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130 苦悩する幽閉王子(王子視点)

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 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………駄目だ……………。

 子供の日記風にまとめてみたけどちっとも落ち着かない……!!


 逃げるように塔へと戻った後。気持ちを落ち着けようと自分の行動を子供の頃のように書き起こしてみたが落ち着かなさは増すばかり。


『先輩』――確かに召喚主はそう言った。友達が少なく交友関係の狭い彼女がそう呼ぶ人物はただ一人だ。

 召喚してもらって一緒に遊んでいる最中、何度かメールで邪魔されたことがあるから覚えている。

 確か、サークルの先輩とか言っていた。写真を見せてもらったこともある。何というか……あっちの世界離れした男だった。黒いローブに、眼鏡の男。服装で言えばどちらかというと僕の世界の魔道士に近い気がする。召喚主は何故か眼鏡しか気にしていないようだったが。

 そう――確かに、眼鏡の良く似合う男だった。

 でも、おかしいな。今までにも彼から何度もメールは来ていたが、夜遅いメールが多く、結構な頻度で睡眠を妨害されるので召喚主は面倒くさそうにしていることが多かったのに。
 だからこそ音や着信を認識しづらくしてあげたのだ。

 ただ、夏休み前もキチンと時間帯を考えた電話やメールには普通に対応していたし、思ったよりも親しい間柄だったということだろうか。

 それとも、僕が離宮に送られている夏休みの間に、二人の関係性が変わるような何かがあった……?

 ありえないことではない。前に僕が活動範囲外に出てしまったための強制召喚終了で二カ月半ほど召喚が途絶えたことがあったけれど、召喚が再開された時、ほぼ交流のなかったはずの前召喚主である鈴木さんと現召喚主の彼女がメル友になっていたことがある。

 二人は連絡どころか、メールなんていっさいしていなかったはずなのに。それが今では頻繁にメールで情報交換を行い、ゲーム・マンガ・アニメ関連のコラボお菓子のおまけを交換するくらいの仲良しになっている。

 召喚主曰くバイト先の常連さんでもあるらしい。

 まあ、鈴木さんの人となりは良く知っているし、そういった意味での変な心配はいらないかもしれない。――が、それでもちょっと面白くなく感じてしまう。
 まあ、100歩譲って鈴木さんはこの際いい。

 僕を彼女に引き渡してくれたのは彼だし、僕も相当お世話になった。今でも彼女を通して出張先で手に入れたというご当地ポテトチップスをくれたりするし。それらはとてもおいしいし。

 でも。先輩とやらは得体がしれない。コチラの世界の人間にしてはやたら魔力がチラつくのも気になるし、たまに召喚主から話を聞いていて引っかかることもある。

 少なくとも夏休みに入る前はそこまで親しくはなかったはずなので、何かあったとしても離宮に送られている間のことに間違いないだろう。

 僕のいない間に『何か』があった。


 気になる……が。ただ召喚してもらっているだけの僕が口出ししていい問題でもないのかもしれない。彼女とは言語も生まれた世界も生きている場所すら違うのだ。彼女には彼女の生活がある。
 ……無関係の僕が彼女の私生活に意見する権利はないわけで。

 でも――それとなく。それとな~く、自然な感じで聞き出すくらいなら許されるんじゃないか?
 うん……それならセーフな気がする。


 言うなれば近況報告。日常会話。…大丈夫だ。


 明日召喚された時に確かめればハッキリする――と一瞬思ったものの。


「しまった、次の召喚は一週間後だ……!」


 何という事だ。僕はダンジョンの再調査を優先させてしまったのだ。彼女が一週間の召喚のお休みを言ってきたにしても、ヤダヤダと駄々をこねれば夜の召喚くらいはゴリ押しでどうにかできたはずなのに。

 彼女にアレコレ確かめるにしても、一週間はこのままなのか。

 ……っていうか、考えてみればこの一週間の召喚休止中に再び『何か』があってもおかしくないわけで。


「…………っ」


 ぎゅううううぅ!!!!

 不安感から逃れるように。無意識にソレを抱きしめ気が付いた。


「まずい。また勝手にクマ持ってきちゃった……」




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