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55 魅了堕ち幽閉王子のお宅訪問
しおりを挟むさて。そんなお手伝いもできる王子様は最近、クラフト系ゲームにどハマりしている。
冒険はもちろん、木や、石や、金属なんかを集めて自由に建築したりもできる自由度の高いゲームだ。私もかなりどハマりしていたので、コツコツ作り上げた街を王子に自慢したら「面白そうだ! 僕も!!」となった。
そして、コレ系のゲームと王子の相性は凄かった。
コツコツ素材を集め、限られた素材の中で建築を極める王子様。そして、そんな彼が作り上げたのがコチラ!
『幽閉中の塔』
……いや、最初は反応に困ったわー。しかも凄い完成度。
凄い、とも怖い、とも言いづらい。なんか、リアルに。ああ、ここに王子は幽閉されているのか……って微妙な気分になった。
見る限り結構高くて、地下にも広くて、王子曰く割と快適ではあるらしい。
ただ……ねえ。随所に見られる罠の数々。いや、そこまで再現しなくても……と思ったけど、細部にこだわる王子様の執念は凄かった。まあ、あれだ。多分、この通りなんだろうな――と。
中から脱出できないように。外から侵入できないように。
様々に張り巡らされた即死トラップの数々。王子は全てを調べ上げ、完璧に把握をしているそうだ。うん。よく生き残ったね。
そして塔の地下は以前から聞いていた通り、物置、というか倉庫のようになっていた。いくつかの部屋に分かれていて、この部屋の鍵はマットの下に隠しているだとか、ここは数字で開くだとか、ちょいちょい、機密情報を入れてくる。
いや、防犯考えようよ。そういうの、ペラペラ人に喋っちゃいけません! そう言って注意はするものの、王子のおしゃべりは止まらない。どうやら、自宅に友人を招いているような気分になっているらしい。
王子は自宅(幽閉中の塔)の隅々まで、機密情報付きで案内をしてくれた。
地下倉庫のココの壁の崩れがダンジョンに通じているから隙間風か寒いとか、瘴気が入るとか、ファンタジックなんだか生活感に溢れているのか判断に困るところも多々あった。
その辺は興味深いし面白い……が。
いや、なんか。実はここに王家の秘宝がとか、裏の王国史を納めた隠し書庫が、とかバレたら消されそうな秘密を次々知っちゃって不安が募る。そんななか。
案内を進めるうちに。段々、口数が少なくなって、青ざめていく王子様。
流石にしゃべりすぎたか――と不安になっているわけではない。ここ数日、すっかり見慣れた光景だ。
「……酔った…………」
そう言うや否や、王子はコントローラーを置いて、ラグに横になる。やれやれ。今日はここまでか。私としては慣れたものなので、セーブしてゲームを終わらせる。
枕を用意してやれば王子は素直に頭をのせた。いつの間にか、王子お気に入りのクマのぬいぐるみを抱き込んでウンウン唸っている。
そう、この王子。
3Dにメッチャ弱かった――。
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