目覚めたら天使でした。

momo

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転生前。マリアが居た頃の天界には一軒家と呼べる住居は存在していなかった。巨大な教会のような建物が1つの集落のようになっており、その中で沢山の天界人が暮らしていた。
ロの字の形に建てられたそれに住む者が家族のようなものであった。厳密に血の繋がった家族は存在しない。だからこそ他人の繋がりは濃密であった。

今マリアの目の前にそびえ立つ教会は、その建物に酷似している。少なくともマリアはそう感じた。眺めていると懐かしい気持ちになる、そんな感じだ。
フェルズ邸から馬車で10分ほどの位置にこの教会はあった。領地のほぼ端である。これは結界の張りやすい場所であり、魔の森に近く何かあれば直ぐに駆けつけるばしでもあった。
教会には神官、神父の他に神官剣士と呼ばれる聖騎士見習いが在駐している。聖騎士になるべく鍛錬している若者たちだが、その実力は折り紙付きで選ばれしエリート剣士だ。
シスターは滅多に居ない。希少な女性である為、神に身を捧げる事がほとんど無い為である。
なので1つの教会には神官、神父、神官剣士、聖女が居るのが通常となる。剣で守るのが神官剣士で、光魔法で守るのが神官である。

「マリア、中に入るよ」

シグルドに背を優しく押されてマリアは惚けていた事に気付く。恥ずかしそうに慌てて皆に続いて教会に入った。

静かで厳かな雰囲気の中では熱心に祈りを捧げる領民の姿がちらほら見られる。
その清廉な空気をマリアは胸一杯吸い込むと深く吐き出す。ここの空気はとても天界に似ている。
居心地の良さに目を細めていると、奥から優しそうな神父が出てくると真っ直ぐにこちらへ向かって来た。教会の1番偉い神父なのだろうとマリアは思った。

「よくぞいらっしゃいましたフェルズ様。道中御加護は有りましたかな」
「ええお陰様で何事も無く無事に辿り着きました。女神のお導きでしょう」
「それはようございました。今ちょうど聖女様のご祈祷が終わった所です。ご挨拶されますか?」
「ぜひお願いします」

シグルドの言葉を聞いてニッコリ微笑むと神父は教会の奥へ誘導するように歩き始めた。
動き出す瞬間、神父の目がマリアを捉えた気がしたが気の所為だったのだろうか?マリアは首を傾げたがやがて歩き始めた。

その後ろ姿を何とも言えない表情でカインが眺めている事にも、マリアが気付くことはなかった。
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