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77 偽王子との攻防戦

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「あれ? 人の気配が……って、え!? 何、誰、この女。しまった、今の聞かれた……!?」

 気を取り直した偽王子(猫耳)が視線をあげた途端に私と目が合ってしまった。

 いや、聞かれたも何も。聞かせたとしか思えないぐらいに大きな声でしたよ。機密情報とか喋らないで! 口に出さず脳内で処理して!! 

 あと、昼間だからって近所から苦情来たら怖いから少し声を落としてもらいたい。ただ、これ以上ないほどに聞き取りやすく分かりやすかったです。


 ああ、どうしよう。王子じゃないって気が付いてるのに気が付かれたら消されてしまう。
 こうなったら仕方がない。


 目の前の彼は王子。目の前の彼は王子。目の前の彼は王子。

 猫耳が付いているけど大きさも声も外見もまったく違うけど、間違いなく王子!!


 ――として扱う。

 そう。彼は異世界からのお客様。王子として王子待遇で全力のおもてなしをさせていただきます。
 でも、その前に。


「あ……あー、ごめん、王子。今、ちょっと何言っているのかよく分からなかったなー。魔力不足かな? 王子の言葉が分からない。魔法陣の調子が悪いのかしら??」

「えっ。本当か。じゃあ、王家の影とか、裏の任務とか聞こえてな……」

「あ――っ、あ――っ! なんか、耳が……。あ、少しずつ聞こえてきた! この先は何を言っているかしっかり聞こえそう!! ここから! ここからだから!!」

「そ……そうか。えーと、おかしいな。なんか自動翻訳が付与されているみたい……されている筈なんだけど」


 よっしゃ! 偽王子(猫耳)が言葉に配慮をしだした。そのまま警戒を続けて欲しい。ああ、これで一安心。


「ほらっ。王子が前に、魔法陣が不安定な時は言葉が分からなくなるとか、姿が保てなくなるとか、そんな風に言っていたじゃない。過去によくあったって!! だから全く不思議じゃないわ」

「そう……なのか? ……『真偽』。ああ、嘘はないようだな」


 ……なんか嘘を見抜く魔法っぽいの使われたんですけど。何、この子。おバカに見えて意外と有能? とりあえずは誤魔化せたみたいだけど、コレ多用されたらまずいんじゃ……。


「あっ、まずい。一カ月に一度しか使えないやつ使っちゃった。まあ、いいか。とりあえず嘘はないようだし」


 先ほどより少しばかり声を抑えて言う偽王子(猫耳)。いや、それでも普通に聞こえる声量ですけどね。

 でも、そうか。嘘を見抜く系の魔法は月に一回までしか使えないのか。いいこと聞いた。

 とりあえずの疑いは晴れたようだ。良かった。中途半端な物言いをしておいて。この調子でいこう。

 まあ、立ちっぱなしもなんだし、このまま会話ばかり続けても神経をすり減らしそうなので。


「えーと、それじゃ王子。『いつも通り』おやつ食べながらゲームでもする?」




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