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138 寝起き竜と幽閉王子の秘密のお茶会(王子視点)
しおりを挟む――僕たちの冒険はここまでだ!!!
見るからに不機嫌な竜と。渦巻く瘴気に。
僕は即座にそれを理解した。
そして考える。僕の人生、やり残した事はないか。
クマを召喚主の元へと返すのは無理だろう。心の中で召喚主とクマに謝った。
そして不意に、召喚主の言葉を思い出した。
『いや、遠足じゃないんだから、念の為の非常食をおやつ感覚で食べちゃだめだってば。ソレ、食事代わりにするクッキーだからね? カロリー高いからね? でも、まあ、そうね。無事に冒険終わったら食べちゃってもいいわよ』
そうだ。僕たちの――僕とクマちゃんの冒険はココで終わった。無事ではないが、とりあえずは終わったんだからアレ食べちゃってもいいんじゃないか。
そう思った僕は。とりあえずお茶の準備をすることにした。
冒険セットの中身は出発前に把握している。非常食の他に、オマケ付きの小さいポテトチップスがオマケを回収した状態で入っていたが、それは嬉しくて出発前に食べてしまったのでもうない。
なので、ダンジョンの床に召喚主が入れてくれたレジャーシートを敷いて、リュックの中身を出した。
水。スポーツドリンク。
それに、コレだ、コレ!! クッキーのような非常食!
これは前召喚主である鈴木さんの元に召喚されていた頃から興味があったので、コレを食べずに冒険も幽閉生活も終われない。
『お前は誰だ……いったい何をするつもりだ?』
「あ、お構いなく」
殺気が薄れ、やや困惑したような声にそう答えたが、竜が話す度にレジャーシートが瘴気で捲れるので四隅を重しで固定することにした。あー忙しい。
四隅に置くのはリュックと、クマ。それに、水とスポーツドリンク。
よし、完璧。これでレジャーシートの捲れを気にすることなく、落ち着いて最後の晩餐が食べられるぞ。まだおやつの時間だけれども。
そう思い、待ちに待った非常食を開けたらいつの間にか竜がレジャーシートに乗ってきた。が、流石にレジャーシートにそこまでの大きさはない。片足の指先がやっとだ。
どうするのかと思って見ていたら、竜が目の前で人型に変化した。
そして。
ぐうううぅ……。
盛大に腹の虫を鳴らした。なるほど。長期間封印されて眠っていた竜。どうやら腹を空かせているらしい。
滅亡前の最後の晩餐だけれども、楽しみにしていた非常食だけれども、流石にこの状態で一人食事を楽しむことは出来ない。お構いなくとは言ったけど、これでは僕の方は構わない訳にはいかないだろう。
何より、一人暮らしの召喚主が、おやつでも夜食でも人と食べるのは美味しい、と言っていた。
せっかくの最後の食事、どうせなら美味しく摂るべきだ。
なので。
「どうぞ」
二個入りだった非常食の個包装の1つを、僕は目の前の人化した竜にあげることにした。
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