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3年の月日が流れた。双子は相変わらず王太子の話し相手や父親の執務の手伝い、剣術魔術の稽古に明け暮れていた。
もちろんその隙間にマリアリールを愛でる事も忘れない。さり気なく妹の話を振ろうと奮闘するアルフレッドを何とかいなしながら忙しい日々を送っていた。
一方マリアリールは5歳、デビューの年齢となっていた。まだまだ幼くまろい頬は桃色に染まり、柔らかな唇もぽってりとピンクに色づいている。
周りから蝶よ花よ妖精よと可愛がられまくった割にマリアリールは真っ直ぐな性根のまま清らかな優しい少女へと育っていた。
「おかえりなさい、カインお兄様アベルお兄様」
玄関ホールで使用人たちと共に双子を出迎えるのはマリアリールの大切な日課であった。
王宮内でねっとりとした少女たちの視線に晒されていた双子の唯一の癒やし。それがこのマリアリールの輝く笑顔なのである。
双子はてててと駆け寄ってきたマリアリールの愛らしさに思わず頬が緩む。まずはカインがマリアリールを抱き上げて柔らかで滑らかな頬にキスをする。そのままアベルに交代し、カインとは反対側の頬にキスをする。
以前であれば、擽ったそうに身を捩りながらも嬉しそうに双子へとお返しのキスを頬に贈っていたマリアリールであったが、恥じらいというものを覚えてからは頬をじわりと赤く染めてモジモジするようになった。
その様子が余りにも可愛らしくて双子は何回もマリアリールにキスを贈りちょっと嫌がるまで抱き上げたままでいるのだった。
今日はマリアリールの5歳の誕生日である。その為死ぬ気で仕事を終わらせたシグルドも帰ってくる。最近人材がようやく育ち帰ってくる余裕が出来てきたらしい。
彼もまた帰った瞬間マリアリールの元に駆け寄りすぐさま抱き上げる。これを双子は不本意ながら容認している。疲れた心身に天使の笑顔が一番の薬だという事を双子が一番理解しているからだ。
「ただいまマリア。あぁ今日もなんて可愛らしいんだ俺の天使は。誰にも見せずに腕の中に囲ってしまおうか」
などと本気か冗談か分からない事を言い出し、アベルがマリアリールを奪い返して応接間までそのまま連れて行く。
この光景も見慣れたもので、使用にたちは微笑ましく見守っているのだった。
人は衝撃を受けた時、『雷に打たれたような』と表現する事がある。要するにそれほど強い刺激を脳が受けたという事なのだ。
5歳の誕生日を迎え盛大に祝われてベッドに入ったマリアリールもまた、0時を過ぎたその瞬間に雷を受けたような強い刺激を脳に感じていた。
(・・・あれ?何この記憶?まさか、前世!?)
もちろんその隙間にマリアリールを愛でる事も忘れない。さり気なく妹の話を振ろうと奮闘するアルフレッドを何とかいなしながら忙しい日々を送っていた。
一方マリアリールは5歳、デビューの年齢となっていた。まだまだ幼くまろい頬は桃色に染まり、柔らかな唇もぽってりとピンクに色づいている。
周りから蝶よ花よ妖精よと可愛がられまくった割にマリアリールは真っ直ぐな性根のまま清らかな優しい少女へと育っていた。
「おかえりなさい、カインお兄様アベルお兄様」
玄関ホールで使用人たちと共に双子を出迎えるのはマリアリールの大切な日課であった。
王宮内でねっとりとした少女たちの視線に晒されていた双子の唯一の癒やし。それがこのマリアリールの輝く笑顔なのである。
双子はてててと駆け寄ってきたマリアリールの愛らしさに思わず頬が緩む。まずはカインがマリアリールを抱き上げて柔らかで滑らかな頬にキスをする。そのままアベルに交代し、カインとは反対側の頬にキスをする。
以前であれば、擽ったそうに身を捩りながらも嬉しそうに双子へとお返しのキスを頬に贈っていたマリアリールであったが、恥じらいというものを覚えてからは頬をじわりと赤く染めてモジモジするようになった。
その様子が余りにも可愛らしくて双子は何回もマリアリールにキスを贈りちょっと嫌がるまで抱き上げたままでいるのだった。
今日はマリアリールの5歳の誕生日である。その為死ぬ気で仕事を終わらせたシグルドも帰ってくる。最近人材がようやく育ち帰ってくる余裕が出来てきたらしい。
彼もまた帰った瞬間マリアリールの元に駆け寄りすぐさま抱き上げる。これを双子は不本意ながら容認している。疲れた心身に天使の笑顔が一番の薬だという事を双子が一番理解しているからだ。
「ただいまマリア。あぁ今日もなんて可愛らしいんだ俺の天使は。誰にも見せずに腕の中に囲ってしまおうか」
などと本気か冗談か分からない事を言い出し、アベルがマリアリールを奪い返して応接間までそのまま連れて行く。
この光景も見慣れたもので、使用にたちは微笑ましく見守っているのだった。
人は衝撃を受けた時、『雷に打たれたような』と表現する事がある。要するにそれほど強い刺激を脳が受けたという事なのだ。
5歳の誕生日を迎え盛大に祝われてベッドに入ったマリアリールもまた、0時を過ぎたその瞬間に雷を受けたような強い刺激を脳に感じていた。
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