目覚めたら天使でした。

momo

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 「すごいねぇ」
マリアは思わず感嘆の声を上げる。厳かに王族が入場し、国王が玉座にその隣に王妃が座ると両脇に王太子と第二王子がそれぞれ立った。
宰相が合図を送ると爵位の高い順に玉座へと向かいデビューの令息令嬢を連れて挨拶をするのである。マリアは侯爵なので順番が早い。公爵家の並ぶ後ろに倣うと前の少女がチラチラとマリアを気にしていた。

(何かしら?)

その子は、空色の髪に新緑のような明るい緑の目をした可愛らしい女の子だった。隣には父親らしき人とその反対側に婚約者か兄らしき少年。
少年の方はアベルと目が合うと軽く会釈したので友人なのかとマリアは考えた。少年の方は少女と同じ空色の短髪に濃い青の目。
ちょっとだけ見えた父親らしき人物の目が緑で、髪は金茶だったので、おそらく二人は兄弟で少年の目は母親譲りなのだろうと推測する。
マリアがそんな風に観察しているのには訳がある。単純に暇だからだ。公爵家は3家あるのだが今年5歳になる子供は皆少女だった為か皆挨拶、という名の娘アピールがやたらと長い。
それというのも、二人居る王子はどちらもまだ婚約者が居ない。どちらも候補は居るが確定には至っていないのだ。これは高位貴族にとって好機なのである。
もちろん少年だったとしても好機は同じ。側近として召し上げられる為にどちらにしても必死のアピール合戦が繰り広げられるのである。

(まだかなぁ)

まだ食べていない美味しそうなお菓子がたくさんあるのだ。挨拶を早く終わらせて食べたいとマリアは小さくため息を零す。
何気に視線を前方に移すと前の公爵家令息と目が合った。すると途端に頬を赤らめてパッと視線を外された。
愛らしいと思いながら眺めていた少女と目が合ってしまったが為に逸らされた視線だったのだが、それがいまいち分からないマリアは変な顔してたかな?とちょっと恥ずかしくなるだけだった。
ちなみにこの間双子は周りの少年たちを牽制するのに夢中でその出来事には気付いていなかった。
マリアは前の少女に視線を移す。さきほどはマリアを気にしていたようだったが、今はカインの方をキラキラした目で見つめている。
どうやら彼女の好みに合ったらしく、一向に視線を合わせないカインをそれはもう熱心に見つめている。その表情はしっかり恋する乙女のそれである。

(5歳でもやっぱり女の子なのね)

マリアは恋愛に関して全くの奥手であった。転生前もラファエルやルシフェルに大切に囲われていた結果そういう心の機微にすっかり疎くなってしまったのだ。
そういう意味では目の前の少女の方がよっぽど成熟しているのかも知れない。マリアには「好き」という感情が多種類ある事もよくわからないのだ。
だから、乙女の顔をした少女を少し羨ましくも思っていた。いつか、マリアも恋をするのだろうか。それは双子に対してなのか、それとも他の誰かなのか。

マリアは一歩前に出る。いつの間にか、目の前ではこの国一番高貴な家族がにこやかにマリアを見つめていた。

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