魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*九十四・ギルド巡礼の地下の奥底に封印されしはずの魔族・ランと小春の決着

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 ランは思わず吹き出して笑う。

「普通は小技から大技につなげるだろう。大技もやる前に宣言しないだろう」

 小春は事前に服の内側に隠し持っていた切り的な超圧縮していた魔力のたまを取り出し、右の人指し指と親指でつかんでニヤリと笑う。

「まあそうかもだけど。コレ、なんだと思う?」

「隕石か何かか?」

「はずれ」

 ランは笑みには笑みで返す。

「そうか。それは分からんが。それならコレは、何か分かるか?」

 ランも同じように隠し持っていた圧縮に圧縮を重ねた魔力のかたまりである闇属性の魔力の珠を取り出して、右の人指し指と親指でつかんだ。
 小春は、わたしの切り札と似たようなものだと思った。
 魔力は外にもれないように圧縮されているから感じられないが、間違いはないはずだ。

「魔力を圧縮したかたまり、ソレ?」

「ほう。よく分かったな」

「わたしのも、似たようなもんだからね。というか、同じもんだから。まあ試してみたら分かると思うよ。どちらが強いかって」

「ソレもそうだな」

 小春とランは、互いに笑みを強めて圧縮された自身の珠を握りつぶしその魔力を体内にとり入れて地を蹴った。
 瞬間。爆発的に高まるランの魔力に内心ちょっとびびりはしたが、本能は小春の動きを止めない。

 一瞬にして距離は縮まり。

 ランは刃先をさらに70センチ伸ばして、約1メートルのナイフを振るって。
 刃先を伸ばすことを確信していた小春は、同じ距離から振るったナイフをそのものを消した。

 体勢こそほとんど崩れなかったが、ランはタイミングをずらされ。
 ランのみぞおちへ小春は右の手で掌低を放った。

 ランの身体はくの字に折れた。
 小春はその右手に再び数センチの蒼い刃を放出して振るって、ランの喉元寸前で止めた。

「この勝負、我の負けだな。まさか魔力ゼロの異星人に負けるとは思わなかったぞ」

 小春は蒼い刃を消して、プルプルと震えて思いきり叫ぶ。

「だから、違う~~っ!」

 周りにいる逃げなかった人達は、今までの闘いぶりと、小春の未知の技に動揺して騒ぎだして。
 異星人とか妖怪だろうとか、超能力者、霊能力者とか様ざまな噂が飛びかったが、やがてほとんどの人が小春の実力を認めた。

 小春と闘った赤い竜。ラン以外の白と青の二人の竜も、小春の実力を認めざるを得えなかった。

 次の順番である白い竜は小春から、咲希へ視線を移す。

「次はわたしの番だな」

「そうですね。けど残念ながら私の実力は、能天気な小春ちゃんより下です。だから、魔道具を使います。それぐらい良いですよね。その代わり、マナポーションサイダー飲みますか? 魔力が回復しますよ」

「ああ、魔道具は問題ない……だけどサイダーはいらない……まずそうだからな」

「それなら月の指輪と、地竜のナイフと水竜のナイフを遠慮なく使わせていただきます……意外とマナポーションサイダー美味しいんですよ」

 ランはサイダーを無視する。

「……反発する属性の魔道具を、使い分けられる実力者か?」

 何故か小春が答える。

「使い分けられないけど、それなりに使えるはずだよね。そうだよね、能天気な咲希さん」
「小春さんには負けますよ、能天気さも実力も」

「ちょっと待ったあ~~。能天気はいらないーー」
 咲希は、冷静に小春をさえぎった。
「けれども事実です」

 花梨はいきなり会話に割り込んで、「咲希ちゃん小春ちゃん、そういうのを目くそが目くそを笑うって言うんだよ」

 小春から、
「それを言うなら、目くそが鼻くそを笑うでしょう」
 咲希から、
「それを言うなら、目くそが鼻くそを笑うですよ」
 連続でダメージの大きい反撃をくらってしまった。

 小春と咲希は、ひとしきり声をだして笑った後。
 小春は声をかけた。
「んじゃ、頑張ってね」

 咲希は、巨大な白い竜をまっすぐに見据える。

「お待たせして、すみません。次を再開しましょうか。というかマナポーションサイダー、本当にいらないです?」

「だから、いらないと言ってるだろう能天気者」

「……違います」

 咲希は冷静に返したが、心の中では違った。
 
 白い竜はその表情を楽しそうに眺めながら若い人の姿になった。
 腰まで伸ばした白い髪と、それを纏めた巨大な白いリボン。背中に背負ったように見える巨大すぎる白いリボンと、白いスーツ姿がとっても印象的な。

 咲希は月の指輪と地竜のナイフと水竜のナイフと、自身の異質な魔力を合成。その魔力をその二本のナイフへ纏わせ、自身の背中へ蒼白い翼を作り上げた。

「わたしは咲希です」

「わたしはルンルンだ。行くぞ」

「似合わないリボンと変な名前ですね」

 咲希としては、能天気娘と言われた反撃のつもりでそう言ったが、

「私が気にしている名前を。それに白いリボンは私のお気に入りだ。けれども能天気娘だから仕方ないか。能天気だからな」

 カウンターをくらってしまった。
 さらには反撃の言葉を与えないようにルンルンは、一瞬にして距離をつめ、闇属性を纏ったパンチや蹴りの連続攻撃を放つ。

 ルンルンとしては、自身の名前をかなり気にしていた。加えて、相手は無茶な合成しているとしか思えない。ちょっと本気をだしたら、耐えられないはず。
 だからこその闇属性を纏った連続攻撃だった。ルンルンとこれ以上は馬鹿にさせない意味合いも含んだ。

 けれども咲希はそれを受け止め、時には受け流して。互いの動きが止まる一瞬の間を見逃さず、きちんと反撃の台詞を返す。

「わたしは、能天気ではありません。ルンルンさん。ちょっとぐらいーーいや、めちゃ変な趣味と変な名前ですけど、それがなんだって言うんですか?」

「めちゃと訂正するなウルトラ能天気娘」

 咲希は顔を真っ赤にする。

「な、なんでウルトラ能天気娘って、パワーアップしているんですか!? こうなったら、さらに本気を出してあげますよ」

 右人差し指で宙に蒼い陣を描いて、

「高めるは冷気の渦。集え、我の魔力のもとへ」

 言霊をのせて。反発する属性同士を合成した魔力を付加し、5メートルを越える巨大な冷気の渦を放つ。
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