38 / 61
30
しおりを挟む
いい加減待てなくなったアルフレッドにぺりりと剥がされた三人は会場に繋がる扉の前で王子二人と別れた。王族として入場しなければならない為である。
その時の離れがたい雰囲気を醸し出しながらマリアを振り返りつつ離れていく王子たちを見て色々な事を悟った双子はお互いの顔を見合わせてため息をつく。
「ほら見ろやっぱりハマった」とでも言うように肩をすくめてみせるとマリアの肩を優しく抱いて会場の中へ誘導する。
「マリア、甘いものまだ食べ足りないだろう?」
「美味しそうなマカロンもあったぞ」
「本当に?マカロン大好き!イチゴ!」
天界で甘いものと言えば果物とそれを使った果実水くらいだったので、マリアは地上界に生まれてお菓子が大好きになっていた。特にマカロンは色味も豊富で目にも楽しくマリアは大好きだ。
さきほど座っていたテーブルに戻ってアベルが取りに行ったマカロンをワクワクしながら待っていると、目の前に果実水を置いたカインに微笑みかけられた。
「マリア、冒険は楽しかったかい?」
「え、」
「ふふ、僕たちが友達と話せるように離れたんじゃないの?」
「カイン兄様、分かってたの?」
「最初は分かってなかった。でも途中で気づいた」
マリアが席を外して少ししてから、双子のテーブルによく王宮で話す子息たちが遠慮がちに近づいてきた。マリアが居ればそれほど相手にしようとは思っていなかったが、今は別に良いかと話しをしていた時。
『もっと早くに話しかけたかったんだけど、妹さんが居ただろう?遠慮してたんだ』
そう言われて、そういえばと思い出す。女性と共に居る時は他の男に話しかけないようにするという事。その女性を見初められたり、逆に女性が相手を見初めてしまったりしては困る時なんかはそうする。
それを気にしない時は女性と共に居る方が話しかければ良いのだが、双子はマリアを見初められたくないので自分たちから話しかけはしなかった。
(もしかしてマリアは)
双子が友人と話しやすくなるようにワザと離れたのでは?そう考えるも、だが5歳の女の子がそこまで気を使えるのかどうか?
答えは『可』である。マリアならそれが出来る。双子はそれを信じられてしまう。あの優しく聡明な天使はきっとそれが出来るのだと。
それを指摘されてマリアは悪戯が見つかった時のような居心地の悪さを感じていた。確かに気を使ったがそれに関して感謝されたいわけではなかったからだ。
でもやっぱり「ありがとう」なんて微笑まれると嬉しい。マリアは頬を染めて恥ずかしそうに俯いてしまった。
その愛らしい仕草にカインが内心悶えている事など気付くわけもなく、そんな甘い空気に包まれながらアベルが戻るのを待っていた。
やがて戻ったアベルも交えて美味しい菓子に舌鼓を打っていたマリアの耳に軽やかな音色が届いた。とうとう王族の入場である。
その時の離れがたい雰囲気を醸し出しながらマリアを振り返りつつ離れていく王子たちを見て色々な事を悟った双子はお互いの顔を見合わせてため息をつく。
「ほら見ろやっぱりハマった」とでも言うように肩をすくめてみせるとマリアの肩を優しく抱いて会場の中へ誘導する。
「マリア、甘いものまだ食べ足りないだろう?」
「美味しそうなマカロンもあったぞ」
「本当に?マカロン大好き!イチゴ!」
天界で甘いものと言えば果物とそれを使った果実水くらいだったので、マリアは地上界に生まれてお菓子が大好きになっていた。特にマカロンは色味も豊富で目にも楽しくマリアは大好きだ。
さきほど座っていたテーブルに戻ってアベルが取りに行ったマカロンをワクワクしながら待っていると、目の前に果実水を置いたカインに微笑みかけられた。
「マリア、冒険は楽しかったかい?」
「え、」
「ふふ、僕たちが友達と話せるように離れたんじゃないの?」
「カイン兄様、分かってたの?」
「最初は分かってなかった。でも途中で気づいた」
マリアが席を外して少ししてから、双子のテーブルによく王宮で話す子息たちが遠慮がちに近づいてきた。マリアが居ればそれほど相手にしようとは思っていなかったが、今は別に良いかと話しをしていた時。
『もっと早くに話しかけたかったんだけど、妹さんが居ただろう?遠慮してたんだ』
そう言われて、そういえばと思い出す。女性と共に居る時は他の男に話しかけないようにするという事。その女性を見初められたり、逆に女性が相手を見初めてしまったりしては困る時なんかはそうする。
それを気にしない時は女性と共に居る方が話しかければ良いのだが、双子はマリアを見初められたくないので自分たちから話しかけはしなかった。
(もしかしてマリアは)
双子が友人と話しやすくなるようにワザと離れたのでは?そう考えるも、だが5歳の女の子がそこまで気を使えるのかどうか?
答えは『可』である。マリアならそれが出来る。双子はそれを信じられてしまう。あの優しく聡明な天使はきっとそれが出来るのだと。
それを指摘されてマリアは悪戯が見つかった時のような居心地の悪さを感じていた。確かに気を使ったがそれに関して感謝されたいわけではなかったからだ。
でもやっぱり「ありがとう」なんて微笑まれると嬉しい。マリアは頬を染めて恥ずかしそうに俯いてしまった。
その愛らしい仕草にカインが内心悶えている事など気付くわけもなく、そんな甘い空気に包まれながらアベルが戻るのを待っていた。
やがて戻ったアベルも交えて美味しい菓子に舌鼓を打っていたマリアの耳に軽やかな音色が届いた。とうとう王族の入場である。
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる