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170 偽王子再び
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バイトに行って。大学に行って。家に帰ったらおやつを供えて王子召喚。
おやつを食べさせたら散歩がてらスーパーに行き、王子にねだられるままメダルゲームを楽しんで、帰りに夕飯の材料を買ったら、後は一緒に夕飯前までゲーム。
……って、年頃の大学生の女の子ってよりは子持ちの奥さんみたいな行動だけど、まあ、これはこれで楽しいし、すっかりコレが私の日常と化していた。
ねだられるまま夜の召喚にも応じていたから、平和な日常に油断していたのかもしれない。
夜のおねだり召喚が続いていたせいで、約束をしていないにもかかわらず、ついウッカリと惰性で召喚をしてしまった。
今までにもそういう事はあったし、王子もラッキーとばかりに遊んで帰っていた。
王子は塔に幽閉中。なので、留守はあり得ない。
……はずだったんだけど。
「えっ!? ちょ、な、なに!? 王子がダンジョン攻略とか言って、うっかり幽閉範囲外に出るようになっちゃったから、周囲にバレないように攻略中の身代わりをしていただけなのに。王家の影として、オレは完璧に王子の姿を再現してたよな!? 声も、姿も、完全に擬態した。今回は初めから魔力も王子の物と同調させていたのに、突然、急に魔力がごそっと減って、何か見覚えがある場所へ飛ばされたぞ!? いったい何が起こっている!? せっかく日々の食事に加え、身代わり中の食生活も改善されたから食事を楽しみにしていたのに、王子の奴、食事時間にはキッチリ戻ってきて食べられなくてムカつくから、日記帳でも盗み読みして大笑いしてやろうと思ってたのに。魔力の痕跡辿って日記の隠し場所(最新)を探していただけなのに何でこうなった!?」
怒涛の独り言と共に現れた、懐かしの猫耳偽王子。
可愛い猫耳は相変わらずだが、独白から察するに食事には改善が見られるようで、若干背が伸びている――が、やっぱりまったく王子には似ていない。
髪も、顔も、大きさも、種族も、何もかもが違い過ぎる。
前回も不思議だったけど、何でそんなに王子のフリに自信があるのか、私にはサッパリ分からない。
……なのに。
「まあ、相変わらず魔力の往復した形跡もあるし、王子の日常生活最新版の調査だな。流石にアイツ調子に乗りすぎているからキッチリ調査して冷酷腹黒眼鏡上司に報告しないと。大丈夫、オレの擬態魔法にはますます磨きがかかって、もはや最高レベルの再現度。バレたらバレたでサクッと消せばいいんだ。前みたいに、いや、前以上に堂々と王子として王子の日常生活を過ごせば問題ない! 淡々と任務をこなすだけ!! よし、落ち着いた!!! オレは落ち着いた!!!」
なるほど……。
相変わらず、別人だとバレているのがバレたらサクッと消される……らしい。
いや、もう、だったらちょっとは頑張って! 本物に寄せる努力をして!
あ~も~、栄養状態が改善されて艶やかになった猫耳が愛らしくて仕方ないです。触りたくてうずうずする。
「あれ? 何か視線が……って、召喚主じゃん! なーんだ、見覚えあると思ったらいつもの部屋か。久しぶり……って、いや、オレは王子だけどね? 毎日召喚されているけどね? いや、それよりも……。もしかして、さっきの聞いてた!? 機密情報知っちゃった!? 仕方ない、ココはサクッと……」
「あーっ、あーっ! ごめん、なんか今日はいつもと違うから情報が上手く処理できないみたい。急だったからなー。動揺してるからかなー」
「えっ、マジ? オレ、久しぶりとか言っちゃったけど、あやしまれてない!? 王家の影だの任務だの聞かれてない!?」
「おっと、そろそろ私も落ち着きそう。この事態に落ち着いて対処できそう。ココから、ココからだから。いらっしゃい、王子。今日は急な召喚だったからその影響かな。状況を理解するまでに時間がかかって、よく聞いていなかった。いらっしゃい王子。……猫耳姿なのは久しぶりだね☆」
「お、おう! そうだよ、オレ王子!! そうだよな!猫耳姿は久しぶりだもんな!! そっかぁ~。また、魔法陣の不具合か~」
警戒色全開の猫耳が通常モードに。よし、乗り切った。
おやつを食べさせたら散歩がてらスーパーに行き、王子にねだられるままメダルゲームを楽しんで、帰りに夕飯の材料を買ったら、後は一緒に夕飯前までゲーム。
……って、年頃の大学生の女の子ってよりは子持ちの奥さんみたいな行動だけど、まあ、これはこれで楽しいし、すっかりコレが私の日常と化していた。
ねだられるまま夜の召喚にも応じていたから、平和な日常に油断していたのかもしれない。
夜のおねだり召喚が続いていたせいで、約束をしていないにもかかわらず、ついウッカリと惰性で召喚をしてしまった。
今までにもそういう事はあったし、王子もラッキーとばかりに遊んで帰っていた。
王子は塔に幽閉中。なので、留守はあり得ない。
……はずだったんだけど。
「えっ!? ちょ、な、なに!? 王子がダンジョン攻略とか言って、うっかり幽閉範囲外に出るようになっちゃったから、周囲にバレないように攻略中の身代わりをしていただけなのに。王家の影として、オレは完璧に王子の姿を再現してたよな!? 声も、姿も、完全に擬態した。今回は初めから魔力も王子の物と同調させていたのに、突然、急に魔力がごそっと減って、何か見覚えがある場所へ飛ばされたぞ!? いったい何が起こっている!? せっかく日々の食事に加え、身代わり中の食生活も改善されたから食事を楽しみにしていたのに、王子の奴、食事時間にはキッチリ戻ってきて食べられなくてムカつくから、日記帳でも盗み読みして大笑いしてやろうと思ってたのに。魔力の痕跡辿って日記の隠し場所(最新)を探していただけなのに何でこうなった!?」
怒涛の独り言と共に現れた、懐かしの猫耳偽王子。
可愛い猫耳は相変わらずだが、独白から察するに食事には改善が見られるようで、若干背が伸びている――が、やっぱりまったく王子には似ていない。
髪も、顔も、大きさも、種族も、何もかもが違い過ぎる。
前回も不思議だったけど、何でそんなに王子のフリに自信があるのか、私にはサッパリ分からない。
……なのに。
「まあ、相変わらず魔力の往復した形跡もあるし、王子の日常生活最新版の調査だな。流石にアイツ調子に乗りすぎているからキッチリ調査して冷酷腹黒眼鏡上司に報告しないと。大丈夫、オレの擬態魔法にはますます磨きがかかって、もはや最高レベルの再現度。バレたらバレたでサクッと消せばいいんだ。前みたいに、いや、前以上に堂々と王子として王子の日常生活を過ごせば問題ない! 淡々と任務をこなすだけ!! よし、落ち着いた!!! オレは落ち着いた!!!」
なるほど……。
相変わらず、別人だとバレているのがバレたらサクッと消される……らしい。
いや、もう、だったらちょっとは頑張って! 本物に寄せる努力をして!
あ~も~、栄養状態が改善されて艶やかになった猫耳が愛らしくて仕方ないです。触りたくてうずうずする。
「あれ? 何か視線が……って、召喚主じゃん! なーんだ、見覚えあると思ったらいつもの部屋か。久しぶり……って、いや、オレは王子だけどね? 毎日召喚されているけどね? いや、それよりも……。もしかして、さっきの聞いてた!? 機密情報知っちゃった!? 仕方ない、ココはサクッと……」
「あーっ、あーっ! ごめん、なんか今日はいつもと違うから情報が上手く処理できないみたい。急だったからなー。動揺してるからかなー」
「えっ、マジ? オレ、久しぶりとか言っちゃったけど、あやしまれてない!? 王家の影だの任務だの聞かれてない!?」
「おっと、そろそろ私も落ち着きそう。この事態に落ち着いて対処できそう。ココから、ココからだから。いらっしゃい、王子。今日は急な召喚だったからその影響かな。状況を理解するまでに時間がかかって、よく聞いていなかった。いらっしゃい王子。……猫耳姿なのは久しぶりだね☆」
「お、おう! そうだよ、オレ王子!! そうだよな!猫耳姿は久しぶりだもんな!! そっかぁ~。また、魔法陣の不具合か~」
警戒色全開の猫耳が通常モードに。よし、乗り切った。
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