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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*八十一・ギルド・狐の眼、見学会・小春とカンナ
しおりを挟むそうだ。今、目が覚めたことにすればいいんだと思い付いて、Aランクは目を開けた。
その瞳に映るものは、
「お前! いったいなんて物で、ツンツンしているんだよ!」
カンナは可愛らしい猫なで声を発した。
「あのね、適当な物がなくて、ね。それに、この大剣めっちゃ切れ味いいんだよ」
「そんな物で俺を突っ付くな」
カンナは可愛らしくウインクをして続ける。
「だって仕方ないじゃない。面白そうだったんだもん」
「可愛らしく誤魔化そうとするな。お前、絶対に馬鹿だろう」
Aランクの台詞を、ほぼ無視するような可愛らしい声で続けるカンナ。
「あ、もしかして。トイレを掃除する時に使う、アレが良かった? あれなら、そんなに危険じゃないないし」
「違う意味で危険だよ。いや、手加減が分からなくなりそうで余計に恐ろしいわ」
「なるほど。その発想はなかった」
そんな二人のやり取りに小春は思わずプッと吹き出して笑う。
「ふっふ。ギルド狐の眼って結構、賑やかなところなんだね。SSSランクにも遠慮ない台詞をあびせるところとか。わたし、気に入っちゃった」
Aランクは、ちょっと複雑な表情を浮かべる。
「しょうがないだろう。SSSクラスでも、コイツ馬鹿なんだから。頭はそれなりに良いクセしてさ」
カンナは可愛らしい猫なで声で反論する。
「わたし、馬鹿じゃないよ。只、たまに欲望をちょっと抑えきれなくなることがあるだけだよ」
Aランクは腹の底から叫ぶ。
「その欲望を解放するから馬鹿なんだよ。そのろくでもない欲望を」
小春はニヤりと笑みを浮かべる。
「まあまあ。わたしこういう雰囲気好きだよ。それに、もし困ったことがあったなら、花梨やわたしが協力して上げるよ。封印された魔物関係とかね。わたしと花梨は強いからね。一応、わたしと花梨の師匠は西尾先輩だから」
花梨が肯定する。
「そうだよ」
カンナが疑問を投げかける。
「西尾先輩……もしかして、魔力ゼロでBランク上級止まりで有名な、あの西尾のことですか」
「そうだよ。西尾先輩って本当は強いんだよ。西尾先輩と互角な人って言ったら、わたしが知る限り早苗先輩ぐらいだもん」
カンナは? となる。
「もしかして早苗先輩ってあのSSSランクの中でもトップクラスの、二つ名が氷と風の狩人のあの人です?」
小春は即答する。
「そうだけど?」
「西尾さんって、魔力を隠していたんですか。口振りからして小春さんや花梨さんも」
小春は即答する。
「西尾先輩もわたし花梨も隠してないけど、強いのは事実だからね」
「確かに、わたしも隠してないかな」
カンナはあきれ顔になる。
「早苗さん、何か言ってくださいよ」
「わたしは、早苗さんという美少女じゃありませんよ。苗ですよ」
カンナはちょっと反応に困ったが続ける。
「それじゃ苗さん、SSSランクと魔力ゼロじゃ超えられない壁というのがあるのに。何か教えてやってくださいよ」
「わたしが思うに、カンナと小春の実力はほぼ互角。花梨も含めてね、その三人は。確かに西尾君は、SSSランクの実力はあるわね間違いなく」
カンナは確認する。
「花梨さんと小春さんは、魔力ゼロのはずですよね。魔力を隠してないですよね」
「わたしからも言うけれど。花梨と小春は、間違いなく魔力は隠してないわ。西尾君も普段からね」
「闘気術だけで、SSSランク……そんな馬鹿な。そういうことになりますよね?」
カンナの言葉を苗は否定する。
「ならないけど」
カンナは意味が分からなくなるばかりだ。
小春は意味深な笑みを浮かべる。
「わたしや花梨、西尾先輩はちょっと特殊だから、分からないのも仕方ないかも」
「分かりました。そこまで言うのなら、わたしと戦ってください。もちろん、ダメージ吸収用のペンダントはSSSランク用を準備させます。最初から全力でいきますから、覚悟してください小春ちゃん」
小春はニヤりと笑みを浮かべたまま、元気よく返事をする。
「了解! けど、さっきの試合では使わなかったよね?」
「高いからですよ。もしなくしたら、堪ったものじゃないからです。SSSランクのペンダント一つで、家一件かるく買えちゃうんですよ。壊れないとは思いますが、もし壊しても弁償する必要はないですから」
