目覚めたら天使でした。

momo

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閑話:マリアリールの生前3

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 一旦治癒院に戻って正式な癒術士の制服に着替えると、マリアは急いで待っていた王宮からの馬車に乗り込んだ。ここから王宮までは馬車で30分程度。到着すると王宮騎士たちに連れられルシフェルの居る玉座の間に向かう。
重厚な扉を開くと玉座にぐったりとルシフェルが座っていた。艷やかに光を反射する金糸の髪はサラリと肩から流れて垂れている。
いつもは怜悧に煌めいている黄金の瞳も今は疲労のためか鈍く光っているように思える。
その姿を見たマリアは礼を失しない程度に慌てて歩み寄る。しかし自力でルシフェルの元にたどり着く前に、ルシフェルがマリアに気付いた。
緩慢な動きで片手を前に突き出してパチリと指を鳴らすと、フワリとマリアの体が浮く。そのままルシフェルの広げた両手の中にすっぽりと収まってしまった。

「へ、陛下」
「待っていた。遅かったな」

マリアを膝の上に座らせて腰と肩に腕を回すと苦しくない程度に抱きしめて深く息を吐いた。聖魔力が一際高いマリアは常に微弱な魔力が溢れているらしく、こうして触れているだけでもかなり癒やしの効果があるのだと言う。
マリアとしてはどうにも恥ずかしくていつもこうして動揺するし、治療の一環だと思っててもどうしても頬を染めてしまう。
それでも国王として多忙を極めているルシフェルを癒やす為だと思い恥ずかしいのを耐えて大人しく腕の中に収まっているのだが・・・。

「申し訳ありません。薬草採りが長引いてしまって」

しょんぼりしたマリアとは違ってルシフェルの方は頗る機嫌が良かった。治療と称して呼び出してはこうしてマリアを独り占めしているこの瞬間が幸せで仕方なかったからだ。
本当ならば両手を握ってもらうだけでも癒やしの効果は十分に得られるのだが、恥ずかしげに顔を赤らめてフルフルと耐えながら自分の腕の中で小さくなっているマリアが可愛らしくて今の所事実を教える予定はない。
マリアの柔らかな肢体をキュウっと抱きしめるとマリア自身の甘やかな香りが鼻孔を擽る。そしてマリアの体から溢れる暖かな魔力に包まれ癒やされていくのだ。

だがルシフェルは満足している訳ではなかった。今のままでは呼ばなければ会えない。癒やすという名目でなければ触れる事も出来ない。
ルシフェルはマリアを常に側に置きたい。出来るなら誰の目にも触れさせず自分だけがマリアに触れられるようにしてしまいたいと思っている。
マリア自身の心をも求めていた為に無理強いをする事が出来ず現状に甘んじているが、このままで済ませるつもりはルシフェルはなかった。

(今はお前の元に預けているだけだラファエル)

いずれはマリアの心も体も手に入れる。ルシフェルはうっとりと目を細めて再びマリアの首筋に顔を埋めた。
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