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104 魅了堕ち幽閉王子は時間稼ぎに病気を装う(王子視点)

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 朝食を摂って海へ行く。岩礁へと渡り、はぐれセイレーンがいたら付与。いなかったら離宮へと戻り、昼食を摂ってまた岩礁へ。
 運動するから食事も美味しいし、夜もグッスリ。

 筋肉痛を起こさないようにお風呂でのマッサージも忘れない。髪を乾かすのと同じようにソレは僕の習慣となった。


 付与をはじめて2週間くらいたっただろうか。


 このくらいの時期になると、規則正しい生活のせいか、運動のせいか、夜はグッスリだしむしろ食欲も増えた。


 3D酔いもほとんどしなくなった。日焼けして筋肉もついてきて、見るからに健康体だ。

 でも、そうなるとそうなったで、問題が出てくる。そろそろ塔に戻しても大丈夫かも……という話が出てきたのだ。


 大変だ! まだ、3D酔い防止眼鏡は完成していないのに!!


 僕は慌てて仮病を使った。しかし、基本的に僕は根が真面目なのだ。嘘をついてまで何かを回避することには慣れていない。あからさまな仮病はどこか嘘くさい。

 このまま続けたら嘘がバレてしまうかもしれない。しかし今は大事なときなので堅実にいきたい。

 そこで。


 僕は再び眼鏡を着用せずにプレイ動画を視聴して、わざと体調不良を起こすことにした。実際に具合が悪くなれば調べられても安心だ。これ以上の誤魔化し方はないだろう。

 しかし、これについてはバランスを取るのが難しかった。やりすぎると離宮から出かけさせてもらえなくなるし、症状が軽いと塔へと戻されてしまう。

 一進一退。それぐらいの体調不良をキープしつつ、僕ははぐれセイレーンの元に通い続けた。



 精神的にも肉体的にも、流石に僕も疲れていたのだろう。

 ボートを漕いでいるとき、『わたくし運動は……ぜえはあ』だの、『オレ水嫌いなのに! フシャーッ!! フシャーッ!!』だの、幻聴や動物の威嚇する声なんかが聞こえてくることもあった。

 そういえばボートに乗り始めた頃は自分の魔力が丁度一人分くらい増えたり減ったりすることもあったっけ。まるで自分の魔力が慌てて後ろから追いついてくるような感覚は初めてだった。

 自分の魔力が岩礁に先回りしていることもあった。それも丁度1人分。その日は不思議なことに幻聴が少ない。僕の国には海が少ないから分からないけれど、海では不思議な現象が起こるのだなあ、と思ったものだ。

 そんな思いをしながらはぐれセイレーンの元へと通い続ける日々だった。


 そういえば付与の途中、はぐれセイレーンの留守を狙って彼女に少しだけ似たやたら引っ付こうとしてくる女がやってきたことがあった。

 離れるように言っても私の方がふさわしいだの、お姉さまのものはより若く、より可愛い妹である私のものだの、しつこく絡まれてまったく会話にならなかった。

 なので、魔法で近づけないように結界を張って、耳栓をして放置した。

 何やら歌っているようだったが聞こえないので分からない。ただ、眼鏡に蓄積されていく魔力が跳ね上がるのを感じたので、もしかしたらあれもサービスなのかもしれない。姉だの妹だの言っていたし、家族サービスというヤツだろうか。

 何度かそんなことがあって、あるとき彼女が歌い終わったあと気が付いたら急に老け込んだようなので話を聞こうと耳栓を外したら、それを見ていた美熟女となった元美少女セイレーンが騙されただの何だのと泣きわめきながら去って行った。

 それから彼女を見かけることは無くなった。



 ……あれは何だったのだろう??




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