「つまりは、全力でやって問題ないと」
「そういうことです」
小春はニヤニヤとした笑みをくずさなかったが、内心はちょっとだけびびっていた。家が買えるぐらいに高価だったからだ。
「本当に、弁償する必要はないんだよね?」
カンナはきっぱりと言い放つ。
「はい、ありません」
「それなら安心かな?」
小春は疑問系で不安の色は隠せないでいた。
ーー数分後。
結界の中。
小春はカンナと対面している。
「もう一度確認しますが、魔道具は、氷柱の指輪のみでいいんですね」
「OK! 全然問題ないよ。ところで勝敗はどうするの? まさか、壊れるまでじゃないよね?」
カンナは、魔力ゼロの人に壊せる訳がないと思いながらも説明する。何かしらの隠し玉はあるだろうと、警戒はしているが。
「小春さんに渡したペンダントの色は、青ですよね」
小春は首に掛けている星形のペンダントの色を確認する。
「うん」
「ダメージを受けると、青から徐じょにオレンジ。オレンジから赤へと変わります。ペンダントの色がすべて真っ赤になったら、その人の負けにしましょう」
「確認するけど、ペンダントを赤くすれば勝ち?」
「言っときますけど、どこからか赤いペンキを持ってきて赤くしても駄目ですよ」
小春は冷や汗を流して、
「いやだな。わたしがそんなセコいこと考える訳がないでしょう。とにかくさっさと始めよう」
さらには、そう言いながら目を泳がす。
カンナとしては色いろと思うことはあったが、小春の異様な自信も気になった。
「とりあえず試合を始めましょうか。準備は、いいんですよね」
「もちろんだよ」
「それじゃさっそく」
そう言うと同時、カンナは小春の背後に移動して、首筋へ手刀を叩き込もうしたがバックステップでかわされてしまった。
小春は振り返り笑みを浮かべる。
カンナは無数の岩の槍を浮かべ。
小春は氷柱の指輪の魔力と自身の異質な魔力の両方で、青い円形の盾を作り。
「残念ながら、そんなシールドじゃ防げませんよ」
無数の岩の槍は小春へ勢い良くせまり、辺りへ轟音が響き。
そこには青い円形の盾を維持して、相変わらずの笑みを浮かべている小春がいた。
「防げちゃったね」
カンナの感じた魔力量では間違いなく破れるはずだった。
再度、無数の岩の槍を周囲に浮遊させ小春へ放つ。
小春も再び、青い盾で防いでそこから轟音が鳴り響き。
土埃が舞う中、5メートルを超える巨大な岩の槍がせまるがもうそこに小春はいない。
「やっぱりね。そんな見えみえの当たる訳ないじゃん。じゃ、今度はこちらのばん」
小春は自身の魔力をも付加し、氷柱の指輪を振るう。
なんとなくいや予感がしたカンナはそれを避けるが。
放たれた拳だいの氷の固まりは、カンナを追う。
カンナは二メートルの円形シールド形成。飛来する氷の固まりを防ぎきれなかったが、ギリギリのところで顔面への直撃を避けることが出来た。
「何故たったあれだけの魔力のみで魔法陣も詠唱もなしに、わたしのシールドを破れるんです?」
「秘密。次はこれなら、どうかな?」
小春は自身の異質な魔力へ、氷柱の指輪の魔力を付加し、周囲に無数の拳だいの氷の固まりを浮遊させる。
それらの5個だけ自身の魔力をさらに流し込んだ。
「最初に言っとくけど、この氷のすべてがさっき結界を破壊した威力はないから。そこまで強化しているのは、5個だけだから」
「降参。まいりました。そんな意味の分からない不可思議な力を持っているんだったら、勝てる訳がないです」
カンナはすっきりした表情で両手を上げた。そして続ける。
「あなたの不可思議な力の正体は、なんなのですか?」
「魔力」
カンナは聞き直す。
「そんな訳ないじゃないですか。不可思議な力の正体は?」
小春は断言する。
「魔力以外の何ものでもないよ」
「なら、属性は」
「魔力があるからって、属性があるとは限らないじゃん」
「どういうことです?」
「今は説明はしたくないな。とりあえずは、秘密で。わたしも忙しいからさ」
「ですか」
ーー小春の実力はギルド・狐の眼の者らに知れ渡りーー途中その噂が湾曲し、小春の装備している氷柱の指輪は特殊でチート級というのに変化した。
こうしてギルド・狐の眼、見学会は幕を閉じた。
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