10 / 326
10 バナナはおやつに入るんですか?
しおりを挟むそして翌日の夜。予定通りにバイトを終わらせて帰る途中、商店街を通るとお祭りをやっていた。ああ、いいなー。せっかくだから何か買って帰るか。とも思うが時間が遅いせいか夜店は片付けを始めている。
少し遅かったか。でも、まだちらほら売っている店もある。
その中でチョコバナナが目に入った。あ、小腹も満たせるし祭りっぽいし丁度いいかも。しかも安いし!
「すいませーん、1つください!」
「いらっしゃい! じゃんけんの勝敗でサービスするよー。せーの、じゃ~んけ~ん」
パー(店主)
グー(私)
残念! 負けてしまった――んだけど。
「はい残念賞~!」
とか言って、店先にあった5本全部くれた。
お会計は200円。え。安い。安いけど……流石にこんなには……。
「さー、売り切れ売り切れ♪」
……と言ってサッサと片付けを始める夜店のおじさん。
売れ残りを押し付けられた感あるけど、随分と得したからまあ、いいか。笑顔でしっかりとお礼を言ってお祭りを後にした。
流石に量が量だけに袋に入れてもらって、食べながら帰るのは諦めた。確か、買ったばかりの牛乳が冷蔵庫にまだあったはずだ。最近では王子のミルクティー用に必ず常備しているから。
あれだ。寝る前だし、ホットミルクでも作って食べればいいか。バナナダイエットってのがあったくらいだし、丁度いいよね。でも5本か。食べきれるかな?
そんなことを思いつつ、帰宅してホットミルクを用意する。チョコバナナと共にお盆にのせて、取りあえずテレビの前のラグに載せた――途端。
「え」
「え」
目の前に王子が現れた。
……え!? あれ!? なんで!?
王子も目を見開いて固まっている。いつものようなゴテゴテキラキラの王子ルックではなく、寝間着に肩からタオルの完全に風呂上り。
王子はラグの上のチョコバナナ+ホットミルクを見て。
「あ~。おやつに反応したのか」
――と緊張を解いた。どういうことかと尋ねてみれば、どうやら時間に関係なく「おやつを置くこと」で魔法陣は反応をしてしまうらしい。しかも、今日は召喚されていなかったから魔力が有り余ってて反応が鋭かった……そうだ。
なるほど。そして、このことによって私は一つの結論にたどり着くことが出来た。
とりあえず『チョコバナナ』はおやつに入るらしい。
「そうだったのね。ごめんなさい、驚かして。それで、今って大丈夫なの? メイドさんとかにこっち来るトコ見られてない?」
こんな時間に王子が現れた事情は分かったが大問題が残っている。なんてったって、王子は絶賛幽閉中。フラフラ遊ぶために異世界に召喚してもらっているのがバレたらまずいはずだ。だからこそ、周囲に見つかる危険のないおやつの時間前後に呼び出していたのだから。
今のは完全に不意打ちのイレギュラー。
「ああ、いや。この時間は食事も風呂も終わっているから人は来ない。その……風呂も、着替えも自分で……やらされているから。――幽閉中の身だからな」
フ…………って、愁いを含んで自嘲した顔してますが、それこっちじゃ普通ですよ。小学生だって一人で風呂入って着替えしているからね? 意味わからん。
そう言ってやったら驚いていた。そんな王子の髪からはポタポタ水が垂れている。風邪をひかれても困るのでとりあえずドライヤーで乾かしてやった。
「あはは! 温かいな。なんだこれ~」
出てくる温風にはしゃぐ王子。小学生か。
とりあえず髪がきれいに乾いたところで、都合がいいことに気が付いた。バナナダイエットとか言って自分を誤魔化そうとしていたけれど、あくまでこれはチョコバナナ。夜にこれは絶対太る。チョコレートのカロリーを甘く見てはいけない。
と、いうわけで。
「えーと、王子。もし、時間が大丈夫なら今からおやつをどうですか?」
と誘ってみたら、王子は二つ返事で頷いた。
王子召喚、夜の部開幕です。
65
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる