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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*九十七・暴走・天界人の血
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蓮の眼は赤く染まり、奥底に封印されていた天界人の血を呼び覚まして。
咲希の闇属性はその魔力を喰らって。
蓮は意識を失った。
聖属性を喰らった闇属性は暴走。闇属性は、体長12メートルを越える黒く光輝く竜となり。
その殺気を蓮へと向けた。
花梨や早苗、ロイとかは、咲希の闇属性の存在に気付いていたが、蓮の天界人の血にはまったく気付けなかった。
それ程までに蓮の天界人の属性は、身体の奥底に封印されていたのだ。
その属性を喰らった闇属性が今の姿だ。
四本の足で大地を踏みしめて、その巨体を覆いつくせそうな翼を一振りする。
圧倒的な威圧感に、早苗とロイは決心してそれぞれ赤い魔法陣を描いて、
「「魔法陣にとおすは、我の魔力。魔力よ、我の封印を解け」」
そう詠唱して、封印を解く。
早苗とロイの耳は尖り、目測1メートル猫のような白い尻尾が生えてきた。眼は赤く変色する。
ロイは蓮を見据える。
「幼い子を守りながらじゃ、キツいだろうからな。もう一段階ギアを上げるか」
ロイはもう一度、赤い魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、我の魔力。魔力よ、さらなる封印を解け」
詠唱。
「それじゃわたしも」と、早苗も続いて魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、我の魔力。魔力よ、さらなる封印を解け」
詠唱。
ロイと早苗。さらに変化したその二人の姿は、頭に猫耳だった。
二人のさらなる封印を解いた魔力に一瞬だけ、ピクンっと反応する黒く光輝く竜。けれども闇の龍は、意識をすぐに蓮へと戻して。
蓮を目掛けて、直径7メートルを越える球状の黒炎を吐いた。
それに最初の反応が出来たのは、蓮の一番近くにいたロイだ。
ロイは、火属性の刃渡り2メートルの剣を瞬時に形成。蓮の前に出て、さらに一歩踏み出して巨大な黒炎を一刀両断。
小春は異質なナイフを形成。後ろに流れた二つのうち一つの黒炎を無数に切りきざみ。
早苗も、氷のナイフでもう一方の黒炎を無数に切りきざみ。
黒炎を完全に消滅させた。
小春はいつも以上手応えに、? となって。自身の尻尾を確認するとさらに一本増えて、計三本となっていた。
小春はニヤリと笑みを浮かべる。
「もしかしてこれって、土壇場の成長というヤツかな?」
どう? 凄いでしょうと言わないばかりに、小春は胸を張るがーーロイは、
「ああ凄いよ、お前は。さすがは、超能天気な異星人だな」
その台詞に小春は『もうっ、ロイ君ふたこと多いよ』と返したかったが、それを闇の竜が許さない。
闇の竜が咆哮をあげ、直径3メートルを越える球状の黒炎を乱れ吐く。
花梨は異質な魔力のナイフを形成。
早苗は瞬時に、氷のナイフを伸ばして刃渡り2メートルの氷の剣へ。
小春は、形成していた異質な魔力のナイフで。
ロイは、形成していた刃渡り2メートルの火属性の剣で。
それぞれ闇の竜の火炎を、無数に切りきざみ相殺する。
切り刻んだその手に、しびれが残る程の威力の黒炎を。
花梨は一瞬だけ、意識を失なっている蓮へ視線を向ける。
「こりゃ、ちょっとヤバイかもね」
「あら。花梨にしては、珍しい弱気な発言じゃない」
「そりゃ、たまにはね。だけど最後まで足掻くよ」
花梨は蒼い陣を描いて、
「高めるは風が起こす気流。集え、我の魔力のもとへ」
詠唱。人差し指から、3メートルを越える突風を放って自身もせまり。
巨大で蒼い突風は、前足の鍵爪の一振りで払われた。
一瞬の間。
そのがら空きとなった足の付け根へ、蒼いナイフを振るう。
続けざま何度も巨大な蒼い突風を放つが、闇の竜の様子からしてダメージはゼロに近い。
花梨の全力がまったく歯がたたない。
花梨の実力は、自身も封印を解く必要はあるが、封印を解いた西尾お兄ちゃんや早苗ともある程度はやりあえる程だ。
あの竜は、おそらく西尾お兄ちゃんや早苗さんより強い。そんな相手にわたしが勝てるはずなんてーー
ましてや相手の意識はない。
異世界の魔力を得てから今までにない経験に、初めて花梨へ絶望の影が差し出したーー
「花梨、借りを返す時がきたようだな」
巨大な斧を背負って簡易的な胸当てを身に付けた戦斧が現れた。
戦斧は花梨や小春達の戦う姿を見て、どうしたら良いか必死に考えていた。
左右の人差し指。右には火鳥の指輪を、左には水鳥の指輪を身に付けている。
戦斧はその二つの火と水属性を、月属性のみで合成する。
もちろん普通なら無理だ。
それが可能だったのは、元もとは花梨の月属性だったからだ。
花梨が何度も月属性を使って反発した属性を合成した結果。順応して異世界の魔力だけでもそれが可能になった。
実はその時に、花梨の月属性自体も反発する属性の魔力に順応していた。異世界の魔力も、彼女の月属性を変化させていたのだ。
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