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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*九十ニ・ギルド巡礼の地下の奥底に封印されしはずの魔族・魔族と、とある種族の末裔
しおりを挟むそれぞれ10メートル以上はある巨体で、自身を包み込めそうな翼を持ち、四本の足で地面を踏みしめる赤と白と青い竜。
その中のひとりの赤い竜は、早苗とロイを見下ろした。
「その血の匂い。見つけたぞ。我を封印し、とある種族の末裔」
理解が追い付くはずのない出来事だが、早苗は冷静だ。
「……それで? わたしは、その末裔と関係はあるけど、アナタとなんの関係はないはずよ。それとも、わたしで恨みでも晴らして満足するつもり?」
「恨みは、ない……封印されて当然のことをやってきたのだから。そのことは理解している。我は、封印されたという事実が許せないのだ。魔族がその末裔に負けたという事実が。それを覆させねば」
「なるほどね。それで、封印はどうやって?」
赤い竜は、早苗から咲希へと視線を移す。
「そこの娘の散った闇属性が、我の闇属性に引き寄せられ。我の魔力に圧力をかけ我の封印を解いた。いや、封印を喰らったというべきか」
「何故、急に今、封印が?」
「それは我にも分からない。だが、その娘の散った闇属性に影響を与えた何かがあったのは間違いないはずだ」
早苗は、やはり異世界の魔力が原因だと確信する。
「なら封印に関しては心当たりはあるわ。只、アナタ達に説明しても理解というか納得というか、良く分からないでしょうけどね」
「なんとなくそうだろうとは思うが、我にも理解不可能な何かしらの力が働いているのだろうな。絵空事のような理解不可能な何かしらの……」
「いやに、物分かりがいいのね」
「我は、魔族がとある末裔に負けた事実だけを覆せれば満足だからな」
「そういうものなのね。けれども戦うのなら、現役でその種族はわたしとロイの二人しかいないのよ。三対二は、ちょっと卑怯じゃないかしら? 現役を抜かしたら別だけど」
「それもそうだな」
魔族を見た瞬間ほとんどの人達は逃げ出していたが、理性をもった魔族の声に花梨は安心もする。
「ほとんどの人達は逃げ出したけど……魔族って、語れ伝われているものとは、まったくの別物だね。それで封印される理由はなさそうだけど?」
「我は昔、本能のままに暴れまくっていたからだ。まっ、そうでない者も多いがな?」
花梨は提案する。
「わたしもそれなりに強いし。わたしを加えて三対三でどう?」
「冗談はよせ。我でも魔力をまったく感じないのだ。あの種族や魔族に、魔力ゼロの者が渡り合える訳がないだろう」
花梨の台詞を我慢に出来なくなり、火野は今の魔族の言葉を肯定する。
「確かにそのとおりだな。ある程度なら魔力なしでも強くなれるが、SSSランク、魔族や天界人の強さの壁には届かない」
近くにいた咲希は否定する。
「本当にそうだと思いますか。魔力はなくても強い人は、強いんです。精神や芯の強さもあるでしょうが強い人は強いんです」
その台詞に、三体の魔族が現れて逃げたした人も数人いたが、多くの人達は笑いを堪えきれない。
雷鳴の指輪を求めてここに来た人達は、実力にそれなりの自信があるからだろう。
魔力がないことを馬鹿にした声に、小春は我慢が出来なくなる。
「魔力ゼロだからといって、皆馬鹿にしすぎ。こうなったら、ロイちゃんのかわりにわたしが戦うよ。すべての封印を解除してね。ロイちゃんもそれで問題ないでしょう」
「ああ。問題ない」
ロイが即答し続けて疑問をぶつける。
「けれども、すべての封印って」
「わたしの魔力の封印を、すべて解くって意味だよ」
「やっぱりそうか」
火野は、? となり口をはさむ。
「さっぱり意味が分からないんだが」
小春はロベルト教師の台詞に応えるように宙に蒼い陣を描いて、
「高めるは、我の魔力そのもの。さらに高まれ我の魔力。駆け巡り、我の封印を解け。そして、さらなる封印を解け」
詠唱。
すると小春の耳は尖り、目測1メートル猫のような白い尻尾が二本生えてきた。
眼は蒼く変色。
その姿は、封印を解いた花梨にそっくりだ。違うのは、尻尾が一本多いことだけ。
赤い竜は口からはみ出る程に長い牙を震わせ「ふっ」と、息を吹き出してから静かに笑う。
「はったりは、よせ。我ですら魔力を感じないのだ。魔力なしで、我われと渡り合う? 冗談はよせ」
小春は真面目に答えた。
「冗談でも、はったりでもないよ」
赤い竜は内心ずいぶん丸くなったものだと思っていたが、小春の言動にイライラがつのる。
「それなら、現実を思い知るがよい」
スーッと息を吸い込み、辺りを包み込み燃やし尽くしそうな赤い炎を吐き出した。
想像するのは、あの種族二人に守られている情けない姿だ。
辺りを真っ赤に染めた炎が晴れると 自身の感覚と眼を、思わず疑う光景がそこにはあった。
魔力とも闘気とも違う、自身の知らない何かで形成されている二メートルはある円形の盾で、小春が自身の炎を防いでいたからだ。
火野も、雷鳴の指輪を求めて参加して魔力ゼロだと馬鹿に人達も、ロベルト教師も驚きの表情を隠せない。
小春は蒼い円形の盾を形成したまま宙に固定。盾からはなした右手は止まることなく。素早くその右人差し指で蒼い陣を描いて、
「高めるは冷気の渦。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせる。
冷気が渦となり踊るように襲うが、赤い竜は再び赤い炎を吐いて相殺。
いや。炎を消しても冷気の渦は残り、一瞬だけ赤い竜は氷付けにされた。
氷を割り振り払って、ひとり赤い竜は自己完結して納得する。
「魔力の欠片すら感じないのにその力。そうか宇宙人。いや、異星人だな。どうりで魔力を感じない訳だ」
小春は反応せずにはいられない。
「ちょっと待った~っ! なんで、魔族にも宇宙人や異星人という概念があるの?」
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