魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*九十三・ギルド巡礼の地下の奥底に封印されしはずの魔族・ランと小春

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「そういう概念を持った人はそれなりにいるのだから、我が知っていても不思議じゃないはずだ。異界の隣にあるこの世界は、元もと魔法のない異世界からの転移者が発展させたのだから。異世界の認識もある程度は広まっている。それに、魔力ゼロのその術をどう説明するつもりだ」

 本当のことを言っても、すぐにはピンとこないだろうし。早苗の言うとおりに、感覚的には絵空事に近いだろう。

 だけど小春は上手い言葉が出てこなかった。

「一言で言うなら、魔法」

「そうか。なら訊くが、その魔力の属性はなんだ?」

「ないよ。わたしはの魔力は属性なんて存在しないから」

「そこまで言うのなら、御希望どおり我が相手になろう。後悔するなよ小娘」

 赤い竜と小春。という形式が出来上がった。

 白い竜は視線を、早苗へに移す。

「そう決まったのなら、俺がとある種族の相手になろう」

「わたしは闘わないわよ。咲希……アナタが戦いなさい」

 咲希は静かに即答する。

「分かりました」

「そういうことで納得して欲しいんだけど」

 白い竜は、「ああ一応、納得することにする」と答えて。

 青い竜は花梨に視線を移す。

「……ということはボクの相手は必然的に決まるね」

 魔力ゼロと魔族の三対三。
 早苗は問う。

「これで、一人ひとり相手が決まった訳だけど、順番に三回闘う?」
 赤い竜はそれを呑む。
「順番に三回闘うほうがよかろう。我もそっちのほうが手加減しやすいからな。長い間封印されていたせいか、我が自身で言うのも変かもしれないが、ずいぶん丸くなったものだな」

 早苗はうっすらと笑みを浮かべ、
「それは、成長した証じゃないかしら」
 赤い竜も笑みを含んだ声で返す。
「面白いことを言うな。我らは、只、証明したいだけだ」

 早苗は抑揚を抑えた声で返して、
「そうかしら?」
「そうだ。闘う順番はそちらにまかせるぞ」
 ちょっと悩んで指差し呼称で答える。
「それなら、小春ちゃん、咲希、花梨の順番でどうかしら?」

 赤い竜は即答する。
「それで問題ない。さあ、勝負を始めようか」

 赤い竜はそう言うと身体が縮み、人の姿になる。
 背丈は、小春よりほんのちょっと高い程度。平均値に近い。髪は、赤いショートカットで。肌は赤みがかっており。顔は可愛い部類に入るだろう。
 紺の半袖、黒いデニムのキュロットのミニスカートと黒いストッキングを身に付けている。

 小春は意外そうに言う。
「もしかして男の娘?」
 赤い竜は即答する。
「違う。我は、正真正銘。れっきとした女だ」

 もしかして男の娘と答えたのは、ちょっとだけ小春の趣味だったりする訳だが、今はそんなことはどうでもよかったりする。
 というより赤い竜は、魔力ゼロのいかにも能天気そうな娘の実力を知りたい。そしていい加減に展開を進めたい。

「我の名は、ラン。行くぞ」
「わたしの名前は、小春。受けてたつよランさん」

 ランは右手に闇属性を纏い、その人差し指で魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは闇の魔力。闇よ刃となれ」
 詠唱。
 それにすぐさま反応し、小春は蒼い陣を描いて、
「高めるは氷の刃。集え、我の魔力のもとへ」
 言霊をのせて。

 ランの右人差し指から、三日月のような黒い刃が放たれ。
 小春の右人差し指から、三日月のような氷の刃が放たれ。
 それらの刃はぶつかり合い、ドンっと鈍い音を響かせた。

 それなりに自信のあった一撃を完璧に相殺され、ランは水属性を感じないその術にさらに確信を強める。

「さすがは異星人だな」

「だから、違う~~ぅぅ」

 小春は突っ込まずにはいられず。
 ランは小春を異星人と信じて疑わず。

 小春は足に魔力を纏い、地を蹴り距離をつめ。
 ランは一瞬にして10メートルは宙に浮いて空へと。
 小春も宙に浮いて空へと追いかけ、ランと同じ高度で停止する。

「やっぱり、魔力ゼロでも空へと浮かび上がるか」

 自身の闘気と魔力を合わせて、小春は弓と矢を形成。
 ランはニヤリと笑い、言葉を続ける。

「今度は闘気術か。けれども、足りないな」

「本当にそう思う?」

「やっぱり闘気だけではない、けれども魔力でもない、何かがあるんだろなその自信は」

「だからそれは魔力だって」

 小春は、魔力と闘気の矢を魔力の弓につがえて放って。
 簡単にランは、それを右の手だけで凪ぎ払う。実際は、涙が出そうな程にしびれたがポーカーフェイスを保ったまま。

 そこまで器用でもなく、自身の実力と今の技の熟練度からしてほぼ意味のないと思った弓を消しさり、小春は今の高度からさらに上昇。さらに10メートルはある高さから、冷気の渦を纏ってランへせまり。
 ランは炎の渦を纏い。
 右拳同士がぶつかり合う。

 その確かな手応えにランは笑い。
 小春は静かに笑みを返す。

 二人は互いに1メートルずつ、計2メートルは距離をとった。

 小春は、30センチぐらいの魔力の蒼いナイフを形成。
 対してランも同じぐらいの長さの、闇と火属性の魔力の赤黒いナイフを形成する。

 再び二人はぶつかり合い。今度は、ナイフとナイフが交差する。
 空中で、時には地の上で。二人は距離をとってぶつかり合い。ナイフとナイフが何度も交差する。
 まだ、互いに傷らしい傷は見当たらない。

 小春はかるく息を吐き出した。

「そろそろ、あきてきちゃったね」

「我もそうだな」

「んじゃ、そろそろ大技いくね」
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