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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*九十一・日常と息抜き・咲希と火野
しおりを挟む「そうか」
火野はそっけなく返したが、絶対に魔族の血は関係していると思わずにはいられない。
考えそのものは理にかなっている。
けれども咲希は否定する。
「確かにわたしの身体には、魔族の血は流れていますが、それは関係してないはずです」
「そう思い込んでいるのなら、ちょっと面白いものを見せてあげるよ」
そう言うと火野は魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、我の魔力。魔力よ、我の血の封印を解け」
詠唱。
すると、眼だけが赤く変色。
続けて火野は身に付けている自身の短い黒髪と同色の小さな二つの髪飾りへ、それぞれ月属性を込めた。二つの髪飾りの中へそれぞれ収まっていた爪楊枝のような何かを引き抜いた。
それらは月属性を火と水属性のナイフとなる。
右の火のナイフは、その柄から月属性の魔力を纏わせて。
左のナイフにも、その柄から月属性を纏わせて。
それらを一つに合わせて、桜色の輝きを放つナイフを作り上げた。
前は、自身専用の魔道具・聖の指輪と闇の指輪を使っていたのに対して、今回は自身の月属性のみで反発する属性を合成。
自身に流れる人の血の力と。
自身に封印していた魔族と天界人の封印を解いた、血の力で。
咲希は驚きを隠せない。
「なんで火野さんは月属性のみで、そんなことが出来るです?」
「それはお前も同じだろう」
「確かにある意味、そうですが」
「僕の両親は、母が魔族と人のハーフ。父が天界人と人のハーフ。僕の身体の中には魔族と天界人、人の血が流れている。普段は負荷がキツいから、魔族と天界人の血は封印している」
「なるほど、そういうことですか。けれどもやっぱり魔族の血は関係してませんよ。何故なら花梨も反発する属性の魔道具さえあれば、アナタと同じことが可能だからです。わたしと違って月の指輪すら必要ありません」
「はぁ、ははは。お前らは、本当に規格外なヤツらだな」
「とりあえず、勝負を再開しましょうか」
咲希は合成した魔力でーー自身の背中へ蒼白い翼を作り上げた。
火野は魔力の質を感じとり、
「確かに、血の力を感じられないな」
笑みを浮かべて咲希の様子を見る。
咲希は蒼い魔法陣を宙に描いて、
「高めるは風の刃。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせる。
魔法陣を描いた咲希の右人差し指から風の刃が放つ。火野は桜色の輝きを放つナイフで風の刃を受け止めると、それは真っ二つに切り裂かれ後方へと消えた。
「今のは、風属性の魔法? それにボクの知らない魔法陣と詠唱? それに蒼い魔法陣?」
ほとんどの魔法陣を知っている火野が知らない魔法陣と詠唱。さらには風属性の魔力をまったく感じないのに、風属性の魔法。
内心驚きまくっている火野へ、咲希は口の片端を歪めた笑みを向ける。
「アナタが知らないのは、無理はないですよ」
「自身で作り上げたオリジナルか?」
「違いますよ」
「良くは分からないが、正体不明なその力を確かめてみるのも面白そうだ」
火野は桜色の軌跡を残して、咲希へとせまりナイフを振るう。
咲希は左右のナイフで、脳天めがけて振り落とされたその桜色のナイフを斜め下へそらす。
「やっぱりその術は、確かに反発する属性同士を合成しているようだな」
「受け流しただけですよ」
「それだけで、充分だ。普通のナイフや魔法だと、受け流すことすら不可能だからな。感心するよ」
「そうですか。おほめの言葉、ありがとうございます」
咲希は地を蹴り、翼をもはためかせて蒼白い軌跡を残してせまり、火野は桜色の軌跡を残してせまり、両者はぶつかり合い。地と空を舞って交差し、再びぶつかり合う。
確かな手応えに、火野は驚きの表情を隠しきれない。
「本当に魔力がゼロなのか? 何かしらの魔力を隠しているというオチじゃないだろうな」
「わたしは、魔力はまったく隠していませんよ」
そう告げられても、火野から答えがでるはずがなかった。
さらには、花梨は自身の力だけで反発する属性を合成が出来るという内容は火野を混乱させるだけだった。
ーー突如。
今までの流れからは何の脈絡も感知は出来ないがーーーー地面が大きく揺れて縦横無尽に割れたそこから、ギルド巡礼の地下の奥底に封印されていたはずの三体の魔族が姿を現した。
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