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68 しばしの別れのその前に2
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隅々まで案内し終えた王子は満足そうだった。一方の私は真っ青になった。
もたらされた機密情報の多さと、大半は3D酔いの影響だ。見ているだけで酔ってしまった。仕方がない。お城見学ツアーを始めてから説明を含め、既に一時間半は経っている。
表情は満足げだが王子も顔色が悪いから、彼も絶対に酔っている。でも、あれだな。今度の召喚がいつになるのか分からないから、今日中に自慢という名の案内をし終えたかったんだろうな……。
流石に一年も王子の召喚生活に付き合っていればそのくらいのことは分かる。それと、再び召喚ができなくなっちゃって、この先が不安で仕方ないのだろうことも――。
とりあえず3D酔いをさますための強制休憩をとる。
まあ、今日は王子が作った既に出来上がっているお城を見て回っただけなので、酔いはそこまででもないはずだ。
しばらくコチラに来られないとの事なので、ちょっと多めにお菓子を出してやった。ただ、3D酔いであまり食欲はないようだ。まあ、私もだけど。
実は夏休みに向けて、王子の為に少し多めにお菓子を買い込んでいたから、おやつの在庫はいっぱいある。なので、今日は周囲にバレない程度に帰るときに少し持たせてあげるのもいいかもしれない。
休憩中は二人して城の感想だとか、召喚が再開された後のことなんかを話していた。
「本当はコンビニを作りたかったんだけど、分からないところも多くあるから、それは君と一緒に作った方がいいかと思って城にしたんだ。1人で長時間やると酔っちゃうけど、城なら僕だけで細部まで建設できるし。どうだ、なかなかよく出来ていただろう」
ドヤ顔王子。
ああ、ハイ。隠し通路まで作りこまれていましたね。無駄に詳しく。即死トラップも解説付きで。
コンビニの方が私の精神的にも平和で安全だった――とは思うけど。
「それなら召喚が再開されたら、今度こそ一緒にコンビニを作ろうか。ああ、せっかくだから、ウチのコンビニにしようかな。バイト先も確保できるし。それにどうせならもっと雑誌コーナーを広げたい。ウチの近くには書店がないし」
「いいな! ゲーム屋さんが出来るまではゲームと攻略本もそこで買えるようにしよう!!」
「いいわね。でも、それだと品ぞろえが……ああ、そうだ。いっそ、コンビニの上に書店とゲーム屋さんも作っちゃう? 一つの建物でお買い物が済むわ」
「便利そうだ。どうせなら幽閉中でも塔の窓から見える場所に作って欲しい。見てて楽しいから。そうなると高さがあるのはむしろ都合がいいな」
ワイワイと、都市計画ばかりが進んでいく。王子と私で交替で建設をするにしても、かなりの時間がかかりそうだ。
時間のある夏休み中に帰ってきてくれるといいけれど。
「それで、さ。実際にはいつ頃戻って来られそうなの?」
「……分からない。ただ、事情があってあまり長時間は塔から離れられないから、体調が戻り次第戻されることになると思う。元々、ゲーム酔いで食欲が無かったのを体調不良と誤解されただけだし。前ほど長くはかからないと思う――が、その」
つらい……と王子の顔に出ていた。まあねえ。前回は携帯ゲーム機で乗り切ったというか、夢中になりすぎて暴走したみたいだけど、今回はそれもできないみたいだし。
「うん……まあ、不安だろうけど、せっかくだから離宮生活とやらを楽しんでおいでよ。あっちで塔を出るのも久々なんでしょ? ああ、そうだ一人で寂しいなら、この前みたいにクマちゃんでも連れて行く?」
「え? いいのか?」
意外そうに驚いて。でも、王子の目が輝く。
「うん。ソレ持っていると落ち着くみたいだから貸してあげる」
そう……実は王子の腕の中には今もクマがある。コントローラーの高さ合わせにいつも枕元から誘拐されているのかと思っていたけれど、どうやら抱っこしていると落ち着くようだ。
コチラでゲームをしているときには常に抱えているからそのせいかもしれない。
「絶対、返しに来る。それで……時期は分からないけど、なるべく早く戻るから、その……」
「ハイハイ。魔法陣が反応しなくても、おやつを載せて王子を召喚できないかどうかをこまめに試してあげるから大丈夫よ。まあ、焦らないでいいからしっかり休養してきてね」
「ああ!」
こうして――王子はクマを連れてアチラへと帰って行った。
ちなみにお菓子は固辞された。食欲が戻らないと塔に帰れないのにおやつを持って行ったらそっちばかりをこっそり食べて、絶対に帰るのが遅くなる――とか何とか。
流石王子。自分のダメさ加減をよく分かっている。
