94 / 99
第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*九十四・ギルド巡礼の地下の奥底に封印されしはずの魔族・ランと小春の決着
しおりを挟むランは思わず吹き出して笑う。
「普通は小技から大技につなげるだろう。大技もやる前に宣言しないだろう」
小春は事前に服の内側に隠し持っていた切り的な超圧縮していた魔力の珠を取り出し、右の人指し指と親指でつかんでニヤリと笑う。
「まあそうかもだけど。コレ、なんだと思う?」
「隕石か何かか?」
「はずれ」
ランは笑みには笑みで返す。
「そうか。それは分からんが。それならコレは、何か分かるか?」
ランも同じように隠し持っていた圧縮に圧縮を重ねた魔力のかたまりである闇属性の魔力の珠を取り出して、右の人指し指と親指でつかんだ。
小春は、わたしの切り札と似たようなものだと思った。
魔力は外にもれないように圧縮されているから感じられないが、間違いはないはずだ。
「魔力を圧縮したかたまり、ソレ?」
「ほう。よく分かったな」
「わたしのも、似たようなもんだからね。というか、同じもんだから。まあ試してみたら分かると思うよ。どちらが強いかって」
「ソレもそうだな」
小春とランは、互いに笑みを強めて圧縮された自身の珠を握りつぶしその魔力を体内にとり入れて地を蹴った。
瞬間。爆発的に高まるランの魔力に内心ちょっとびびりはしたが、本能は小春の動きを止めない。
一瞬にして距離は縮まり。
ランは刃先をさらに70センチ伸ばして、約1メートルのナイフを振るって。
刃先を伸ばすことを確信していた小春は、同じ距離から振るったナイフをそのものを消した。
体勢こそほとんど崩れなかったが、ランはタイミングをずらされ。
ランのみぞおちへ小春は右の手で掌低を放った。
ランの身体はくの字に折れた。
小春はその右手に再び数センチの蒼い刃を放出して振るって、ランの喉元寸前で止めた。
「この勝負、我の負けだな。まさか魔力ゼロの異星人に負けるとは思わなかったぞ」
小春は蒼い刃を消して、プルプルと震えて思いきり叫ぶ。
「だから、違う~~っ!」
周りにいる逃げなかった人達は、今までの闘いぶりと、小春の未知の技に動揺して騒ぎだして。
異星人とか妖怪だろうとか、超能力者、霊能力者とか様ざまな噂が飛びかったが、やがてほとんどの人が小春の実力を認めた。
小春と闘った赤い竜。ラン以外の白と青の二人の竜も、小春の実力を認めざるを得えなかった。
次の順番である白い竜は小春から、咲希へ視線を移す。
「次はわたしの番だな」
「そうですね。けど残念ながら私の実力は、能天気な小春ちゃんより下です。だから、魔道具を使います。それぐらい良いですよね。その代わり、マナポーションサイダー飲みますか? 魔力が回復しますよ」
「ああ、魔道具は問題ない……だけどサイダーはいらない……まずそうだからな」
「それなら月の指輪と、地竜のナイフと水竜のナイフを遠慮なく使わせていただきます……意外とマナポーションサイダー美味しいんですよ」
ランはサイダーを無視する。
「……反発する属性の魔道具を、使い分けられる実力者か?」
何故か小春が答える。
「使い分けられないけど、それなりに使えるはずだよね。そうだよね、能天気な咲希さん」
「小春さんには負けますよ、能天気さも実力も」
「ちょっと待ったあ~~。能天気はいらないーー」
咲希は、冷静に小春をさえぎった。
「けれども事実です」
花梨はいきなり会話に割り込んで、「咲希ちゃん小春ちゃん、そういうのを目くそが目くそを笑うって言うんだよ」
小春から、
「それを言うなら、目くそが鼻くそを笑うでしょう」
咲希から、
「それを言うなら、目くそが鼻くそを笑うですよ」
連続でダメージの大きい反撃をくらってしまった。
小春と咲希は、ひとしきり声をだして笑った後。
小春は声をかけた。
「んじゃ、頑張ってね」
咲希は、巨大な白い竜をまっすぐに見据える。
「お待たせして、すみません。次を再開しましょうか。というかマナポーションサイダー、本当にいらないです?」
「だから、いらないと言ってるだろう能天気者」
「……違います」
咲希は冷静に返したが、心の中では違った。
白い竜はその表情を楽しそうに眺めながら若い人の姿になった。
腰まで伸ばした白い髪と、それを纏めた巨大な白いリボン。背中に背負ったように見える巨大すぎる白いリボンと、白いスーツ姿がとっても印象的な。
咲希は月の指輪と地竜のナイフと水竜のナイフと、自身の異質な魔力を合成。その魔力をその二本のナイフへ纏わせ、自身の背中へ蒼白い翼を作り上げた。
「わたしは咲希です」
「わたしはルンルンだ。行くぞ」
「似合わないリボンと変な名前ですね」
咲希としては、能天気娘と言われた反撃のつもりでそう言ったが、
「私が気にしている名前を。それに白いリボンは私のお気に入りだ。けれども能天気娘だから仕方ないか。能天気だからな」
カウンターをくらってしまった。
さらには反撃の言葉を与えないようにルンルンは、一瞬にして距離をつめ、闇属性を纏ったパンチや蹴りの連続攻撃を放つ。
ルンルンとしては、自身の名前をかなり気にしていた。加えて、相手は無茶な合成しているとしか思えない。ちょっと本気をだしたら、耐えられないはず。
だからこその闇属性を纏った連続攻撃だった。ルンルンとこれ以上は馬鹿にさせない意味合いも含んだ。
けれども咲希はそれを受け止め、時には受け流して。互いの動きが止まる一瞬の間を見逃さず、きちんと反撃の台詞を返す。
「わたしは、能天気ではありません。ルンルンさん。ちょっとぐらいーーいや、めちゃ変な趣味と変な名前ですけど、それがなんだって言うんですか?」
「めちゃと訂正するなウルトラ能天気娘」
咲希は顔を真っ赤にする。
「な、なんでウルトラ能天気娘って、パワーアップしているんですか!? こうなったら、さらに本気を出してあげますよ」
右人差し指で宙に蒼い陣を描いて、
「高めるは冷気の渦。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせて。反発する属性同士を合成した魔力を付加し、5メートルを越える巨大な冷気の渦を放つ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました
平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。
ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
【完結】世界一無知のリュールジスは秘密が多い
三ツ三
ファンタジー
突如地底深くより出現した結晶異物体。
無差別に人々を襲い続ける存在。
「アンダーズ」
人類はアンダーズの圧倒的な戦力により大陸の半分以上を受け渡すことを余儀なくされた。
物言わぬ結晶体に人類が今もなお抵抗出来ているのは人間の体内にある「魔力」を利用することで稼働する。
対アンダーズ砕鋼器具「ブレイカー」
腰部に装着することで内に秘められている「魔力」を具現化する事が可能となった人類の切り札。
「魔力」を持ち「ブレイカー」を扱う事が出来る限られた者達。
「リベリィ」
彼等がアンダーズを倒す事が出来る唯一の希望であった。
そんな世界で「リュールジス」は一人旅を続けていた。
「探し物・・・」
混沌とした各地を身一つで歩き続けたが、一通の手紙が足を止めさせ彼の旅を終わらせたのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる