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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*九十八・暴走・決着と、これからーー
しおりを挟む戦斧は、自身が花梨より弱いことはとうの昔に理解が出来ていた。
ある意味、逃げることも正解だ。
いや昔なら、そんなことは考えずに逃げなかっただろう。
だが今の選択は、昔と大きく意味が違う。
だが力が足りない。
なら、どうするべきか?
戦斧は腹の底から叫んだ。
「本当は隠れているんだろう! この大会に参加したんだ! それなりに腕に覚えはあるんだろうっ! 女子供が頑張っているんだ、簡単に逃げられる訳はないよなぁーー!」
隠れていた人達がぞろぞろと姿を現す。
戦斧は再び叫ぶ。
「お前らのありったけの魔力をコイツらに集めろ! 根性を見せてみろっ!」
戦斧の考えを察して、早苗が続く。
「皆! わたしには水属性を、ロイ君には火属性を集めて!」
花梨が叫び、
「待って!」
早苗とロイに魔力を集めようする皆の動きを止めて、反論する。
「無理だよ。いくらなんでも魔力量が多すぎるよっ」
小春と咲希は黒龍の猛攻をくい止め、動きを止めた周りの皆も加勢をする。
周りの人達は、闇の竜を見たとたん逃げ隠れしたのを、情けないと思った。
だが。
俺達だってやれる! あの竜を放置したままにするべきではない。女子供が頑張っているんだ。ほとんどの人達が戦斧の気合いに触発されていた。
そんな中、早苗は静かに笑う。
「確かにそうかもね。でもそこに、ちょっとした潤滑油を混ぜたは場合はどうなるかしら? そういうことでしょう戦斧さん」
戦斧はガハハッと笑う。
「察しがいいじゃねぇか、そういうことだよ」
けれども花梨は素直に呑めない。
「待って、戦斧さん大丈夫なの? わたしや小春ちゃんですら普通なら無理な量なんだよ?」
「やるしかねぇんだよ。俺達がこう話している間も、あの竜の猛攻をくい止めている皆がいる。迷っている暇はねぇんだよ」
花梨は辺りを見回すと、ほんの数秒しかたってないのに皆がボロボロの状態だった。
もし闇の竜意識がしっかりしていたのなら、その気だったのなら、殺気を向けられた蓮も皆も一瞬で終わっていたはずだ。
それともう一つ。
小春が闇の竜の黒炎を防いだり、牙や爪を受け止めたりしているからだ。
戦斧は分かっていた。もしそれが自身なら一瞬で沈んでいたことも。独りならどうしようもなかったことも。
戦斧は怖かった。
昔より、臆病者になったのかもしれない。
だが昔の馬鹿な自分より、今の方がはるかにマシだ。
怖いが、前へ進むしかない。
「花梨から月属性をもらったんだ。花梨の月属性は特別製だろ! だから、俺なら絶対に大丈夫だ! 心配なんかするんじゃーね!」
小春はその案を呑み、
「分かったよ、戦斧さん。わたしが最大出力で竜の動きを止めるから、」
叫び、
「皆は、早苗さんに水属性を、ロイさんに火属性をお願い!」
最大出力で、花梨や皆を包み込むように結界を展開する。
皆は自身の水属性を早苗へ。火属性をロイへ。
早苗とロイは両手を上げ、それぞれその頭上に太陽のような玉を作り上げた。
花梨も両手を上げ、自身の異質な魔力で太陽の玉を作り上げて。
戦斧も月属性の太陽を作り上げた。
それらの太陽を消そうと闇の竜は7メートルを越える黒炎を吐くが、小春がさらに結界を強めた。
「土壇場で成長したわたしの全力全開の魔力だから、そう簡単には破れないよ。んで、そのまま結界を縮小してアイツの動きを封じるから一発で決めて」
そう宣言したが、黒炎の衝撃と熱さは、小春を一瞬でギリギリまで追いつめた。
しびれと熱さが全身を襲う。ちょっとでも気と魔力を抜いたら、全身を焼きつくしそうな程の威力。もし闇の竜が余力を残していたのなら、全力を受けきるのは不可能だろう。
小春は、闇の竜を囲むように結界を縮小。身体の奥底から限界以上の魔力を絞り出して、結界へ注ぎ込んでいく。
闇の竜は黒炎を吐いて足掻く。
一瞬で結界は黒く染まり、ひびが走り、今にも焼け崩れ落ちそうな威力がのしかかる。
それでも小春は耐える。縮小すると同時に、結界の密度も上げていく。
早苗とロイと花梨と戦斧は、四つの太陽を一つに合わせると、それは蒼白い輝きを放って一直線に突き進み。
小春は結界を解除。
蒼白い光は、黒龍へ巨大な風穴をあけた。
元もとが魔力のかたまりだった闇の竜は、その身が黒い靄へと変わり消滅する。
ーー心身ボロボロな周りの皆がその場から去った頃。
花梨は気を失っている蓮へゆっくりと歩み寄って。
早苗は自身の身の丈程ある氷の巨大ハリセンを一瞬にて形成。地を一蹴りして可能な限りのスピードで、花梨との距離をつめその脳天へ一気に氷の巨大ハリセンを振り落とした。
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