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140 魅了堕ち幽閉王子と終わらぬ悪夢(王子視点)

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 ひどい……ずっと食べるのを楽しみにしていたのに。
 なんという悪夢だろうか。しかし、悪夢はコレでは終わらなかった。


『喉が渇いた』
「え」
『飲み物』
「あ、ハイハイ。水だな」


 目と口で。僕に何やら訴えかける守り神。

 奪われてしまったので食べていないから分からないが、非常食はクッキーみたいな見た目だし、飲み物がないと辛いだろう。確かに鈴木さんもいつも飲み物と一緒に食べていた。

 仕方ない。僕はリクエストに応えてやることにした。

 大丈夫。僕には召喚主が用意してくれた飲み物がある。レジャーシートの重しに使っていたが、男二人が乗っているのだから飲んじゃってもシートが瘴気で飛ばされる事はないだろう。

 一人……というか、一匹は本体が巨大な竜だし。
 そもそもレジャーシートを飛ばす原因が乗っているんだし。


 僕は隅に置かれた水に手を伸ばした。


 召喚主が僕に持たせてくれたのは水とスポーツドリンクの二種類。非常食をとられてしまった以上、僕に残された楽しみはスポーツドリンクだけだ。


 スポーツドリンク。


 これは、前召喚主の鈴木さんと現召喚主が出会うきっかけとなった飲み物だ。公園で熱中症とかいうのを起こしかけている鈴木さんに、召喚主が渡したらしい。

 感動した鈴木さんが召喚主のことをスポーツドリンクの女神とか呼び続けていたくらいだ。よほどうまいのだろう。

 話を聞いて一度は飲んでみたいと思っていたけれど、召喚主に何を飲みたいか聞かれるとつい大好物のコーラをリクエストしてしまうので、今まで一度も飲んだことがなかった。

 いい機会だから飲んでみたい。国が滅亡する以上、最後の機会でもあることだしな!

 だから、竜には水の方を提供――。


 ゴクゴクゴクゴク☆


 するつもりでキャップを開けて差し出したのに、竜は反対側のレジャーシートの角っこに置いていた、重し代わりのスポーツドリンクを勝手に手に取り飲みだした。

 どうやら僕の動きを見本にスポーツドリンクのキャップを開けたらしい。闇堕ちしても流石は高知能の守り神。油断も隙もない。


 やめてー。ゴクッとしないでぇぇー……!!


『うむ! コレは寝起きの体に染みわたるな!!』


 満足そうにそう言って口元を拭う竜。ペットボトルの中身は空だ。

 機嫌が良くなったせいか、竜から放出される瘴気がほぼ消えた――が、僕の最後の楽しみが根こそぎ奪われた。


 サクッとされた上にゴクッとされた。

 今ならうなされる気持ちが良く分かる。
 ――ひどい悪夢だ。召喚主に愚痴りたい。




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