18 / 61
17
しおりを挟む
「えっと・・・何かいけなかった?」
天然でホワッとしているサラだが、空気が読める事もある。何か良くない状況になっているようだ、と感じた。そうだねぇ、とルークは宙を見上げる。段々と不安になってきてルークの服の裾をちょっとだけ摘む。
その手を優しくルークが包む。自分の事であったならサラもこんなに簡単に不安になったりはしない。これでも元々は公爵家令嬢だ。それなりに胆力はある。
だが、それが自分の可愛い子供の事となると話は全く変わってくる。どこの親だってそうだ。いつでも子供を守りたいと思っているのだから。
「君が悪い訳じゃないよ大丈夫。双子とシグルドにも話を通して様子見、かな」
「ほんとに大丈夫?」
「だいじょーぶ。僕たちに任せて。ね?」
「うん・・・」
「まだ婚約できる年齢じゃなかったのが幸なのか不幸なのか・・・。愛らしすぎるのも問題だねぇ」
「マリアは天使のようだものね」
「ふふ。君も大変だったね。皆で必死に護ったもんさ」
「まぁ」
夫婦で甘い雰囲気になってきたところで王宮に行っていた双子が帰ったという知らせが執事から入る。
名残惜しくサラの額や頬にキスを贈りながら玄関ホールへ向かった。
「いえ、今日はアルフ殿下には会いませんでした」
「今日はシグルド父上に付いていただけだし、そういう日は会いにはいかないけど」
双子曰く、今日はもしかしたら城に殿下は居なかったかも知れないとの事。ならばやはり双子の友人とやらは王太子なのだろうか。
ルークが黙り込んでしまった為、双子は嫌な予感がしていた。王太子の不在を確認するなんて・・・まさか?と顔が青くなる。
「ルーク父上、何かあったのですか?」
恐る恐るカインが尋ねるとルークは実はね、とサラから貰った報告をそのまま双子に伝える。
マリアリールに会ったかも知れない、アルという名の少年。双子の友人だというその少年の事。
「俺達と同年代で、『アル』という愛称の男か」
「ずいぶん大きな馬車だって話なら上位貴族なのは間違いないかもね。確かにそれだけ聞くとアルフ殿下が怪しいけど」
もしそうだと仮定するとしてもどうだろうか?マリアリールはまだ2歳。アルフレッドが出会ったところで愛だの恋だのという感情が芽生えるには幼すぎるような気もする。
今はまだ純粋で清らかで愛らしくとも、そのまま成長する可能性は高くないはずだ。何なら双子もルークもたぶんシグルドだってそんな期待はしていない。
ただ健やかに大きくなってくれたら良いと思っているし、どんな令嬢に成長しても愛していける自信がある。
だがアルフレッドは違うだろう。家族でもないし何より彼はこの間のパーティーで会った少女たちに辟易していたはずだ。
「何にせよ、今後のマリア次第だね。今は特に動く必要はないだろう。心の準備だけはしておこう。ね」
全てはマリアリールがどのように育つか。それに掛かっているように思えた。
天然でホワッとしているサラだが、空気が読める事もある。何か良くない状況になっているようだ、と感じた。そうだねぇ、とルークは宙を見上げる。段々と不安になってきてルークの服の裾をちょっとだけ摘む。
その手を優しくルークが包む。自分の事であったならサラもこんなに簡単に不安になったりはしない。これでも元々は公爵家令嬢だ。それなりに胆力はある。
だが、それが自分の可愛い子供の事となると話は全く変わってくる。どこの親だってそうだ。いつでも子供を守りたいと思っているのだから。
「君が悪い訳じゃないよ大丈夫。双子とシグルドにも話を通して様子見、かな」
「ほんとに大丈夫?」
「だいじょーぶ。僕たちに任せて。ね?」
「うん・・・」
「まだ婚約できる年齢じゃなかったのが幸なのか不幸なのか・・・。愛らしすぎるのも問題だねぇ」
「マリアは天使のようだものね」
「ふふ。君も大変だったね。皆で必死に護ったもんさ」
「まぁ」
夫婦で甘い雰囲気になってきたところで王宮に行っていた双子が帰ったという知らせが執事から入る。
名残惜しくサラの額や頬にキスを贈りながら玄関ホールへ向かった。
「いえ、今日はアルフ殿下には会いませんでした」
「今日はシグルド父上に付いていただけだし、そういう日は会いにはいかないけど」
双子曰く、今日はもしかしたら城に殿下は居なかったかも知れないとの事。ならばやはり双子の友人とやらは王太子なのだろうか。
ルークが黙り込んでしまった為、双子は嫌な予感がしていた。王太子の不在を確認するなんて・・・まさか?と顔が青くなる。
「ルーク父上、何かあったのですか?」
恐る恐るカインが尋ねるとルークは実はね、とサラから貰った報告をそのまま双子に伝える。
マリアリールに会ったかも知れない、アルという名の少年。双子の友人だというその少年の事。
「俺達と同年代で、『アル』という愛称の男か」
「ずいぶん大きな馬車だって話なら上位貴族なのは間違いないかもね。確かにそれだけ聞くとアルフ殿下が怪しいけど」
もしそうだと仮定するとしてもどうだろうか?マリアリールはまだ2歳。アルフレッドが出会ったところで愛だの恋だのという感情が芽生えるには幼すぎるような気もする。
今はまだ純粋で清らかで愛らしくとも、そのまま成長する可能性は高くないはずだ。何なら双子もルークもたぶんシグルドだってそんな期待はしていない。
ただ健やかに大きくなってくれたら良いと思っているし、どんな令嬢に成長しても愛していける自信がある。
だがアルフレッドは違うだろう。家族でもないし何より彼はこの間のパーティーで会った少女たちに辟易していたはずだ。
「何にせよ、今後のマリア次第だね。今は特に動く必要はないだろう。心の準備だけはしておこう。ね」
全てはマリアリールがどのように育つか。それに掛かっているように思えた。
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる