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46 好きな物だらけの宴会と……魅了された僕(王子視点)

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 机の上にずらりと並ぶご馳走たち。スーパーで、召喚主と共に選んだものだ。『半額』シールがついた物の中から二人で相談しながらどれにしようかと決めたけど、彼女は僕の意見を尊重してくれたから、僕が食べてみたかったものばかり。

 ゲームで。漫画で。小説で。名前だけみたことがあるけれど、食べたことのないものをあれこれと選んだ。

 テキパキと準備を進める召喚主を見るだけで、自分は何をしたらいいのかよく分からなかったが、皿に盛りつけては箱に入れている彼女を見て、自然とその作業を手伝っていた。

 そして――。


「「カンパーイ」」


 掛け声と共に始まる宴会。箱に入れた後の『お惣菜』はどれもアツアツで美味しかった。

 どうやら箱の名前は電子レンジというらしい。アツアツの『お惣菜』は僕の大好きなコーラとよく合った。

 塔でしっかりと夕食は食べてきたけれど。その美味しさについついフォークが進んでしまう。日頃、食べ過ぎ飲みすぎを注意してくる召喚主が珍しく何も言わないと思ったら、「宴会」は特別なのだそうだ。

 楽しむときは楽しむ。なるほど、と思った。

 そして、本来ならコレは桜の下でやるものらしい。なるほど。あの、幻想的な光景の下で。この美味しい料理を摘まみながら桜を楽しむ。それはきっと素晴らしいに違いない。

 ただ、彼女曰く、食べ始めたらどうせ桜なんか見ないから家で落ち着いて食べた方がいいそうだ。少し情緒がないなと思ったが、「飽きたらゲームできるし」のひと言になるほどと思った。

 確かにそうだ。食べ物も、飲み物も、僕の好きな物ばかり。召喚主とのおしゃべりに加えゲームまで揃ったら僕にとって楽しい事しかない。

 それに――。

 記憶魔法で保存したから、僕の頭の中にはあの幻想的な光景が鮮明に残っている。

 実は、この記憶魔法には画質にランクがある。どうでもいいものでは低画質で。大切な物は高画質で。静止画。動画。それぞれ選べるのだ。まあ、その分魔力は食うわけだけど。

 その中で今日僕が使ったのは、最高レベルの高画質、の動画。髪の毛一本一本の動きまで分かるくらいの優れもの。我ながら、あの一瞬でよく設定したものだと思う。

 見ようと思えば、この場でいくらでも脳内であの映像を再現できるのだ。実際、召喚主の家へと帰ってからも、あの美しい光景を脳内で何度も再生させている。


 桜吹雪を降らせる夜桜の下、長くキレイな黒髪を抑え、僕を振り返りながら微笑む召喚主。公園の明かりに照らされて。風に靡く髪の毛の一本一本までもがキレイに光っている。幻想的な光景だ。そうして何回目かで再生させているうちに気が付いた。

 桜を見ているつもりでもメインで映っているのはほぼほぼ召喚主。しかも、風でまくれ上がるスカートからわずかに膝が見えている。


「…………っ」


 途端に顔が赤くなる僕。いや、待て。これは事故だ。桜に感動して思わず記憶しただけで、性的な興味から撮った訳ではない。たまたま。偶然映りこんじゃっただけで。
 寒さからか、運動したからか、わずかに赤くなった膝小僧とか……。

 あああああああ!


 落ち着け。落ち着け僕。僕の世界はドレスが中心だけれども、学園の制服はひざ下くらいは見えている。だから、こんな偶然だってある。そう! 偶然!! どこに出しても恥ずかしいものではない!!!


「いいなー。王子、あの風景魔法で撮ったんでしょ? ちょっと見せ「無理!!!!」」


 召喚主に映像を見せてくれと言われたが、考える前に秒で断っていた。人に見せられるものではないからと……ちょっとだけ嘘をついてしまった。

 本当は、魔力を流せば彼女にだって見せられる。でも、それをしたらあの、膝小僧映像がバレてしまう。もし、消せとか言われても消したくないし。

 だから、コレは僕の宝物として隠すことに決めた。残念そうにしている召喚主の姿に罪悪感は覚えるが、彼女に嫌われるよりは100倍マシだ。決して下心からではない……筈だ。

 そんな風に思い込む努力を続けていたら、彼女が来年は一緒に撮ろうと言ってきた。


「まだ、二十歳前だからお酒買えないけど、来年だったら私も年齢的に堂々とお酒買えるから、また、一緒にお花見しようよ。そのとき一緒に写真を撮ろう。ああ、今度は昼間の桜吹雪もいいかもね」

「楽しみにしてる!」


(パシャリ)


 …………またやっちゃった……。彼女の言葉に返事しつつも、楽しそうな笑顔に嬉しくなって、また記憶魔法が自動発動してしまった。

 今のは、桜は……関係ないな。でも、ホラ。なんか、すっごい笑顔でさ……。覚えときたいな、って思っちゃたんだよ。……約束と一緒に。

 どうやら僕は、思いのほか召喚主の笑顔に魅了されてしまったらしい。


 だって、彼女は本当に自然に――楽しそうに笑うから。


 とりあえず、ゲームに夢中になっているフリをしつつ、魔力の回復に努める。喋っていないから自動翻訳が一瞬切れたのはバレてはいないはずだ。

 そして、ふと気が付けばゲーム内の自室は電子レンジでいっぱいになっていた。

 うん。いいよね、電子レンジ!




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