そして始まった夏休み。一時的とは言え王子のいない静かな生活が戻ってきた――――筈だった。
もたらされた機密情報の多さと、大半は3D酔いの影響だ。見ているだけで酔ってしまった。仕方がない。お城見学ツアーを始めてから説明を含め、既に一時間半は経っている。
表情は満足げだが王子も顔色が悪いから、彼も絶対に酔っている。でも、あれだな。今度の召喚がいつになるのか分からないから、今日中に自慢という名の案内をし終えたかったんだろうな……。
流石に一年も王子の召喚生活に付き合っていればそのくらいのことは分かる。それと、再び召喚ができなくなっちゃって、この先が不安で仕方ないのだろうことも――。
とりあえず3D酔いをさますための強制休憩をとる。
まあ、今日は王子が作った既に出来上がっているお城を見て回っただけなので、酔いはそこまででもないはずだ。
しばらくコチラに来られないとの事なので、ちょっと多めにお菓子を出してやった。ただ、3D酔いであまり食欲はないようだ。まあ、私もだけど。
実は夏休みに向けて、王子の為に少し多めにお菓子を買い込んでいたから、おやつの在庫はいっぱいある。なので、今日は周囲にバレない程度に帰るときに少し持たせてあげるのもいいかもしれない。
休憩中は二人して城の感想だとか、召喚が再開された後のことなんかを話していた。
「本当はコンビニを作りたかったんだけど、分からないところも多くあるから、それは君と一緒に作った方がいいかと思って城にしたんだ。1人で長時間やると酔っちゃうけど、城なら僕だけで細部まで建設できるし。どうだ、なかなかよく出来ていただろう」
ドヤ顔王子。
ああ、ハイ。隠し通路まで作りこまれていましたね。無駄に詳しく。即死トラップも解説付きで。
コンビニの方が私の精神的にも平和で安全だった――とは思うけど。
「それなら召喚が再開されたら、今度こそ一緒にコンビニを作ろうか。ああ、せっかくだから、ウチのコンビニにしようかな。バイト先も確保できるし。それにどうせならもっと雑誌コーナーを広げたい。ウチの近くには書店がないし」
「いいな! ゲーム屋さんが出来るまではゲームと攻略本もそこで買えるようにしよう!!」
「いいわね。でも、それだと品ぞろえが……ああ、そうだ。いっそ、コンビニの上に書店とゲーム屋さんも作っちゃう? 一つの建物でお買い物が済むわ」
「便利そうだ。どうせなら幽閉中でも塔の窓から見える場所に作って欲しい。見てて楽しいから。そうなると高さがあるのはむしろ都合がいいな」
ワイワイと、都市計画ばかりが進んでいく。王子と私で交替で建設をするにしても、かなりの時間がかかりそうだ。
時間のある夏休み中に帰ってきてくれるといいけれど。
「それで、さ。実際にはいつ頃戻って来られそうなの?」
「……分からない。ただ、事情があってあまり長時間は塔から離れられないから、体調が戻り次第戻されることになると思う。元々、ゲーム酔いで食欲が無かったのを体調不良と誤解されただけだし。前ほど長くはかからないと思う――が、その」
つらい……と王子の顔に出ていた。まあねえ。前回は携帯ゲーム機で乗り切ったというか、夢中になりすぎて暴走したみたいだけど、今回はそれもできないみたいだし。
「うん……まあ、不安だろうけど、せっかくだから離宮生活とやらを楽しんでおいでよ。あっちで塔を出るのも久々なんでしょ? ああ、そうだ一人で寂しいなら、この前みたいにクマちゃんでも連れて行く?」
「え? いいのか?」
意外そうに驚いて。でも、王子の目が輝く。
「うん。ソレ持っていると落ち着くみたいだから貸してあげる」
そう……実は王子の腕の中には今もクマがある。コントローラーの高さ合わせにいつも枕元から誘拐されているのかと思っていたけれど、どうやら抱っこしていると落ち着くようだ。
コチラでゲームをしているときには常に抱えているからそのせいかもしれない。
「絶対、返しに来る。それで……時期は分からないけど、なるべく早く戻るから、その……」
「ハイハイ。魔法陣が反応しなくても、おやつを載せて王子を召喚できないかどうかをこまめに試してあげるから大丈夫よ。まあ、焦らないでいいからしっかり休養してきてね」
「ああ!」
こうして――王子はクマを連れてアチラへと帰って行った。
ちなみにお菓子は固辞された。食欲が戻らないと塔に帰れないのにおやつを持って行ったらそっちばかりをこっそり食べて、絶対に帰るのが遅くなる――とか何とか。
流石王子。自分のダメさ加減をよく分かっている。
そして始まった夏休み。一時的とは言え王子のいない静かな生活が戻ってきた――――筈だった。
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