魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*七十七・鈴魔法学園・謎の二人

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 早苗と同等の強さを持つロイと苗の強さに、小春はワクワクしてきた。

「ロイさんって、強かったんだね。この強さ、わたし以上だよ」

 その言葉にロイは、小春は、花梨と同じ能力を持っていることを確信する。
 魔力の欠片すら感じない魔法を目の前にしたことがあるが、中途半端な知識しかないクオンはさらに? という状態だ。

 順調に奥へと進んで。

 SSSランクの魔物。赤い鱗と巨大な翼をもつ鳥のような竜。体長は10メートルを越えた朱雀竜すら苗がいとも簡単に倒した時。

 真っ黒なマントを纏っている二人が姿を現した。

「怪しいと思って後をつけてみれば、やっぱりね。けれどもわたし達以外に、SSSランク相当が二人もいたのね。残りは雑魚のようだけど」

「ああ。俺もびっくりだ。ギルド巡礼・氷と風の狩人さん」

 苗。いや早苗は、顔をゆがめた。
「何故、それを」
 恐らくは本気の表情で。

 咲希は堪らず声をかける。
「早苗さん。それ、本気で言ってるんですか?」
「本気よ」

 やがて、黒いマントを纏っている二人は声をもらして笑いだす。
「わたし達二人は、鈴魔法学園の生徒だから。そういうことで、あらためてよろしくね」
「俺の方も、あらためてよろしくね」

 二人はそう言って去って行ったが、早苗はある疑問がぬぐえなかった。

「何故。ロイの方には何も言わなかったのかしら?」
 咲希は素直に答える。
「ロイの正体が分からなかったからですよ、きっと。変身後の姿を含めて」
「わたしの正体だけ見破られるのは、不自然だわ。この姿を」

 咲希は素直に続ける。

「早苗さんの変装は、ある一点が隠せていないんですよ。けれども、そこがかっこいいんですけどね」

「どこかしら?」

「そんなの、身長に決まっているじゃないですか」

「それは盲点だったわね」

 顔が笑っているが、瞳の奥が笑っていなかった。
 それを感じとった咲希は、必死に言い訳をする。

「いや、かっこいいじゃないですか。だからわたしも、つい言ってしまったんですよ。そのかっこ良さを隠せなかったから、きっとバレたんですよ」

「気のせいか、凄く馬鹿にされている気がするんだけど。まあ、気にしないであげるわ」

 ーーーー 

 ーー朱雀竜のいた奥の方で、高純度の魔黒曜石を五つ見つけて鈴魔法学園へと戻った。

 生徒達の反応は、
「めっちゃ、すげー」「やるな~」「どこで盗んできたんだ」「誰に手伝ってもらったんだ?」「どんな裏技を使ったんだ?」
 素直に感心する人達と、何かしらのずるをしたと疑う人達と分かれた。

 ロベルト教師と、魔黒曜石の洞窟で出会った一人の男子生徒と一人の女子生徒は、苗の強さを知っているからそこまで騒ぐことはなかった。

 ロベルト教師と花梨達しか、ロイの正体は分からなかったが。

 ロベルト教師は騒がず誉める。

「まあ……魔力の総量の少ないパーティーの割には頑張ったな」

 SSSクラスが二人もいればなぁ~。と内心は、まったく誉めてなかったが。

 *

 ロベルト教師は視線を、花梨・咲希・小春・クオン・苗がそれぞれ手にしている高純度の魔黒曜石に移した。

「ところで、どんな魔道具・魔武器を作るつもりなんだ? 先生としては、全員同じ種類のを密かに希望している。手間が減る分、一人一人丁寧に教えられるからな」

 花梨は椅子に座ったままその台詞の意図を言い当てる。

「単純に楽がしたいだけだったりして」

 ロベルト教師はまずいと思って反論する。

「確かにそのほうが楽なのは事実だが、その分、一人一人丁寧に出来るというのも事実だからな。それに普通なら自身の魔力で加工するから自身の魔力が作る武器や道具に自然と染み付く訳だが、魔力ゼロだとそうもいかないだろう」

 小春は質問する。

「だったら、魔力がない人はどうやって加工するんですか? 言っときますけどわたし、闘気術も使えませんよ」

「ああ。それは指輪を貸す。風の指輪だ。それで何を作る?」

「わたし、指輪がいいなあ」小春に続いて、花梨・咲希・クオン・苗も指輪を希望して。

 ロベルト教師は続ける。

「そうか、それなら助かる。風の指輪の使い方は分かるか?」

 小春は、氷柱の指輪をはめている右の手を上げた。

「これや、炎翼の指輪と似たような物なら、多分、風の指輪のその魔力も利用出来そうかも」

「そうか。風の指輪で、ある金属を指輪の形に加工してもらう。魔黒曜石を取りつける部分には魔法陣を描いてもらうぞ。魔法陣はいろいろと種類があるから、これを渡しておく」

 小春に渡されたのは、『初心者から簡単に分かる魔法と魔法陣。初級から中級まで』と書かれた500ページを越えるそれなりに厚い本だ。

「それって、魔法陣を二つ重ねるのはありですか?」

 ロベルト教師は肯定する。

「安直な考えだが、ありだ。今の技術だと二種類のみだがな」

 小春は質問を続ける。

「魔法陣なら、わたしが知っているのを描いても問題ないですよね」

「問題はないが。恐らくはさっき渡した本に書かれているはずだぞ。かなりレアな魔法陣ものっているんだからな」

「とりあえず、問題はないということですよね」

 小春は氷柱の指輪に火属性以外の属性に付与するかたちで、自身の魔力を込められることを実験ずみだ。だから、異世界の陣を描く気満まんだ。

 後で、咲希ちゃんにも教えてあげようと小春は思った。きっと戸惑うだろうが、そんな反応を見てみたいからだ。
 小春は念話で、その意図を苗と花梨にも伝えた。

 花梨と苗がそれにのらない訳がない。
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