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128 ぼくとしょうかんぬしのなつやすみ(王子視点)

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 今日は召喚主の夏休み最終日です。僕はいつも通り召喚してもらって、召喚主とお話をいっぱいしました。

 それから二度目の召喚ではフルーツ盛り合わせを出してもらいました。塔では日持ちのしないフルーツは貴重なので嬉しかったです。僕は残さず食べました。

 それから召喚主が『幽閉されたい塔』の中に作った学食を案内してもらいました。いろいろとメニューがあっていいな、と思いました。
 ゲームの中では召喚主も一緒に塔で暮らしてくれるらしいので、こんな塔なら幽閉生活も楽しく過ごせるだろうな、といつも通りのことを思いました。

 そして何より嬉しかったのは。僕が計画していた『幽閉中の塔』の地下ダンジョンの再調査を心配して、召喚主が冒険セットを用意してくれたことです。
 塔での暮らしは孤独なので、どんな気晴らしを用意しても少し寂しく感じてしまいます。でも、今回はこの冒険セットのおかげで楽しく過ごせそうです。帰りを待ってくれている人がいると思うと、ちゃんと生きて帰ろうと思えます。

 それに、召喚主が用意してくれたクッキーのような非常食は前の召喚主だった鈴木さんが仕事続きで弱っていたときに食事代わりによく口にしていた物だったので、食べるのが楽しみです。
 さすがに最後の生命線らしきそれに手を出してはいけない気がしたので、鈴木さんの家では食べたことがありませんでした。

 二度目の召喚の後。
 召喚主から渡された黒い巾着は言われた通りに中身を見ないで目立たない本棚の上に置いておきました。
 鑑定魔法でならこっそり中身を見てもいいかな、バレないかな、と思いましたが約束を破って召喚をされなくなったら大変です。なので、かろうじて我慢しました。巾着をブンブン振ってみたら水の音がしたので液体が入っているのだけは耳で確認できました。
 召喚主はおまじないと言っていたのでお供えか何かかもしれません。精霊に頼みごとをするときなんかに僕の世界でもやるのです。

 そして、お風呂に入った後に確認してみたら中身がほとんど消えていてビックリしました。

 いつの間に。部屋に他人の魔力の痕跡はありません。僕の魔力だけです。二回の召喚のあとです。いくら僕の魔力が多いとはいえ、漏れ出るほどの魔力は残っていない筈ですが、一人分くらいの僕の魔力を感じます。
 まあ、長年幽閉されている自室です。僕の魔力があちこちにしみこんでいるのでしょう。

 黒い巾着の中には何か硬いものが一つだけ残っていましたが、開けていないので何かは分かりません。もう振っても水の音はしませんでした。

 どんなに驚いていても僕が髪を乾かすのを忘れることだけはありません。召喚主との約束だからです。しっかりと乾かした後、ほぼ空になった巾着を持って、僕は召喚主の元に再び召喚されました。

 三回目の召喚です。
 僕もパジャマだけど、召喚主もパジャマです。すっかり見慣れましたが、やはり目線には気を遣いますし、ドキドキはします。今日のパジャマはフリルが付いていて可愛らしいので小さな召喚主には似合っていました。
 でも、あまり考えると落ち着かなくなるので僕は真っ黒い巾着が空になった経緯を身振り手振りで説明することに集中しました。中途半端翻訳も使いました。そのお陰か割と伝わったような気がして、やり切った感がありました。

『○○○ゃ○王子、お休みー。□○○○電気、□○○○○○○…』

 それだけ言うと、召喚主は手慣れた様子でアイマスクを着け、サッサと眠ってしまいました。

 やはり彼女には警戒心というものが足りない気がします。いえ、勿論、僕は大丈夫です。絶対に信頼を失うようなことはしません。召喚されなくなってしまったら、二度と彼女に会えなくなってしまいます。そして、ゲームもできなくなる。それだけは絶対に嫌ですから。

 でも、彼女には僕以外にも知り合いはいます。こんなにも無防備では僕が居ない間に知り合いの誰かが良からぬことを考えやしないかと少し心配です。
 もし、そんなことになったら僕は――。




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