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99 はぐれセイレーンと魅了魔法(王子視点)
しおりを挟む――で、僕は海辺まで見に行った。
いや、ホラ。危険だって分かってはいたけれど放っておくのも後々気になるし。僕は自分でも駄目だと分かっているけれど、気になったら最後まで確認しないといられないタイプ。
一応ここは僕の国の管理下にあるし、魅了魔法や魅了スキルの使い手が好き勝手をやっていたら問題だろうとの考えからだ。
あと、やっぱり純粋に気になるのもある。怖いもの見たさだろう。
何だかんだ怖い怖いと言いながら、桜も毎日見に行っていたしな!
近くに漁港があったので行ってみると、先ほどの船が丁度戻ってきたので近寄った。やはり魅了の気配がするが――船には釣り人しか乗っていない。
話を聞くと、職業としての漁師ではなく純粋な釣り人らしい。結構な量が釣れているが素人だそうだ。
他国……というか、僕の国である王国への輸出用以外は、こうして自給自足で魚を取って夕飯のおかずにしているそうだ。この辺ではみんながそうなのだと言っていた。
そして――続いて語られた話に驚いた。
「やっぱり少し沖に行った方がより大物が釣れるからねえ。まあ、船酔いが心配だけど、セイレーンの釣り竿があるからそれは大丈夫」
「セイレーンの釣り竿? セイレーンというと、あの、船乗りを歌声で惑わすという魔物の??」
「おうよ。悪名高い魅了の歌声を持つ魔物だけどよ、この辺では珍しくはぐれのセイレーンが棲みついててさあ。でも、歌声に漁の邪魔されちゃ商売上がったりだろ。彼女も彼女で、群れから離れて安定した終の棲家を求めていたから、協定を結んだんだ。ほら、歌声を聞いて魅了状態にある船乗りは船酔いなんてしないだろ。その効果を利用して、漁具や釣り竿に歌声で魅了魔法をかけてもらって船酔いを防止してるんだよ。おかげで漁師は魅了効果でより仕事に集中できるし、俺も何時間だって船釣りが楽しめるってもんさ! 磯釣りもいいけど、やっぱ大物を狙いたいからな。やっぱ船だよ、船! 見ろよ、このでっけぇ魚。すげぇだろ。セイレーン様様だよ。だから、セイレーンだけは王国の魔物排除魔法からこっそり外してもらったんだ。まあ、大っぴらにはできないけどな。他のセイレーンに気付かれたら狙われ放題だし。内緒、内緒。ってか、兄ちゃん王国の人だろー。カッコいいもんな。はぐれのセイレーンちゃん、惚れっぽいけど悪い子ではないからイジメるなよ。交渉次第だけど機嫌がいいとあの子、魅了での入れ食いも付与してくれるんだからな。いいか、本国にはチクるなよ」
ほれほれ、と大漁の魚を見せつけて嬉しそうな釣り人。お裾分けと口止め料だと言われ二匹ほど大きい魚を貰ったので素手で持って帰ったら離宮のメイドが慌てていた。
魚は塩焼きにして出してもらったらとても美味しかった。運動をしたせいか、食欲もあるようだ。
やはり運動は素晴らしい。
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