製だ。アイツを守ると同時に、俺の望みを叶えるための手段ともなる。

 俺と魔力を共有することで、アイツの魂は俺に縛られる。仕上げにはとある儀式が必要だけれども、それはもう少し準備を進めてからだ。

 儀式には多くの魔力を使う。
 そう何度も出来ることではないから、完璧な状態で迎えたい。

 ……その為にも。


 まずは――このローブを渡そうか。
 そして、二人で終わらない部活動を楽しもう……。




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